中川八洋氏の著作は僕としてはおもしろく読ませてもらっている。大半はおもしろくとも荒唐無稽にも思えるのだが、なるほど思うところもある。しかし学問的な手法からいえば、中川氏は自説を述べた後、「証拠がないのは本人が証拠を隠滅したため。」「違うと思うなら違う証拠をだしてみろ」というのは、どうかな。
でもおもしろいので、同意できない点も同意できる点もいっぱいあるのだが、このブログに書き込むには膨大な量になるので、まだ仮住まいのアパートの部屋の整理に悩まされている僕にはそんな時間がない。とりあえず読んでいて自分の知っている範囲で見つかったこの本の間違いを書いておく。管見の自分にさえいくつも見つかり気になるのだから、初めて知る範囲のことについては眉につばをつける必要があるかも。中川氏の本からのことを他で吹聴するのは他の資料で裏をとってからでないと恥をかくかもしれない。
まず、1945年11月9日におこなわれた東京湾上のアンコン号艦長室で近衛文麿を尋問した米国戦略爆撃調査団のメンバーのガルブレイスを「米国では数少ないマルクス経済学者。ソ連一辺倒」(p61)と記載しているが、ガルブレイスは日本人にも最も著名な経済学者の一人で制度学派でありマルクス経済学ではない。少しでも経済学の知識のある人でガルブレイスをマルクス経済学者というのは中川氏だけであろう。その後のポール・バランはウクライナ生まれで「ソ連のスパイ」と目されていると紹介してあるが、この人は学問実績からも明らかにマルクス経済学だがそのことには触れられていない。
戦前には、共産主義の著作が大量に出版されていた例証として、マルクス、エンゲルス、レーニン、スターリンの出版物が上げられている。ところでp264に、「マルクスの『フォイエルバッハ論』は同人社が1925年、岩波書店が1929年、に出した。」と中川氏は書いているが、「フォイエルバッハ論」はエンゲルスの著作。共産主義の陰謀と脅威を強調している割には、中川氏は敵の基本文献も読んだことがないみたいだ。ただ、出版社がマルクスの「フォイエルバッハに関するテーゼ」をつけてマルクスの名前で出版することがあるかもしれないが、引用文の趣旨はそんな個別の出版物のことではないので、中川氏の単なる間違いだと思う。
河上肇の「『貧乏物語』(1917年)」を「マルクス経済学やマルクス唯物論の扇動的教科書」(p288)に含めているが、「貧乏物語」はマルクス経済学に立っていない。マルクス経済学に立つのは1930年以後の「第二貧乏物語」だ。
P285に「1945年10月の徳田球一や宮本賢治」とあるが、宮本顕治ではないのか。これは出版社の誤植だと思うけど、中川氏がこう思っているのかもしれない気がしてきた。
P314に「米国では今も、日本の治安維持法より厳しい『共産主義者取締法』が存在し、十全に執行されている。英国でもドイツでも共産党は非合法である。」とあるが、米国での状況は違うと思う。共産党の役員の登録などの制限があるが、大統領選挙にも立候補しているから、日本の治安維持法より厳しいという根拠はまったくない。英国の共産党のグレートブリテン共産党は今はないが、それは非合法だからでなくソ連消滅後の状況で解党したから。議会的には労働党への加入戦術をとっていたこともあり力はないが、文化的に影響力があった。なお今英国にはグレートブリテン共産党の解党前に分離してできたブリテン共産党がある。ドイツは旧西ドイツでは共産党は全体主義政党として非合法だったが、統一ドイツでは旧東ドイツの統一社会党(共産党)の後継政党である民主社会党があるが、これがどうゆ意味かはわからない。
でもおもしろいので、同意できない点も同意できる点もいっぱいあるのだが、このブログに書き込むには膨大な量になるので、まだ仮住まいのアパートの部屋の整理に悩まされている僕にはそんな時間がない。とりあえず読んでいて自分の知っている範囲で見つかったこの本の間違いを書いておく。管見の自分にさえいくつも見つかり気になるのだから、初めて知る範囲のことについては眉につばをつける必要があるかも。中川氏の本からのことを他で吹聴するのは他の資料で裏をとってからでないと恥をかくかもしれない。
まず、1945年11月9日におこなわれた東京湾上のアンコン号艦長室で近衛文麿を尋問した米国戦略爆撃調査団のメンバーのガルブレイスを「米国では数少ないマルクス経済学者。ソ連一辺倒」(p61)と記載しているが、ガルブレイスは日本人にも最も著名な経済学者の一人で制度学派でありマルクス経済学ではない。少しでも経済学の知識のある人でガルブレイスをマルクス経済学者というのは中川氏だけであろう。その後のポール・バランはウクライナ生まれで「ソ連のスパイ」と目されていると紹介してあるが、この人は学問実績からも明らかにマルクス経済学だがそのことには触れられていない。
戦前には、共産主義の著作が大量に出版されていた例証として、マルクス、エンゲルス、レーニン、スターリンの出版物が上げられている。ところでp264に、「マルクスの『フォイエルバッハ論』は同人社が1925年、岩波書店が1929年、に出した。」と中川氏は書いているが、「フォイエルバッハ論」はエンゲルスの著作。共産主義の陰謀と脅威を強調している割には、中川氏は敵の基本文献も読んだことがないみたいだ。ただ、出版社がマルクスの「フォイエルバッハに関するテーゼ」をつけてマルクスの名前で出版することがあるかもしれないが、引用文の趣旨はそんな個別の出版物のことではないので、中川氏の単なる間違いだと思う。
河上肇の「『貧乏物語』(1917年)」を「マルクス経済学やマルクス唯物論の扇動的教科書」(p288)に含めているが、「貧乏物語」はマルクス経済学に立っていない。マルクス経済学に立つのは1930年以後の「第二貧乏物語」だ。
P285に「1945年10月の徳田球一や宮本賢治」とあるが、宮本顕治ではないのか。これは出版社の誤植だと思うけど、中川氏がこう思っているのかもしれない気がしてきた。
P314に「米国では今も、日本の治安維持法より厳しい『共産主義者取締法』が存在し、十全に執行されている。英国でもドイツでも共産党は非合法である。」とあるが、米国での状況は違うと思う。共産党の役員の登録などの制限があるが、大統領選挙にも立候補しているから、日本の治安維持法より厳しいという根拠はまったくない。英国の共産党のグレートブリテン共産党は今はないが、それは非合法だからでなくソ連消滅後の状況で解党したから。議会的には労働党への加入戦術をとっていたこともあり力はないが、文化的に影響力があった。なお今英国にはグレートブリテン共産党の解党前に分離してできたブリテン共産党がある。ドイツは旧西ドイツでは共産党は全体主義政党として非合法だったが、統一ドイツでは旧東ドイツの統一社会党(共産党)の後継政党である民主社会党があるが、これがどうゆ意味かはわからない。