牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

登録協会の会長さん

2008-08-18 23:27:37 | 牛の改良


(社)全国和牛登録協会という組織がある。
黒毛和種や褐毛和種など和牛を登録する団体である。
この協会は、京都市中京区の烏丸通りに面し、御池通りを少し上がったところにある。
昔は、洋館建てで目立つ建物であったが、途中現在の建物に建て替えられた。
最近烏丸通りをタクシーで通過しながら目にした同協会は、両側を高いビルに挟まれ、狭いビルに見えた。
通常、係る関連協会などの所在地は、東京都内が大半であるが、同協会だけは京都市内にある。
その訳は、当時京都大学の故羽部義孝初代教授が、同協会を設立し、初代会長となったためである。
2代目会長にも2代目故上坂章次京大教授が着任されている。
これらの会長は、何れも京大において、畜産学、とくに和牛のパイオニア的研究者として、和牛の育種改良と飼育学の教授であったことから、同協会の育ての親でもあった。
これらの会長は、和牛関係者の間では、「和牛の神様」的存在として絶大な信頼と尊敬の念を得ていた。
その後は、和牛主産地代表の副会長が会長職となったこともあったが、数名の京大卒業生が会長に就任した。
中でも、上坂会長とその後に現役の京大教授を途中で投げ捨て、同協会へ転職した故並河澄会長は、和牛改良一筋であった。
年間の2/3は全国や海外への出張であったと聞く。
この様な会長や指導者が就任中であれば、係る様々な取り組みが具体化して改良への速度が速まる。
その様な歴代の会長さんのエピソードを意識する時、今回就任した新会長も、京大で並河会長に師事され、その後神戸大学の研究者となり教授に着任され、同協会の主たる委員会等の会長をも歴任されてきた。
新会長も故並河会長同様、現役の教授からの会長就任である。
和牛研究の第一人者としての宿命であろうが、その手腕を大いに期待せずにはいられない。

歴代の会長は、係る産業の問題点を具に注視し、問題解決のために現実をみつめて来られたと言っても過言ではなかった。

和牛の改良手段として、育種価などの計算値が生かされるようになり、その改良速度も経験を繰り返した改良手法とは様変わりしつつある。
その様な中で、気づくことがある。
和牛の登録には、和牛の体型審査得点所謂登録点数が登録証書に記載されている。
この得点は審査標準に基づいて審査された結果である。
審査標準は、牛の発育や増体に関連する重要な項目や繁殖用としての体型や資質が網羅されたものとなっている。
また、肉質を予測した審査項目もある。
しかしながら、肥育現場で、母牛の登録点数を参考としたいところだが、それはほぼ参考にならないと言っても過言ではない。
それは、登録検査までの栄養状態次第(同じ牛が育成技術の上手下手で審査に差が出る)で得点が左右されることと、地域によっては、審査得点がどの牛も同じ点数であるなど、厳密な審査が行われていない現実がある。
審査標準の改正は故並河会長時代から実施が噂されていたが、未だ未決のままである。
審査が、誤差を生むことのない方法に改正されることと、高得点ほど、枝肉成績に直結しているような審査内容への改正が、不可欠のように思われてならない。






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2 コメント

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お帰りなさい (Piyo)
2008-08-19 17:56:49
(´∀`)/

再開を心待ちにしていました。

こちらの地区でも登録に関して疑問に思う事がよくあります。
品位や資質は仕方ないけれど、
体高等に明らかな間違いがある時も…。
ちゃんと道具を使用して計測する人と目算で済ます人がいる為かと思われますが、
この辺はきっちりしてもらわないと、
なんの為に高い登録料を払っているのかわからなくなります。

以前、
(やや点数が辛めと思われる)登録員の方に、
やんわりとその辺を聞いてみたところ、
各県の審査にばらつきが生じない為の全国規模(?)の研修に参加して、
こちらの地区の審査の甘さを実感したとの事。
色々と難しいのでしょうが、
ならば寸法だけはきっちり計測し、
点数に誤差が出ない様心掛けて欲しいとその時は言えなかった内容を今日は書き込ませてもらいます。

(`∀´)/
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ごもっともです (kuroiusi)
2008-08-19 20:14:02
早速にコメントを有難うございました。

和牛の審査は、長年鍛錬して審査眼を養うしかないのです。
仰る測定については、議論の余地はありません。
その様な時は、堂々と指摘すべきです。
昭和50年に発行された「和牛登録必携」(全国和牛登録協会編)の「和牛の登録とは如何なるものか」の項に次の記述があります。
和牛の登録はその和牛を生産する各人が、正確なる公の記録を後世に残して改良の基礎としなくてはならないという必要を感じ、責任を持って協力するものでなくてはその目的を達成することは出来ない。すなわちどこまでも関係者の責任と善意とを基にして行わなければならない。しからざれば登録は無意味となるのみならず、かえって世に害悪を流すことにもなる。かくて「信用は登録の生命である」という標語が生まれる。証明書を発行して料金を取るのが登録であると考えたり、あるいは牛を高く売らんがために登録をするなどと考えたりすることは全く邪道である。正確なる登録のみが和牛改良の基礎となることを忘れてはならない。
とあります。
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