まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

徘徊老人に会う

2016年04月04日 | 日記

いつものお掃除マンション。
5号棟と6号棟の間がレンガ風の遊歩道になっていて
崖の上にみごとな桜が咲いています。



お昼休みに写真を撮っていると・・・
マンションの前がちょうどベンチになっていて
そこに座っていたお婆ちゃんにいきなり話しかけられたのです。
和服姿のきちっとした身なりのお婆ちゃんで
女性の年齢はわかりませんが80歳前後と言った印象でしょうか。

 「にのへに行きたいんだども・・」
 「え、にのへ、ですか?」
 「んだ、にのへ、岩手のにのへ町」
 「岩手!あの東北の岩手県ですか?」

お婆ちゃんはそれには答えず笑顔でニコニコ。
いきなり「にのへ」などと言われてもサッパリ訳がわからず
私は途方に暮れるばかりでした。



そのまま置いて帰る訳にもいかず
私もベンチに一緒に座ってしばらくお婆ちゃんと話すことにしました。
青森県に「八戸(はちのへ)」という町があるように
あの地方には「〇〇へ」という地名が多く「三戸」は聞いたことがあります。
おそらくそのあたり町ではと想像したのですが・・

 「お婆ちゃんはこの近所の人ですか?」  
 「東京は性に合わん。二戸に帰りてえ」
 「二戸には家族がいるんですか?」
 「んにゃ、誰もおらん。だども・・」
 「だども?」
 「二戸はええとこだ、川さ流れて山があって、そろそろ桜も咲く頃だ」
 「へえ、いいですねえ」
 「んだ、やっぱり田舎がええ」

話が噛みあっているようないないような・・・
この時点でお婆ちゃんが「認知症」であることは想像できましたが
生憎、日曜日は私一人なので他のスタッフはいません。
目を離したらどこかへ行ってしまいそうなので
仕方なくマンションの管理人室に連れて行くことにしたのです。



結局、管理人と相談の上
仕方なく「徘徊老人」として警察に保護をお願いしました。
間もなく近くの交番から二人の警官が駆けつけ
再び事情聴取となったのですが・・・
私は最初に会った時の状況だけを話して仕事に戻りました。



管理人の報告によると・・・
お婆ちゃんは無事に家族の元に帰ったそうです。
思っていた通りご近所に住む方で
家族が駐車場に車を取りに行っている間にフラフラと歩き出したとか。
でも、何事もなくて本当によかった!

お婆ちゃんが幸か不幸かはうかがい知る余地もありませんが
ふるさとの話をする時のあの夢見心地の笑顔が
とても印象的でしたねえ。
それにしても「徘徊老人」とはせつない言葉ですねえ。
安酒場のネオン街や得体の知れない路地裏を
好きで徘徊している私とは訳が違います。(笑)
東北はこれからが桜の本番、二戸という町に行ってみたいなあ・・・