牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

肥育牛に運動は必要か

2008-04-22 23:50:37 | 牛の成長
平茂勝号が供用される以前までは、可能な限り仕上げ体重を大きくしようと、肥育素牛は導入時から、運動場に放し飼いして、四肢を鍛え頑強に育てようと取り組んできた。
最初の数ヶ月は、良質の乾草など粗飼料を中心に肥育前期用の配合飼料を飽食させ、次第に仕上げ用配合飼料に置き換えて肥育してきた。このケースだと、去勢牛は運動と粗飼料の多給、それに配合飼料を多量摂取により、言うところの平茂勝系統の牛では、大型の体型になり、仕上げ時には体重が900kgを越すのも珍しくなくなった。雌牛は育成時から、本来の早熟性が基で、去勢牛より丸みを帯びて背腰は平らで広く肥育牛らしくなり、700kg前後で仕上がる。この結果、肉量はともかく、肉質では、雌牛の方がランクが高い。
通常、肥育は雌のケースのように、生後15~20ヵ月までに目一杯増体して丸くさせ、その後は半年余り、その摂取量を維持し、その後は次第に食い止む形となり、体脂肪(皮下脂肪や筋間脂肪)を徐々にそぎ落として仕上がる。去勢牛は、常に発育旺盛で過肥でなく均整の取れた肉付きのまま仕上げ期を迎える。そのため食欲が順調なため、体型が大型化すればするほど、肥育末期でも増体するため、俗に言う枯れた状態になり難い。これは雌雄の体脂肪における早晩性の違いである。去勢牛のそれは、摂取量の増大が肥育期間の長期化と飼育経費の増大に繋がる。
そこで、去勢牛については、ことさらに導入後の過度な運動は避けるべきである。
とくに和牛の体型の大型化と、肥育期間が2年間で仕上がることを考慮して、肥育の形を出来るだけ雌牛同様の飼い方に変えて行う。
大型の肥育センターなどでは、導入から出荷まで同一の飼育マスの中で、運動を意識することなく飼育している。去勢牛は、5頭程度を収納できる飼育マスで、運動量を抑え、生後20ヵ月令までに、体重を630kg以上にもっていき、まるまると肥らし、体脂肪の蓄積を促す肥育法が功を奏するようである。これにより飼料効率も高まり、肥育期間の短縮と飼育経費の低減が実現する。
ちなみに、繁殖用の雌牛は、約10歳までの繁殖に支障の無いよう、十分な運動により四肢を鍛えるは常識的なことである。

写真は、導入から1ヵ月目の去勢牛群である。