黒古一夫BLOG

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この日本はどこへ行くのか(3)――安倍晋三(内閣)の正体(続き)

2016-10-26 09:36:36 | 仕事
 前回の「この日本はどこへ行く(2)」の記事(北海道の友人から送られたメールの紹介)に、僕のコメントとして「この佐高信と岸井成格の対談本『偽りの保守 安倍晋三の正体』の紹介部分には、安倍晋三に大きな影響を与えている「日本会議」についての言及がない」と付したが、件の友人から早速以下のようなメールが送られてきたので、紹介しておきます

 岸井成格・佐高信「偽りの保守・安倍晋三の正体」(講談社+α新書)は、
「日本会議」については、以下のように言及しています。十分に分析しておらず、イマイチの感があります。


翼賛団体としての日本会議と日本青年会議所

佐高 安倍的ナショナリズム、あるいはファシズムと言ってもいいと思うんだけど、その基盤をもう少し具体的に特定しておきたいという気がする。宗教団体の生長の家なんかが母体となっていると言われる「日本会議」というグループがあるよね。このところ不気味な存在感を増している。このあいだ菅野完という人が『日本会議の研究』一扶桑社新書一という本を出したけど、版元の扶桑社を身内と思っていた日本会議がこの本の出版差し止めを要求したとか、やたらと売れて書店の店頭からなくなったとか、ずいぶん話題になっているよね。日本会議については集英社新書でも出るみたいだし、青木理も書くようだ。

岸井 著者の菅野完は自分のことを右派と自已規定しているんだけど、記述はわりと客観的で、よく調べている。でも、この本を読んでもいまだに日本会議の全貌はわからない。日本会議は生長の家が母体だよね。その後変質していく過程で生長の家から離れ、組織を拡大し、今では神杜本庁をはじめとする様々な神道系の宗教団体や新興宗教団体が関わっていて、安倍政権の誕生には深くあずかっている。それ以前から、改憲や教科書右傾化や元号法制化などの運動を草の根レベルで執鋤に続けてきている。市町村議会を動かしてきたんだな。ただ、徹底した秘密主義を取っていることもあり、組織実態と、権力との結びつき方は把握しきれないところがある。伊勢志摩サミットで安倍が伊勢神宮訪問にこだわったことは海外メディアからは賛否両論だった。安倍の姿勢を「読売新聞」は「保守層への配慮」と報じたが、これは明らかに日本会議を中心とする保守層、ということだろう。

佐高 各国首脳を伊勢神宮で迎えた鷹司尚武という宮司は、日本会議の顧問らしい。ファシズムというのは国民の精神を組織することでもあるから、安倍政権の宗教的基盤については厳しく注視する必要があるね。岸井は神杜本庁とはけっこうつながりがあるでしょう?

岸井 つながりがあるというよりも、私の個人的な趣味が古代史だからな。

佐高 岸井は実はオカルティストの一面があるから(笑)。

岸丼 オカルティストじゃないって。正統派の古代史研究だ。「NEWS23」の反省会で、行きたい桜の名所ランキングが話題になったことがある。一位が五稜郭、二位が吉野の千本桜なんだよ。私が、「時間があれば奈良に卑弥呼のお墓を捜しに行くんだ。邪馬台国は遷都されて奈良でほぼ間違いない。吉野は壬申の乱の前に、天武天皇と持統天皇が隠遁した場所で、あそこから『古事記』と『日本書紀』が始まったんだ」というようなことを話したら、皆呆然とした顔をしていた。

佐高 我々の年代だって、そんなことに興味を持っているのはそう多くはない。

岸井 私の趣味はともかく、日本会議について佐高はどう見る?

佐高 私は日本会議は風呂敷はでかいけれど、実動部隊としてはJC(日本青年会議所)も見逃せないと恩っている。経営者の二世ボンボンで名前を上げたい人たちの集まりだよね。小林よしのりが火を点けた「新しい歴史教科書をつくる会」もJCの支援なしにはあり得なかったし、改憲運動や教育現場への右翼的介入も露骨になってきている。日本会議と共闘する局面も増えていると聞く。

岸井 自民党と宗教団体の関係で言うと、新宗連(新日本宗教団体連合会)もはずせないな。立正佼成会を中心として反創価学会を掲げる新宗連も、一時は政界に強い影響力を及ぼしていた。票目当てで、自民党員が競って新宗連に入っていたものだよ。

佐高 統一教会は選挙になると、保守系の候補のところにタダ働きに行くという。かつて、それを田中秀征は断ったらしい。すると次の日、選挙区で「容共田中秀征」というビラを撒かれたそうだ。今の副総裁の高村正彦は、弁護土時代は統一教会の顧問弁護土だった。

岸井 安保法制を強く主導してきたのも高村だ。もともとは三木派なんだけど、岸信介以来の、外交・防衛の情報畑なんだ。情報畑というのはアメリカと一体だからね。後藤健二さんの事件の時も、「金を出すつもりはない」と言い、殺害後には「あれは勇気ではなく蛮勇で、自已責任だ」と言い放った。安倍が中東まで行って、イスラエルの首相と並んで会見をしたことへの反省がまるでない。こういうところも無神経になっているよな。安田純平さんが拘束されても、政府は助けようとしていない。メディアもほとんど報じない。

政府が助ける人間と助けない人間

佐高 安田純平には去年「佐高信政治塾」の講帥を三回頼んだ。三回目の時、連絡が取れなくなって、調べたら中東で拘束されている可能性がある生言われたんだ。岸井は人質事件への安倍政権の対応を「無神経」と言ったけど、それどころではなくて、今の政府は助けるべき人問と助けない人間をはっきり分けている。一括して「国民」と呼びはするけれど、政府が「非国民」と思う人間は殺されてもいいと思っているわけで、「非国民」とされた側からすると、この国は税金だけタダ取りされているようなものだよ。

 友人もコメントしているように、この「対談」における「日本会議」への言及は弱いし、これでは一般の読者はよく分からないのではないか。
 なお、僕の「日本会議」への言及は、今いろいろと調べているので、もう少し後にな留のではないか、と思う。ご了承してください。