蒲田耕二の発言

コメントは実名で願います。

健さん

2014-11-23 | 文化
訃報が伝えられてから3日目、いつも宅配の食品食材を届けてくれるドライバーのお兄ちゃんが見事に角刈りにして現れた。それまでは、マンガのキャラ風のザンバラ長髪だったんだけどね。笑ってしまった。いや、もちろん好感の笑いです。

孫、ヒ孫の世代の若者にも愛されたところが、健さんの健さんたる所以だろうなあ。オレらにしても、高倉健とは呼ぶ気になんないもの。普通、渡辺謙とか役所広司とか、役者の名前は呼び捨てだが。

30年前にブラッサンスが亡くなった当時、「私たちフランス人はみんな、家族の中の誰かを失ったような気分になった」とフランソワーズ・アルディが語っていた。日本人にとっての健さんは、それに近いんじゃないか。

演じた役の大半はヤクザとか犯罪者とか、身近な人間像じゃなかったのにね。

全共闘全盛のころ、スクリーンで健さんが「死んでもらいます」の決めゼリフを吐くと、客席から「異議なし!」の声が掛かったという。全共闘の決めゼリフが、これだった。

しかし、いくら全共闘が共感を示そうと、健さんと彼らのあいだには随分と距離があったんじゃなかろうか。

だってさあ、全共闘とは極度に同調圧力の強い集団だったんだよ。彼らはリベラルでは全然なかった。異分子の存在を絶対に許容しなかった。「異議なし!」は、反対意見を封じるサインだった。健さん演じる独立不羈のヤクザとは、精神のあり方がまるで違う。

多様性を否定した全共闘と、意地の美学を貫くヤクザとは、それぞれのやり方によって日本人、日本社会の本質を体現していたのかもしれないけどね。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 自爆財政 | トップ | ナッツ・リターン »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

文化」カテゴリの最新記事