Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

UHER CR240 stereo について

2018-02-12 10:17:49 | UHER

 西ドイツ製のUHER CR240 stereoは日本国内では山水電気株式会社が輸入、販売していた。
 

 (出典 http://audiosharing.com/review/?cat=102)


 そのサンスイはもはや存在しない。山水電気といえば電気少年にとっては小型トランス「STシリーズ」で子供の科学のかまぼこ板(!)工作シリーズや初歩のラジオの記事で知った。田舎の電気屋では当然のように置いてなかったが通販の「エレックセンター」に現金書留で数百円送ってドキドキしながら待っていた。小さな箱に入っていた宝石は「マブチモーター」と共に遠い記憶の中。「初歩のラジオ」も「エレックセンター」もいなくなってしまったが「子供の科学」はまだ続いているらしく嬉しい限りです。同年代の同好の方々は子供の科学と模型とラジオ見て大きくなった(!)と信じてます。

 UHER CR210 stereoは 210,000円でUHER CR240 stereoは 240,000円とはちょっと出来過ぎだが(このカタログのCR210はさらに値上げして 220,000円になっている)。社会全体が豊かだった70年〜80年代、JBLの代理店だったサンスイは大変な勢いで(と思う)、どれくらいの数を売らなくては、、なんてあまり考えてなかった価格設定だったのかもしれない。また海外製品には独特のオーラがあり高価だったがそれに見合った満足を得ることができたのだろうと思う。国産品は安くて高性能でオーディオの大衆化にうまく乗ったがその終焉も早く専業メーカーはIT産業への転嫁を図った以外は消滅していった。現在はその当時の遺産で楽しむことができていて感謝しています。山水トランスの技術も「橋本電気」に引き継がれていて心からエールを送りたい。





 


 拙宅のUHER CR240 stereo です。ジャンクを入手してそのままになっている。


 
 CR210と共通のボードもあると思われるがドルビーボードが加わって垂直に4枚のボードが整列している。CR210はオートリバースだったが後発のCR240は一方通行になっていて何か問題が発生したのだろうと思うが走行メカニズムには大きな変更はない。2本あったキャプスタンは1本になったがフライホイールは2個のまま残されていて1個はイナーシャになっている。構造上イナーシャ側についてたキャプスタンはスリップし易くCR210では走行方向で性能差があったと思う。
 
 現在の状況は一切の動作はできない状態で目視ではモーターは回っていてゴムベルトは外れている。分解してみると

 リール軸のセンサーは片方のみになっている。ところでCR210はなぜ両方にあったのだろうか?カセットテープは常に両方の軸が回転しているはずだが、、、。トラブルでテープがキャプスタンに絡まった場合は巻き上げ軸だけ回転が止まるということか。。ソレノイドも1個でかなり簡素な感じだがベルトの走行などは変わっていない。やはりメインベルトは掛け直してもすぐに外れるのでこれも要交換です。

 こちらもベルトが到着するまで待つことにします。

 ベルトが到着しました。
 
 大小これだけ入っています。適当に選択して取り付けるとうまく動くようになりました。しかし再生ボタンの保持ができないし、早送り、巻き戻しも早々に停止してしまいます。CR210もそうだったがwebを見てもやはりこの辺りのトラブルが多発している様子。
 リール軸のプレートにはシマシマの模様があって回転しているのをLEDとフォトトランジスタで検出していて、CR240は片側のCR210は両側のリールに付いています。CR240は幸いにも回路図とマニュアルが入手できたのでこの辺りをチェックしてみる。
 
 センサー基板(コードが切れてしまってますがこのコードが信号の出力。切れたのが原因ではないです)フォトトランジスタの出力は次の基板に接続されていてチェックポイントがあります。
 
 マニュアルでは「MP1」で基板からチェック端子が見える。同じ基板ですがCR210にはこの端子はないのでやっぱりトラブルが頻発したらしくメンテナンスポイントを設置したようです。オシロを当てると方形波が現れるようだが案の定何も出力されていない。そこで低周波発信器を繋いでみると

 40Hzで0.8Vで再生、早送り、巻き戻しは正常動作するようになった。やはり「800」というセンサー基板に問題がありそう。LEDは周囲を暗くしても光っている様子はない(CR210も)この辺りが問題なのだろうか。LEDライトがあったので隙間から照らしてみたが

 やはり反応なし。。

 ところでジャンクのCR240AVがありますのでこちらも参考にしてみることに
 
 

 なんとこの機種はリール軸にセンサーがなくなっている!照明だけになっていてやっぱりこの辺りのトラブルが多発か。不動だがモーターは回っているのでベルトは交換すると問題なく再生する。

 リール軸のセンサーがなくなっているがオートストップはあるのか、、と思いながらカセットの終端まで聞いていたが普通にストップする。。巻き戻しもOK。どうやっているかは不明だし参考にならず。この部品ドリ機は欠品もあるがこれからの展開次第では下剋上もありえるかもしれない。。AVは後発らしいがどこが異なっているのだろうか。音質はとても安定していていい感じです。録音時のボリュームは左右2個に分かれているがその下にあるレバーを操作すると内部でギア接続されて連動する。この辺りはNAGRAと同様でメーターも左右あるしこの機能でこの大きさは必然かもしれない。

 備忘録

 録音ボタンは機構からの推察だが押すときはレバーをストップにするとロックが外れて押し込むことができる。そのままレバーを下に戻すとロックがかかりレバー左右のstart、pauseになる。録音を終了するときはstopにするとロックが外れてボタンが飛び出す。ボタンを取り出すときはこのロック機構を解除しなくてはならず(ボタンの飛び出し防止のロックがもう一段ある)ボタンの根元に極細のドライバーなどを差し込んで横方向にロック板を移動させて取り出す。強力なスプリングでボタンを引き出す方向にテンションがかかっているので(大きいので大丈夫かと思うが)パーツの紛失に注意する。装着するときはその逆だがスライドスイッチとのジョイントは差し込んだだけではされず再録基板を外してスライド部分を移動させて結合させる。

 
 ヘッドブロックの動作のコントロールはこの700基板で行われる。

 右端が800基板にあるフォトトランジスタで左上にある同じく800基板にあるLEDから出てリールにあるシマシマ模様で反射した赤外線を感知して電流が流れる。シマシマ模様は回転するので断続した信号となってMP1チェックポイントでの波形は前図のようになる。光が当たらない時は9.6VだがLEDライトを当てると

 電圧は1V以下に下がる。またLEDライトを一生懸命に振ると(!)再生状態は維持されたのでフォトトランジスタを含めた回路は生きている様子。肝心のLEDを外してみると

 ピンボケですが、、米粒のようなダイオードでアナログテスターで抵抗値を測ってみるとどうもダメっぽい。このLEDを通って700基板に電流が流れているようなのでここを通過する電流を測ってみると0.5mA。startスイッチを入れるとLEDを通してソレノイドに電流が流れる関係で20mAの電流が。LEDが光ってフォトトランジスターによって脈流信号が流れることでこの状態が維持される。スイッチをstopもしくはpauseにすると回路が遮断されソレノイドが切れてLEDも発光しなくなる。LEDは要のパーツのようで破損しているようなら代替えのLEDを探さなくてはならない、、。

 秋葉原の秋月電子に適当な赤外線LED(NJL1104B)とフォトトランジスタ(NJL7112B)を各々10個ずつ注文した。いずれも1個30円(!)
 
 
 LEDの定格は1.2V〜1.5V 50mAとのことで乾電池つないだが光らないぞ!そういえば赤外線LEDだった。。基板にあるフォトトランジスタに当てるとしっかり反応する。ところが基板のLEDと置き換えても反応しない、と思ったらstartにするのを忘れてた。

 この状態でMP1チェックポイントの電圧が下がります。20mA(LEDの順方向DCRは実測25Ωだった)でも機能している様子。ちょっと光明が見えたか?
 
 基板にLED載せてみるもシマシマには反応しない。角度が悪いのかもしれないし、LEDが大きいのでそのままではシマシマに当たってしまう。どうせ加工が必要なのだからとフォトトランジスタも交換した。
 
 やはり各々の角度が気になるが鏡を当ててみると

 一応反応するようなのでこの状態でなんとかしましょう。800基板を少し持ち上げないとシマシマと当たってしまう。あまり上げると反応しなくなるしカセットテープにも当たってしまう。基板裏にスペーサーを入れた一方で今回は基板上にあった麦球は残念ながら撤去せざるを得なかった。
 

 

 これで走行系は正常動作するようになった。
 しかしこのCR240はまだ問題を抱えている。録音再生ヘッドが片ch断線、電池ボックスの端子の破損など。特にヘッドは前出のCR240AVから移植予定だったがどうもあちらの方が良さそうで、こちらのCR240がドナーになる可能性が高い。まあせっかく治ったのだから(片chだが)もう少し聴いてみようと思います。

 UHER CR210 stereoの陰に隠れている(試聴記も見当たらないし)UHER CR240 stereoだが使ってみるとなかなかのモンだと再認識した。この個体の外観が良好なのも手伝ってだが小型、高機能を具現化したようなパネルはとても美しくバルナックライカを彷彿させる、といえば褒めすぎか。カセットテープの能力を限界まで引っ張り出すようなことは日本製品に任せて、向かうベクトルが違うような製品だと感じた。

 

 お読みいただきありがとうございました。


 追記 1
 カセットの終わりの方は巻き上げ軸のスピードが遅くなる関係か途中でシャットオフすることがある。これはセンサーの感度を上げる必要があるということで横着して横からラジオペンチでつまんでLEDとフォトトランジスタが少し向かい合うようにした。ところがスイッチを切り忘れたらしく(それすら忘れた)反応しなくなってしまった。分解してみるとLEDがご臨終。早速付け替えて内側に向けてみた。元々の2つはかなりの角度がついているがスペースの関係でほんの少しの角度しかつかない。

 でも効果は絶大で途中のストップは解消された。
 LEDとフォトトランジスタだがもう少し小型のものが入手できないだろうか?(規格は問題ないのだが)





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2 コメント

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Unknown (ハナブサ)
2021-04-30 16:14:49
Uherのカセットテープレコーダー、ものすごく惹かれた思いでがあります。
ご自身で修理されるとは、羨ましくもあり、
敬服する次第。
当時UHERは大変高価でカタログを眺めるだけ。
20年ほど前か、秋葉原界隈をあるいていたら、
店のショーケースに非売品の
CR240が飾っていたので図々しく見せてもらい、
ダメ元で売ってくれないかと聞き、
譲ってもらいました。
カセットがエジェクト出来ない故障品ですが、
居間に飾って眺めています。
タンバーグのカセットレコーダーもデザインが良く買ったが
すぐ故障、修理してもらったがこれもオブジェ化してしまった。
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UHER Tanberg (koban)
2021-04-30 19:39:06
 こんにちは 拙ブログをご覧いただき有難うございます。
 私も当時UHERは写真だけでしたがその美しさと高さ(!)に溜息をついてました。集積度が高く修理するにはなかなか手強いですね。タンバーグの特徴的な十字のレバーも懐かしいです。カセットデッキについては知りませんでした。
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