Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

UHER 4400 Report Stereo について

2018-02-12 16:42:38 | UHER

 西ドイツのUHERからはテープデッキが多数発売されていて日本へは当初バルコムトレイディングカンパニーという会社によって、1970年代後半には山水電気株式会社が総代理店となり数種類の可搬型のテープデッキが輸入された。UHERを有名にしたのは可搬型オープンデッキ 4000 Report シリーズかと思うが1976年にはステレオ対応の「UHER 4200 Report Stereo IC」が国内価格179,000円で販売されていた。1979年に代理店は三洋電機貿易が引き継ぎ1980年には後継機としてUHER 4200(4400) Report Stereoが登場した。1980年のドイツでの価格は 1,248DMだった。(1980年頃の無線と実験誌に新製品として写真入りで紹介されていた記憶がある。。当時の無線と実験はとても充実しておりなかなか捨てることができない。改めて記事を探したら1981年2月号の「今月の新製品から」という連載記事にあり価格は248,000円でこの内容なら安い(!)とある。。)

 (出典 https://www.usaudiomart.com/details/649053179-uher_4400_stereo_4_track_report_monitor/images/675107/)


 「4200 Report Stereo IC」とのいちばんの違いは外観でアイキャッチーな大きな丸型メーターが特徴だがこれはSONYデンスケの影響かと思う。モデルチェンジ後も開閉リッドの形などの細かな外観の変更があり、個人的には好ましい変化だった。走行系はReport Stereo ICから引き継がれたが操作性は改善され、また電機系統では2ヘッドから3ヘッドと大きな変化があった。記事ではその違いが詳細にレポートされており飛躍的に使いやすくなっているとのこと。ライターの方は初代の4200 Report Stereoから使い続けているらしく、ディスクリートアンプから出力のみIC採用した4200 Report Stereo ICとなりその後のフルモデルチェンジだったらしい。
 走行系の模式図

 モータープーリーは軸の両方にありキャプスタンとリール軸に振り分けていて4スピード対応。この機構はほとんど変わらなかったらしい。

 拙宅のUHER 4400 Report Stereo
 
 ACアダプターはないので単一電池5本(!)入れて通電するも(当たり前のように)動かない。やはりテープデッキは経年劣化は避けられず全滅(不動率100%)です。照明スイッチをONにすると10秒だけ(美しく)点灯する。(電池が消耗すると消えないとのこと)
 全体の佇まいは(小型なのが効いているらしく)とても好ましくキュートです。

 
 フロントパネルを開けると大きな丸メーターはスプリングでフローティングしている。フィールドでちょっとくらい何かにぶつけても大丈夫、、ということか。裏蓋を開けるとボール紙の仕切りを外して
 
 モーター軸のキャプスタン側のゴムベルトは原型をとどめないくらい溶けている。反対側は無事で材質が異なっているのだろうと思う。レコーディングウォークマンもこんな惨状だった。
 
 丁寧に拾い集めて(すごく汚れる)またプーリーにこびりついたのをアルコールで落として届いたゴムベルトと交換するも19cm/sec以外はうまく動かず。。なぜだろう。

 4スピードの切り替えはダイヤルを回して長いアームを動かすことでフライホイールを回転させる段付きプーリーの位置を変えて行う。STARTボタンを押すとこの段付きプーリーの横にある支点で傾斜してフライホイールに押し付けられる。この押される強さはスプリングによって発生するがどうもこの力が足りない様子。もちろん支点部分の確認もおこなったり接触する部分の掃除もおこなったがスリップは変わらず。速い速度の時はプーリーの大きな径の部分でドライブされるので問題は出ないが2.4cm/secくらいになると非常に細い軸になって接触するまでの距離も長くなる上にスリップもしやすくなる。しばらく観察したがこのスプリングを強くする以外には解決しそうに無いので切り詰めてみたがうまくいきました。スプリングがへたったということだろうか?釈然としない気はする。

 しばらく動かしてみたが支障は出ず快調。内臓されるACアダプターが無く電池駆動だがON時のランプがあるので以前の機種と比べてスイッチの切り忘れが減ったとのこと。「前はよく電池をパーにした」とライターの方が書かれていた。またモーターに弱点があったのか現在でも需要があるらしく純正以外と思われるものが供給されている。

 ドイツ製品といえばLeicaをはじめとする精密機器やBMWやポルシェなどの工業製品が思い浮かぶしバウハウスの流れを感じるデザインも。あれほどの隆盛を誇ったフィルムLeicaが不当なほど安く取引されているのを見ると現実から外れて必要がなくなってしまった製品はいかに優れていても廃れてしまうのか、、と考えてしまう。時計やカメラ、車やバイクなどは本来目的があって存在していた道具だが趣味人は目的を達するまでの過程をも楽しんでいたわけで、フィルムや記録媒体の衰退で銀塩カメラ、テープレコーダーが廃れていくのは仕方ないと思うが匠が設計し当時の高い技術で丁寧に生産された美しい工業製品にはやっぱり惹かれる。一方で動的状態で保存することの困難さも改めて感じた。いずれ寿命を迎えるパーツは現時点では再生が困難な場合が多いが3Dプリンターやスキャナー技術が進歩して気軽にプラスチックやゴム製品、金属製品が再生できる日が来ることを願っています。




   お読みいただきありがとうございました。


 追記 1
 UHER CR210の整備が難儀して3週間くらいは費やしてしまった。メカニズムとエレクトロニクスの両方が詰まっている上にポータブル機は堅牢さも求められるわけで高低温、多湿の屋外使用に耐えらるというのはなかなか大変です。

 追記 2
 やっぱりFayrayについて書いておきたい。吉本興業所属のタレントさんで日本で活躍したのは20世紀の終わり頃からの約10年間だった。大ヒット曲はなかったがドラマやCMのタイアップが多かったので認知はされているアーティストだった。ミスコンに出るくらいの美貌もあってデビューは当時大流行していた小室ファミリーのアイドルだったが次第にセルフプロデュースによるアルバムを発表するようになり、2009年までの間にアルバム8枚を残している。アイドルからの流れは竹内まりやと似てなくもないがその後は米国へ移住して結婚し現在でもニューヨークで旦那さんと音楽活動を続けている。

  
             白い花(2003年)                HOURGLASS(2004年)                光と影(2006年)

 小室ファミリーとしては最初のアルバム1枚でそれ以降はセルフプロデュースとなる。後半は売り上げはなかなか苦戦したようだがとにかくこれだけの作品を出せたことは聴く側にとっても良かったと思う。歌手としての資質とコンポーザーとしての素晴らしさが詰まっているようなアルバム。数年間にスタイルはアイドルからプログレまでどんどん変わっていき、日本での活動は「寝ても醒めても」(2009年)で終わっているが2006年にNYに渡ってからは前述のように「THE PRESENT」というユニットで配信で楽曲を発表している。名前もFayray(吉本興業の社長が命名した)からMina Ohashiになっている。ホントに自分のやりたい音楽にまっすぐに向き合っていると感じる。ポップミュージシャンの旬な時期は一部を除いてとても短いと思っている。その時期にいかに集中して作品を残せるかは運もあるかもしれない。(話は変わるが)昔は作品をレコード(CD)にすることはかなりの高さのハードルだったかと思うがネット社会となって以前なら埋もれていた才能が認知される機会は格段に増加した。世間ではCDは売れてないみたいだが多種多様の音楽に接する機会は増えて好きな分野を深く追っていけるようになった。


 追記 3
 Fayrayのアルバム「HOURGLASS」の一曲目「first time」はコントラバスのピチカートから始まるのだがJBL メヌエットの片方が歪む。ボイスコイルとエッジを交換しているがここに来てボロが出た。もう一度エッジとダンパーを外してギャップを掃除した。しかし大丈夫と思って接着、組み立てるとやはり歪んでいる、、。歪みの原因はボイスコイルの接触と思われたがどうも納得がいかない。センターキャップや引き出し線の共振まで疑ったが違う。意を決っして接着してあったセンターキャップを切り取って改めてボイスコイルの内側のギャップを掃除した。ここの隙間は名刺1枚位しか入らない。するとビビリは消えてくれてやれやれと再度センターキャップを接着すると、、またビビる。今度は正真センターキャップ付近からのもの。接着を諦めてセンターキャップのみ購入した。同時購入のDBボンドでしっかり貼り付ける。センターキャップの裏には共振防止のウレタン片が2個あるのだが古い方から移植する。

 DBボンドをつけすぎて(ここは仕方なかった)見た目はパッシブラジエータとの違いが目立つがノイズはめでたく消えてくれた。







 



 


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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (ヨシザワ)
2019-01-31 10:48:51
はじめまして。
UHERからたどりつきました。
僕はUHER 4200 Stereoreport ICのジャンクを知人からいただいてレストアしました。なかなかに可愛くて今はメタリックブルーにして愉しんでます。メカは結構微妙ですね。
どちらにお住まいでしょうか?こちらは神戸市(といっても田舎の方ですが)
Re)はじめまして (koban)
2019-01-31 11:02:22
 こんにちは よろしくお願いいたします。
 ポータブルのテープデッキにはロマンが詰まってる(なんとも昭和チックですが)ように思います。設計者の意図がわかるととても共感したりする。
 楽しみましょう。
URL間違い (ヨシザワ)
2019-01-31 22:35:37
ごめんなさい、こちらのURL間違ってました。時間がありましたら覗いてくださいね。ごった煮状態のブログですが。
ではでは。
UHER REPORT STEREO MONITOR (ヨシザワ)
2022-12-08 18:14:46
お久しぶりです。
最近はAMPEX AG-350のトランスポートが手に入ったので録再アンプを作ったりして遊んでいました。
そんな折、知人からUHER REPORT STEREO MONITORを頂いたのですが不動品だったのでメンテをしています。
ネットなどで調べると2トラックと記載されているのですが、やってきたのは4トラック機でした。
2トラック、4トラックの二仕様があるのかなーなんて。
お持ちの個体はどちらでしたか?
UHER (koban)
2022-12-08 18:49:46
 こんにちは 私のは表題にありますように4400ですので4TRです。私も手元に古いAMPEXがあるのですがメカニズムのリペアーキットを入手したのは良かったのですがデッドストックでこちらも寿命が来ていてリペア途中で頓挫しています。
uher (ヨシザワ)
2022-12-09 15:25:55
こちらも4400です。なので4トラック機なんですね。回答ありがとうございました。

AMPEXは600系のワンモーター機もあって、メカはメンテしましたが使い道がないので放置状態です。

STUDER A80VUを筆頭になんやかやと集まってしまったR2R機材達。
まー好きなものを身の周りに置けるのって幸せのひとつですかね。
他人からみたらゴミかもですが。
reel to reel (koban)
2022-12-09 16:01:34
 オープンデッキはとにかく憧れでした。舶来ものは雲の上で写真でしか見る事ができませんでしたから。時代が流れて自分の目の前にかつての憧れが嘘!のような売価で現れたらダボハゼのごとく食いついてしまいます。拙宅にもstuderのコンソールがあります。随分前に海外オークションで落札したものですが当時の自分の熱量に他人事のようにびっくりします。多感な時期の感情は年取っても忘れませんね。感覚と記憶力の劣化で最近のものはすぐに忘却の彼方です。

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