チャチャヤン気分

《ヘリコニア談話室》後継ブログ

暗黒の城

2009年09月26日 00時00分00秒 | 有村とおる
有村とおる『暗黒の城ダーク・キャッスル(角川春樹事務所04)

 小松左京賞第5回授賞作品の本篇は、SFサスペンスでした。いやー面白かった。SFの冠は別に要らないかも。先々回の『セカンドムーン』の感想文で、福田和代を引き合いに出しましたが、むしろ本篇こそ福田作品ともろ競合する作風かもしれません。文体はミステリ的に手がたく、残った謎はありません。本格ミステリではありませんが、ミステリーの文脈で読んでも十分満足できると思います。

 堀晃さんが本書の感想をアップロードされています。「女性の造形がうまくて」と書かれているんですが、それは私も同感でした。ただケチをつけるなら、主人公の男がちょっとバカすぎというかニブすぎなのが気になった。この作品、主人公が作中の女性なみの頭脳を持っていたら展開はもっと変わったのでは(^^ゞ

 上記堀さんによると小松左京が「ドストエフスキー的」と評したそうですが、なるほどです。私は読中ヴァンダインの描く犯人を二重写ししていましたね(^^;。そちらに着目して読むならば、本書は本格SFといってもよいでしょう。その意味では、本篇はアンダースン『脳波』なんですよね!
 さてラスコーリニコフは死にましたが、もっとおっかなそうな麻希名とその息子は生き残っているんですよね。当然続篇では麻希名との対決が準備されているのでしょうか。あ、そういえば霊的存在と化した(のか?)美咲の謎が残っていますし(笑)。うーん続篇出ないのかなあ……。

 追記(妄想編)。
 麻希名という名前は一般的ではないだけに、どうしてもmachinaとダブってきますね。ひょっとしたら実際、麻希名は機械仕掛けなのではないのか。そう著者によって想定されているのではないでしょうか?
 そうだとすれば美咲という命名も意味を帯びてくる。ミサキとは霊の一種ですから。wikipediaによれば、「ミサキは、日本の神、悪霊、精霊などの神霊の出現前に現れる霊的存在の総称。名称は主神の先鋒を意味する「御先」(みさき)に由来する」とあります。
 つまり生身の美咲は人間でも、その「内部存在」は、高位存在のミサキ(人間界との接触点)だったのかも。うーむ。背が高いと再三描写される佐藤美咲について、私は、この作者安易に伊東美咲のイメージを流用してるなあ、と考えていたのですが、いや浅墓でした。

 ――という私の想像が正しければ、「ダーク・キャッスル」第2部は機械仕掛けの麻希名vs霊的存在(ミサキ)の美咲の人間界を超えた闘争となるはず。
 というのはほかでもなく、マキナという機械仕掛けを創造した存在が当然そこに想定されていなければならないからで、美咲の後ろ楯が善神だとすれば、もとよりそれは悪神となる道理でありましょう(但し逆の可能性もあり)。
 第二部は一転神々の闘争の物語となる可能性があります。少なくともそういう背景設定が明かされるに違いない。――と私はここではっきりと予言し記録しておくのであります(^^ゞ
コメント
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