ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート

「神話探偵団~スサノオ・大国主を捜そう!」を、「ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート」に変更します。雛元昌弘

神話探偵団120 『丹色の研究』

2011-10-12 10:28:29 | 歴史小説
写真は保渡田古墳群の八幡塚古墳の埴輪群(王に巫女が酒を捧げ、兵士や力士が守っている)

「丹を矛や船、服に塗って戦うって、まるで源平合戦の平家みたいだけど、どういう意味なの? 鳥居や神社の柱も赤く塗っているわよね」
 ヒメの母上の質問は、ヒメと似ている。
「コナン・ドイルの『緋色の研究』になってきたわね」
 推理小説家のヒメにとっては、赤は緋色になってしまう。
「緋色って、『風と共に去りぬ』のスカーレットよね。情熱の火の色、火色よね」
発想が飛躍する親子問答になってきた。
「昔、歌声喫茶で、緋色のサラファン縫いながら♪♪♪って歌もよく唄ったわね」
 どんどん、昔話に入ってきた。
「そういえば、『赤』という漢字は、『大』と『火』からできている、『大』の字は両手・両足を開いた『人』の形からできたって習ったなあ」
 カントクの時代の教師って、今と違って、漢字や漢文の素養があったのかもしれない。
「壬申の乱の天武天皇の軍も赤旗です。柿本人麻呂は高市皇子の挽歌で、皇子の旗が野焼きの赤い火のように靡いた、と詠っていましたから赤=火だと思います」
 万葉集に親しんできた高木も一言、付け足すことにした。
「そういえば、各地の火祭りは、火が悪霊を祓う、という考えではなかったかな?」
 カントクは、高木の財団の仕事で、『火祭り』の記録映画を撮っていたことがあったことを思い出した。
「普通、赤=火と考えられていますけど、私は赤=血=霊(ひ)色と考えています。血は祖先霊を表し、赤色の矛や船、服で戦うというのは、祖先霊に守られた『霊(ひ)』の軍ということだと思います」
 ヒナちゃんから、思いがけない説が出されたが、そういわれてみると、霊(ひ)信仰はこの探偵団のメインテーマだったけど、高木はそこまで思いつかなった。
「若御毛沼命、後の神武天皇の皇后のホトタタライスキ比売は、大物主が丹塗りの矢に化けて、便所の水路を流れてきて、大便をしているセヤタタラ比売のホトを突いて生まれた、とされていましたね」
 高木も同じことを考えていたが、マルちゃんの発言の方が早かった。
「それって、処女の血が大物主の矢に付いた、ってことじゃあないかしら。そうすると、丹って血のことになるわよね」
 ヒメの母がいうと自然で、説得力がある。
「大物主=大年神の子の大山咋(オオヤマクイ)神を主人公として、京都の上賀茂神社に同じような丹塗矢伝説がありますね。時代からみて、こちらの伝説から、ホトタタライスキ比売の物語ができたと思います」
 マルちゃんは、京都にも詳しい。
「埴輪に顔を赤く塗っているのがあったけど、それも血を表しているのかしら?」
 小説家のヒメは、一度見た物や写真を忘れないで覚えていて、いつでも文章にして描くことができる。
「埼玉県の保渡田(ほとだ)古墳群の八幡塚古墳の前に、埴輪群が復元されていたけど、王と王に酒を捧げる巫女、兵士や力士は、顔を赤く塗っていたね」
 カントクは、埴輪の映画も撮っているから、全国の埴輪を見ている。
「その場面は、古墳の前方の方壇上で行われた、王の霊(ひ)継ぎの儀式を再現したものだと思います。死んだ先王の霊(ひ)を受け継ぐために、霊(ひ)人として、顔を赤く血の色で染めていたのではないでしょうか」
 ヒナちゃんの霊(ひ)信仰論は首尾一貫している。
「そういえば、清酒(すみざけ)はキリスト教のワインと同じで、スサノオや大国主の霊(ひ)のお酒、という事だったし、鹿の血で稲の苗を育て、猪の血を田に播いて稲を育てるのは、黄泉帰りの再生儀式、という話もあったわね」
 ヒメの母も記憶力はすごい。
「テングの赤いお面も同じなのかしら?」
 ヒメはさらに想像を先へ先へと膨らませている。
「血を顔に塗ることは、霊人()=神になることだと思います。古墳の前方部で、次王は霊人()として先王の霊(ひ)を清酒で体内に取り込み、地上に黄泉帰って王になったのだと思います。その儀式に関わる人たちは、みな、顔を赤く丹で染めたと思います」
 ヒナちゃんは、ここでも、答えを用意していた。
「赤い顔のサルが神の使いとされるのも同じかしら?」
 ヒメの発想はいつも飛んでいる。

※文章や図、筆者撮影の写真の転載はご自由に(出典記載希望)。
※日向勤著『スサノオ・大国主の日国―霊の国の古代史』(梓書院)参照
※参考ブログ:邪馬台国探偵団(http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/)
       霊の国:スサノオ・大国主命の研究(http://blogs.yahoo.co.jp/hinafkinn/)
       霊(ひ)の国の古事記論(http://hinakoku.blog100.fc2.com/)
       帆人の古代史メモ(http://blog.livedoor.jp/hohito/)
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