ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート

「神話探偵団~スサノオ・大国主を捜そう!」を、「ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート」に変更します。雛元昌弘

神話探偵団95 大国里は日本の中心になるはずであった

2010-09-11 10:03:26 | 歴史小説
南から見た高御位山


「今は木が茂って見えなくなっていますが、私が子供の頃には、頂上の大きな岩の下に、鯛の形をした岩が平野部から見えていました。鯛ジャリと言っていましたが、その鯛の頭は下の方を向いているのです。もし、この鯛が上を向いていたら、ここが日本の中心になって栄えたはずだった、と聞いています」
「その鯛ジャリは、石の宝殿がある伊保山の山頂から見えます?」
こういう話を小説に使いたいに違いないヒメはすかさず反応した。
「私の家は伊保山の西で、高御位山の南ですから、伊保山からも当然、見えたはずですよ」
「その話は、誰からお聞きになりました? 」
長老も食いついてきた。
「子どもの頃に、誰かから聞いたのか、それが親だったのか、祖父母からだったのか、あるいは近所の人からなのか、はっきり覚えていないですね。ただ、同級生もみんなその話は知っていて、一緒に話していた記憶はありますよ」
「何か記録が残っていませんか」
長老は、文字に書かれた記録にこだわる。
「私も気になって、退職してからいろいろ調べてみたのですが、書かれたものは見つかりませんでしたね」
「同級生で、話を覚えている方はご健在ですか?」
小説家のヒメは、伝承に関心が強いらしい。
「老人会に何人か同級生が残っています。女性の方が長生きですからなあ。最近もそんな昔話をしたことがありますよ」
「どんな話をされました?」
「子どもの頃には、鯛の形が見えていたのに、いつ頃からか、木が茂ってきて、全く見えなくなったなあ、というようなことが話題になりました」
「ここを日本の中心にしようとしたのは、いったい誰なんでしょうか?」
マルちゃんも乗り出してきた。
「そう言えば、誰が、というのは聞いたことがないですね」
「疑問には思いませんでした?」
長老はやはり懐疑的というか、慎重だ。
「大国主命と少彦名命が石の宝殿を造られた時に、出てきた石屑を高御位山の頂上まで運び、上から投げ捨てたところ、石が鯛の形になった、と聞いています。だから、何の疑問も持たずに、それは大国主命だと思っていましたけど」
「他の皆さんもそうですか」
「みんなそう思っていますよ。現に、この高御位山に祀られているのは、大国主命なんですから」
事実は小説より奇なり、ということを証明してみせたような話しだった。
こんなおいしいネタを聞いたヒメの頭の中では、名探偵・轟三四郎を主人公とした「高御位殺人事件」のストーリーが一気に出来上がりつつあるに違いなかった。当然、事件と古代史の両方の謎解きの鍵はこの老人の話になるに違いなかった。死体発見現場は、石の宝殿と高御位山の連続殺人かな、しかし、ヒメは誰も考えつかないようなことを書くからなあ、と高木は想像をめぐらした。
「故郷のすてきなお話、ありがとうございました。いずれ、是非、皆さんのお話を伺わせていただきたいのですが、お願いできないでしょうか。実家が姫路なので、時々、帰ってきますので、その時に連絡させて頂きたいと思います」
サングラスを外し、名刺を渡しながら、ヒメは抜かりなくアポを取り付けようとする。
「やはり、高階樹さんでしたか。小説を何冊か読ませていただき、テレビや雑誌でもお顔を拝見しています。こんなにきれいな方とは思いませんでした」
高木が知っている限り、男好きのする美人のヒメは、こういう取材で断られることはなかった。
「郷土の歴史を多くの人に知っていただくために、喜んで協力させていただきますよ。あいにく、退職してから名刺は持ち合わせていませんが、石の宝殿から国道2号を西に進んだところにある天川医院の天川龍一と言います」
「高砂に同級生の医者がいますので、電話番号を聞いてから連絡を差し上げます。先生はお医者さんでしたか」
「いや、医院は同居している息子が開業しています。私は高校で理科の教師をしていました」
「私は古代史を研究している八雲大学の大野靖と申します。その際には、高階さんとご一緒させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします」
長老も抜かりなく、名刺を差し出した。

資料:日向勤著『スサノオ・大国主の日国―霊の国の古代史』(梓書院)
参考ブログ:邪馬台国探偵団(http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/)
     霊の国:スサノオ・大国主命の研究(http://blogs.yahoo.co.jp/hinafkinn/)
     帆人の古代史メモ(http://blog.livedoor.jp/hohito/)

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