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今週の一番『ベイビーステップ』緒方くん戦は素晴らしかった。

2013年05月13日 | マンガ
11月第2週:ベイビーステップベイビーステップ(#232 挑戦する時)
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10566.html#764

【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/


この週で『ベイビーステップ』(作・勝木光)の緒方戦が決着しました。『ベイビーステップ』は、成績優秀の優等生である
丸尾栄一郎くん事、エーちゃんが、テニスを知ってプロテニスプレイヤーを目指すようになる『物語』、彼の戦い方は勉強一位だった時の手法「ノート取り」を利用し、とにかく勉強を黙々と続けられる才能を利用したものです。

で、対戦相手の緒方くんは、正に死角のない難波江の上を行くような天才で、試合がはじまった時は、主人公のエーちゃんが勝てる要素など無いようにさえ思えたのですが、終って見れば納得の試合内容で勝利していました。
「納得の試合内容で勝利」ってなかなか説明が難しいのですが、また試合をすれば、今度は緒方くんが勝つかもしれない。しかし、エーちゃんは確かに緒方くんから勝ちを奪える状況を生み出し、そして堂々と勝ちを得た。『ベイビーステップ』は、こういう勝負のリアリティ、臨場感が素晴らしいです。



ちょっと緒方くんについて解説すると、かつて池爽児(作中最強の日本プレイヤー)をしのぐ天才と言われた少年だったのですが、腰をやられて三年間リハビリで、テニスができない状態が続いた。そのため池くんには差をつけられているのですが、それこそ以前よりも、あらゆる面において成長を遂げてカムバックして来たプレイヤーです。
……エーちゃん『BE BLUES』(作・田中モトユキ)の龍ちゃんと対戦するような話です。エーちゃんは、いわばちょっとしたスポーツマンガの主人公を相手にしていて、実際にそうと思えるような展開で試合が進められて行く。たとえば「この片手バックハンドは、怪我をしたから手に入れる事ができた」みたいな事を言ってくるワケです(笑)

しかし、『ベイビーステップ』が素晴らしいのは、それで勝負が決まるワケではないという事を見事に描いている事です。
たとえば、エーちゃんは試合中にも成長を遂げてキャリアで勝る相手プレイヤーに肉迫して行くのですが、この「試合中に成長する事」はエーちゃん=主人公の専売特許じゃないんですね。この『物語』では。この緒方くんも様々な影響から、自分のプレイスタイルを進化させている。

昔の少年マンガに擦れた僕の視点からの説明になりますが、高校テニスプレイヤーの頂点を決める戦いなのですから「努力」の足らない奴なんているはずがない。当然、「試合中に進化する事」も標準装備。「精神力」で負けないって、精神力だってここまで来れた者である以上、誰かに劣るものであるはずがないんです。
……じゃあ、その上で勝負を決めるものって一体なに?とうのが見事に描かれる。有り体に言えば、それは「互いが今まで積み上げて来た武器の噛み合わせ」であり「運」なのですが(その為か、このマンガの唯一の“偏り”と言うか「オールラウンドプレイヤーが強い」という傾向がある気がする)、そこに到るまでの努力、精神力、進化、そして己の武器の確認の描きが十分に積み上げられているから緊張感のあるモノになる。

……つまり最後に勝負を決めるのはジャンケンみたいなものなんですが、そこに到るためには相応の相手と拮抗しうる積み上げが必要なんですよね。『ベイビーステップ』はそれが描けています。

ここから緒方戦の勝負の機微を解説したくもあるのですが、長くなってしまうので切り上げます(汗)読まれる人は、是非、細かな出来事を注意して観て欲しいです。ネットタッチや、雨天中止、ミスジャッジまで起っており、それでいてそれは「普通に試合で起こる事」として、必ずしも勝負そのものを決めるものではない事象として描いています。
でも、細かく、細かく、勝負の天秤を揺らして行く(笑)そこがたまらないですね。

ベイビーステップ(24) (講談社コミックス)
勝木 光
講談社


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