玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

sengoku38と羽毛田宮内庁長官の違い

2010年11月18日 | 日々思うことなど
「尖閣衝突事件ビデオ流出」について書いた記事にiteauさんからトラックバックを頂いた。

sengoku38 の行為について - extra innings

あちらのコメント欄で返信すべきかとも思ったが、少々長くなったのと(といってもそれほどの長さではないが)、コメント欄で議論するのがあまり好きじゃないので記事にすることにした。


iteauさん、ご意見ありがとうございます。
「過去に小沢一郎および鳩山元首相が天皇陛下と習近平・中国国家副主席との会見を強引にねじ込んだことに対する氏のご見解とじゃっかんの矛盾があるのではないかと思った。」
というご批判ですが、私は矛盾があるとは思っておりません。

民主党政権(小沢氏)による「天皇会見セッティング指令」と菅内閣(仙石官房長官)による「尖閣衝突事件ビデオ封印命令」は、どちらもこれまでの慣例を曲げる権力の圧力であったことは共通しています。ですが、それぞれに対する反発の仕方はまったく違います。
羽毛田宮内庁長官は、習近平・中国国家副主席との会見をしぶしぶながら受け入れた上で「こういうことはもうやめてほしい」と苦言を呈しました。会見要請(命令)をサボタージュしたわけではありません。
それに対して、某海上保安官氏(sengoku38)は、ビデオ封印指令を承知の上でそれを反故にする実力行使を行いました。Youtubeにアップした時点で一線を越えています。治安(武装)組織の公務員が個人的判断で勝手に実力行使するのは由々しきことです。

羽毛田長官の政権(小沢氏)批判も、天皇の健康を守るためとはいえ「虎の威を借る狐じゃないか」「宮内庁長官は国家公務員であって天皇の侍従ではない」という批判はありえますし、実際に小沢氏の支持者から猛烈に叩かれました。ですが私は公務員といえど言論の自由はあり、羽毛田長官のように堂々と批判する場合は自らのクビを賭けた勇気ある直言として認められるべきだと考えます。

sengoku38の場合は羽毛田宮内庁長官とまったく違っています。
彼はビデオ封印指令を知りながら、あえてYoutubeへのアップロードという実力行使を匿名で行いました。しかも、海保の内部調査・検察による捜査が始まってからもなかなか名乗り出ず、仲間(石垣海保の同僚)が容疑者扱いされるという迷惑をかけ、国に無駄な支出をさせました。もし海上保安官氏が実力行使を避け、羽毛田長官のように堂々と名乗って「ビデオ封印指令」を批判したのであれば、私も「現場の率直な意見だ、彼を処分すべきではない」と擁護したでしょう。

羽毛田宮内庁長官とsengoku38の行為を「どちらも権力への反抗だ」と大雑把にくくれば同じに見えるかもしれませんが、一方(羽毛田氏)は「命令に従いつつ堂々と批判」したのに対してもう一方(sengoku38)は「実力行使したうえで逃げ隠れ」しました。やったことといい、態度の潔さといい、月とスッポンほどに違います。
私は羽毛田長官が特に偉いとは思いませんし、ましてどう見ても羽毛田氏より小心なsengoku38が一部(多く?)の国民から英雄視されているのが理解できません。やったこと(ビデオ流出)の是非を論じる以前に、まずもって態度が潔くない。あれではいくら「自分は正しいことをやった、後悔していない」と確信犯を気取っても「愉快犯じゃないのか、衝動的な行為だろう」と疑われるのは仕方ありません。

私は件の海上保安官氏(sengoku38)を英雄とも悪人とも思いません。右翼とか反逆者のレッテルを貼る必要もない。彼は単に、自分の素直な(無邪気な・単純な)正義感をダイレクトに行動に移しただけで、深い考えはなかったのでしょう。思いつめてはいたのでしょうが、結晶化した思想があるわけでもない。法律的なことはよくわかりませんが、彼が逮捕されなかったのは良かったと思います。マスコミと彼を英雄に祭り上げようとする人たちから距離を置いて、海上保安庁の上司や同僚の率直な意見(その多くは叱責だと思いますが)を聞き、自分のやったことの意味をよく考えてほしいものです。


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