セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

どうなる河村市長

2009-11-02 19:28:37 | 名古屋
名古屋の河村市長が市議会との対決姿勢を強めて、かねての主張の市民税減税や地域委員会に加えて議員定数の半減等の議会改革案も含めた住民分権一括条例案を提出して、否決されたら直接請求(リコール)による市議会の解散も考えているとのことだ。うむ平成の大塩平八郎の乱か。

大塩平八郎の乱とは江戸時代後期の天保年間に大坂町奉行所の元与力で陽明学者の大塩平八郎がその門人たちと起こした反乱だ。大阪の広い地域で家屋が被災したが、反乱は失敗して大塩も処刑された。大塩がどのような目標を目指して蜂起したのかは僕にはよくわからない。だがその影響は全国に広がり、類似の一揆が起り、民衆のあいだでは大塩生存説が長く流布したそうだ。

河村市長の市議会への宣戦布告を大塩平八郎の乱になぞらえるのは唐突で成功の可能性が低いからだ。市議会の解散の直接請求に必要な署名数は市長選での得票の6割強で済むというが、「2ちゃんねる」の「名古屋市職員専用スレッドPart83」でも書いてあったが、投票と署名では重さが違うので難しいだろう。ただ署名運動員に熱意のある人たちが多ければ可能かもしれない。元職員(つまり僕)や現職員(2ちゃんねるの書き込み者)には自己の周り(公務員間の空気)から判断してしまうので、市民間の河村人気を過小評価している可能性もある。

ただ市会議員のボランティア化が成功すればそれは素晴らしいことだ。30名ぐらいで、建築士、弁護士、税理士、医師、僧侶、学生(年齢から大学院生)、商店主、工場経営者やサラリーマンなど他に職業を持った人が自分のもつ知識や経験を生かして議会を運営するのだ。委員会は5~6名で夜間やればいい。ただしそれにつきあって関係部局は残業する必要はない。委員会ででた調査事項などは、委員会でまとめて次回の委員会までに調べてもらうようにすればよい。党派的でないので委員間で協力しやすい。

でも現職の市議会議員にとっては職業でもあるので生活権の問題なので徹底して抵抗するだろう。議員のなかには世の中の役に立とうと職業として地方議員を選んだという人もいるかもしれない。でもさ、職業というのが問題で自分の生活のために公正な判断を曲げる可能性はないのか。以前に三河地方で未成年保護のための警察の手入れの情報を支持者の飲食店経営者に知らせていた県会議員がいたぞ。だいたい自分の生活上の利益を正義のために犠牲にする人はまれだ。陽明学者は良知に従って行動するから始めから損得勘定はしない。だから大塩平八郎は蜂起したのだと思う。しかし良知にしたがう陽明学者は、李舜臣じゃないが百戦百勝だと思うけど。まあ大塩の陽明学は独学で独創と偏りがあるけど(俺もか)。

ところで市民税10%減税についてコメントしておこう。河村市長の主張のポイントは3点だと思う。
1つは、民間企業は他社との競争または親会社・取引先の要求などでたえず合理化圧力がかかり業務改善を行うが、地域独占企業とも言うべき市役所にはその圧力がないので、減税という圧力をかけて業務改善の契機とする。
2つは、市役所という地方政府も含めて政府は減税という形で人民に努力成果を返さなくてはならない。
3つは、名古屋市が減税することによって、人も企業も名古屋に引き寄せられるので名古屋が繁栄する。

1つは、役所についてのパーキンソンの法則の歯止めを狙ったものともいえる。パーキンソンの法則とは、まあ「役所では仕事の量は増えなくてもそれにかかわる役人の数はつねに増加していく」とか「役所の仕事にかかる費用は予算いっぱいまで増えていく」とかいうもの。あまり間違っていないと思うけど、正確には自分で調べてね。

だから減税で得するのは金持ちで貧乏人には恩恵がないという批判は、目的が違うので批判にならない。つぎに減税の財源を示さなければ承認できないという市議会の意見も逆立ちした意見だ。減税による税収減を前提として行政サービスを低下させないよう行政の合理化が目的だ。最初の段階で財源を示しめせたら、それは行政サービスの切り捨てという形にならざるを負えない。

でも僕としては、10%減税をこうした行政改善の手段として使うのはあまり賛成ではない。というのは僕の感覚では、ある目的のために直接関係のないものを持ち込むことは。いわゆる「タメにする」ことで正しくないと思う。きっと王陽明もそういうと思う(これは僕の独断)。もし住民の困難の原因が重税ならばそれを真向に受けて減税のためさまざま努力をするのが正しいが、名古屋市の現実は違うと思う。

でも行政改善の契機になるものは、減税よりももっと切実であるのだ。つまり公債だ。もし公債発行をやめると決意し、全市一丸となって経常の収入だけで行政サービスを確保するという課題に取り組むのだ。これこそ「王道」だ。総理に揮毫してもらい市長室にかけたらよい。

だけど河村市長は国債公債ノープロブレム派だ。「借金は返す必要ない」とのことだ。銀行が金余りだからといって、銀行に金を返す必要はないのか?部下だったら河村市長から「経済学の基本、貯蓄投資バランス(ISバランス)を知らん」と怒られそうだ。でも僕は今は市職員ではないので部下ではなく、市民だから主人なのだ。

ところで河村市長に張良はいないのかな。張良は中国史で漢王朝を立てた劉邦の天才軍師だ。こんなことを言うのは韓流歴史ドラマの『女人天下』(三重テレビ水曜午後9時)の最近放送分で、文定王后が兄ウォンヒョンに「外戚として身を慎みアドバイスしてくれる人をさがしなさい」と言った。ウォンヒョンはその前にナジョン(女主人公)から「私があなたの張良になるは」と言われていたので、「張良ですか?」と王后に聞き返した。すると王后は「そう張良です」と答えた。ウォンヒョンは帰り道に「どうして最近に張良という話が出てくるのだろうと」と不思議に思う。文定王后は中宗の3番目のお后で、『宮廷女官チャングム』にもチャングムに好意的なお后として出てきたね。

え俺が張良になる気かって?そんな才能のないよ(だれだ、知っているというのは)。まあ僕は人に授ける知恵はない。

ついでながら先週の『女人天下』では、急進政治家で儒教原理主義者のチョ・ガンジョが靴作りにアドバイスを求めに行っていた。この靴作りは両班の息子で学識も深いのだが庶子のため官僚にならず靴作りをしている。宮中ではいま昭格署という祈祷施設をめぐって大揺れだ。チョ・ガンジョはじめ少壮官吏は王様に、宮中に祈祷施設があるのは儒教に反すると廃止を要求する。昭格署は安産を祈祷する施設で昔からあり。今は妊娠した側室の安産を祈祷している。文定王后も廃止に賛成だ。理由はチョ・ガンジョはじめ少壮官吏は忠臣だから廃止しないと忠臣を失うということだ。ところが中宗の母親の大后が廃止に大反対でチョ・ガンジョ達は王家の滅亡を図る逆臣だという。中宗は間で大悩み。で、靴作りはどんなアドバイスをしたかというと、「正論でもそのままでは王様は廃止に賛成できにくい。昭格署が経費を多く使うから、民の生活が苦しくなるという理由なら王様も賛成しやすい」というもの。河村君、参考になった?でもこれも「タメにする」ことかな。