セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

『ホ・ギュン』が終わった

2010-06-15 14:18:30 | 文化
昨日(6月14日)の放送で、BS朝日の『ホ・ギュン~朝鮮王朝を揺るがした男~』が終わった。終わる数日間は結果がわかっているだけに見るのがつらい点があった。結果というのは、親友の裏切りにより革命が失敗してホ・ギュンが四肢をバラバラにされて処刑されることだ。結果が分かっているというのは、このドラマの第1回目が革命の失敗により処刑されるところから始まってそこからドラマが過去に遡及していることと、ウィキペディア(インターネットの百科事典)でも反逆罪により処刑されていることが分かる史実でもあるからだ。

過去に数百人の部隊で王宮を急襲しようとした無倫堂(庶子を中心とする組織)を説得して革命の根拠地づくりを提唱したホ・ギュンだが、今回は彼自身がクーデターによる革命の首謀者だ。これを解読すると2つの条件の変化がある。1つはホ・ギュン自身が偽装にせよ光海君政権の重臣になって、朝廷の各部署に革命の同志が生まれていること。2つ目は新興国の清と明との対立が激しくなり、宗主国の明の要請により、首都の警備の一部を含む軍隊を北方に派遣していることである。

なお朝廷のほとんどの重臣たちは明の要請に従うことに賛成だが、光海君は弱体化している明に従い、強大化している清と戦うのは気が進まない。そのときホ・ギュンが人払いさせて光海君に進言する。軍隊は派遣するが清と内通して朝鮮軍は戦わないようにすればよいと。光海君はこれを採用する。イ・イチョムは近年自分の手下になり下がっているはずのホ・ギュンが自分を無視して光海君となにか秘密の提案をしているので警戒心を持つ。そこでイ・イチョムは無倫堂とホ・ギュンとの疑惑を再び持ち出すが、光海君から期限内にホ・ギュンの疑惑を証明できなければ逆にイ・イチョムを逮捕するといわれてしまう。

革命と戦争は設計図通りにはいかないのが普通だ。あ、そうそうもちろん経済もだけど。人心を混乱させるため王様を糾弾する張り紙を行おうとした同志が捕まってしまった。これはホ・ギュンが王様のため自分が指示したと言い逃れた。ホ・ギュンはイ・イチョルを排除するため西宮(前王の后)が謀反を企てているという口実で僧兵を動員するための偽の張り紙だと言った。また革命軍の首都への侵入を助けてくれる予定の同志が、北方へ派遣される部隊に組み入れられていなくなってしまった。そこで革命軍の侵入を容易にする偽の命令書を作成するのに必要な公印の偽造をおこなった同志が捕まってしまった。なお革命軍の一部である僧兵も、張り紙事件を機にだましていた光海君の気がかわり首都に入れなくなってしまった。

しかしイ・イチョムも光海君も革命には気づいていない。なんとかあと数日の決行日まで持ちこたえれば革命は成功するはずであった。

イ・イチョムは光海君がホ・ギュンをとって自分を捨てるつもりであることを感じ散っていた。そこで自分でもクーデターを考えていた。光海君が宗主国の明を裏切ることはクーデターの大義名分になるからだ。そのため捕盗庁(警察)の兵力を自分の意のままにしようとした工作が光海君にばれて絶体絶命となった。ホ・ギュンの周辺者の逮捕は光海君から禁じられていたが、やけになったイ・イチョムはホ・ギュンの親友のイ・ジェソンを逮捕した。気が弱く動転するイ・ジェソンではあるが、本来ならば多少の拷問にあっても親友であるホ・ギュンの秘密をばらすはずがない。だが、やけになったイ・イチョムが自分も自殺するが死出の道連れとイ・ジェソンに刀を突き付けたとき、ついにイ・イジェムは白状したのだ。しかも運のわるいことにイ・ジェソンはホ・ギュンから預かった革命部隊の侵入経路と朝廷内の同志の名前を書いた紙を持っていたのだ。イ・イチョムの告発を信じない光海君も、ホ・ギュンの筆跡の革命計画書を見ては信じないわけにはいかない。かくて革命部隊は待ち伏せされ全滅し、朝廷内の革命の同志も逮捕された。

ここで僕の疑問がのこる。もちろんホ・ギュンという人物は史実だが、ドラマはフィクションだから矛盾がでてくるのは当然だが、いちおうドラマにそって疑問を述べよう。
1つ目は。朝鮮軍の多くは首都を離れて平壌にいる。これは光海君の意を受けた将軍が、病気と偽って明軍と合流しないでいるためだ。でもこの2万の軍勢が、革命を聞いて首都に引き返してきたら革命政府は持ちこたえられるか?高麗王朝末期に命を受けて出征した李成桂(イ・ソンゲ)が威化島というところで軍隊の方向を変え首都をめざしてクーデターを起こした例がある(威化島回軍)。

2つ目は、イ・ジェソンが革命の理念をわかっていないことだ。イ・ジェソンはホ・ギュンに、革命が成功したら自分は大臣にならなくていいから成均館(国立大学)の責任者にしてくれと言う。ホ・ギュンは「ああいいよ。ただし給料は一般庶民並みだよ。」という。あ!パリ・コンミューンだ。ホ・ギュンは自分が王になるけど、王も畑を耕すという。これを聞いてイ・ジェソンはがっかりする。革命の同志の話し合いはイ・ジェソンの家で行われることが多かった。当然イ・ジェソンも参加している。でも彼は革命の理念がわかっていなかったのだ。

どころで、このドラマの光海君の、目元が河村市長に似ているな。この時代が舞台での光海君像はドラマごとにかなり違う。『王の女』での光海君は、チソンという二枚目俳優が演じており貴公子だ。『キム尚宮(サングン)』での光海君は屈折した駄目男。この『ホ・ギュン』での光海君はイラついた理想主義者というところ。