Marantz Model 6はステレオアダプターということで詳しい情報はあまり目にすることはありません。歴代Marantz製品の解説記事でも省略されることが多い。
1958年ステレオ化されたLPレコードにいち早く対応するために「Model 7c」より早い時期に発表されたとされています。2台の「Model 1」とともに専用キャビネットに収めて使用している写真が一般的な姿だがツマミがいっぱいでゴージャスでやっぱりカッコよろしい。冒頭の写真はパネルの表示の向きが90度回転している。キャビネットに収めるときは縦設置に限られるが実際に市販されていたのは独立して稼働する場合に対応した横タイプ(冒頭の写真)もあった。
シリアルナンバーなど詳細については不明だが横タイプでも後ろの入出力端子の表示は縦方向なので縦タイプが本流だったと思われます。「Model 6」は中古市場でも非常にレアでめったに目にすることはありません。たまに見るのはこの横タイプが多いような気がします。単品を収める小さなウッドキャビネットも見たことが(写真で)あります。以前「コピー版 Model 6」をオークションで見たことがありますがかなりの力作で落札されたかは定かではありません。
海外オークションで奇跡的(といっていいのでは)に「Model 6」の純正パーツが出品されていました。
このパーツを利用して横型と組み合わせて「縦型 Model 6」を作ることにしました。
その後入手した資料によると「Model 6」は「Model 6H」と「Model 6V」で横型、縦型の2種類あって寸法と価格は同じで各々$45.00とのことです。
キャビネットの無い「Model 1」は$153.00 なのでこれらを買い足してステレオ対応にするにはプリアンプだけで$200近く必要になります。もちろんメインアンプとスピーカー、ステレオ対応のピックアップなど周辺機器も要るし。その後発表された「Model 7c」はキャビネットなしで$249.00 どっちにしようか迷った人は恵まれた人でしょう。Model 7cは日本円で当時16万円から17万円というからサラリーマンの平均年収より明らかに高かった。
現物から回路図を起こすことは能力と根気が無いので諦めました。
簡単に信号の流れを見ると
「Model 1」の recording output からEQ出力(当然レコード再生ポジション) ー (Master function)ー(Tape recorder入出力)ー(normal-reverse切り替え)ー(Master volume)ー 出力端子(to preamp tape inputs)
Tuners(モノラル2台、もしくはステレオ1台) ー
Tape player ー
TV ー
Extra ー
という構成。ステレオとモノラルの切り替えなどなかなか複雑です。配線は裸単線を多用した直線的手法でACスイッチは2つのコンセントをMAX 1750Wまでオンオフする。phono以外の入力は「Model 6」に直接入ります。またメインアンプへの出力は「Model 1」から。
特徴的なのはMaster volumeは抵抗で構成された20ステップのロータリースイッチで出力直結なのでアンプまでの接続線によって音質に影響を与える。「スペシャルケーブルを使え」としっかり書かれています。残念ながらどの程度スペシャルなのかは現物を見たことはありません。
内部の写真です。
ACコードはかなり傷んでいて交換が必要。同型のものは入手が難しい。
「Model 1」2台と「model 6」1台を収めるキャビネットを作ります。
webを見ていると「Model 1」と「Model 6」のパネル色が微妙に異なっているのが多い。改めて自分のをみたら「Model 1」同士も全く同一ではありません!
また「Model 6」に固定の金具がついてる写真がありました。金具には6ヶ所の穴が開いていて「Model 1」本体の折り曲げて作ったシャーシを箱状に留めているネジと共締めしている可能性が高い。とすれば3台は強固な共通アースとなっていて必要とあらばこの金具のコピーも考えるが、、もしハムが発生したら別アースで対処することにします。
キャビネットの形状もちょっとずつ違いがあるので純正以外でも特注もしくは自作した人がいたようです。個人的な好みとしては「額縁(木枠)はなるべく薄くしたい」のでゴージャス感を演出するテーパー処理は「Model 7」のように側方のみとします。「大きさは「Model 7」と同じ」などというデマもあったらしくまた以前にオークションでこのキャビネットという説明のものを落札した事がありましたが、送られてきたのは小さくてアンプは入らず。出品者は複数出してたのですが採寸ミスだったらしい。もちろん返金してもらったが立派なケースだったのでがっかりしました。
簡単な図面をフリーハンドで描いてホームセンターへ。この時点ではMDFの板厚がわかっていないので空白の項目もある。これがマチガイの素になりました。
12mm厚のMDFをカットしてもらったが誤差やこちらの勘違いもあって手作業の修正が入ります。
ともかくボディができまして仮留めしてみる。
けっこう時間がかかってしまいました。やはりパーツの精度が命。MDFは反りがないので寸法が合っていればクランプで固定して作業が早く進んだはずだったのですが。これから突き板を貼っていきます。
まず#100位のサンドペーパーで段差をやっつける。猛暑の外玄関で15分で汗まみれとなる。(昨年の今頃はアジアンべスパと格闘してた)
突板張りのオールキャスト 肝心の突板はネット注文で入手できます。今回はいつかの余りもので足りそう。
専用の接着剤もあるのですが行方不明(もう使えなくなってるかも)。木工用ボンドは普通のもの(速乾でない)、ローラーと新品の(ここが大切)カッターの刃
霧吹きで湿らせてからボンドを板と突板両方に塗ってローラーで均一に広げる。量はとても大切。少ないと剥がれるし多いと凸凹になる。
そのまましばらく放置。数分すると(今は盛夏ですので)透明になって指にはりつかなくなる
大きめに切った(縮むので)突板を割と高温のアイロンで貼っていきます。気泡が残らないように内側から外側に
完全乾燥を待たなくてもいいと思いますが(少し自信がない)カッターで切っていきます。カッターの刃はどんどん交換する。切るスピードはゆっくり。0.3mm厚の突板を立体的に観察する。断面をシャープに垂直に。
ようやく1面完成。やっぱりたいへんだ。時間がかかります。
突板張り完了しました。まだサンドペーパーはかけてない状態。
ノロマな亀なもんで5時間もかかりました。プロならあっという間にもっと美しく、でしょうね。今日は午後から仕事が無くってよかったです。
あとは接着剤が完全硬化したらペーパーがけしてオイル仕上げにする予定。
接着剤が大体硬化したようなので待ちきれずにアンプ類を組み込んでみる
取り付けネジも色々迷ったが金ぴかパネルにあわせて真鍮製。これで音出し。。もちろん見た目以外何も変わらず。
今まで見たことがないセットですが大きい(!)です。ピカピカだし存在感があります。やはり1950年代のアメリカ製品ということか。
暑い日が続きます。ヒマをみて#320サンドペーパーかけてワトコオイル(ダークオーク)を刷毛塗り
「たっぷり塗れ」と書いてありますが、オイル塗ってはじめて弾かれる所がわかる。ここははみ出した接着剤が付いたところ。濡れ雑巾で拭くわけだが拭き取りが甘く毎度最終段階で影響が出てしまう。15分位放置したら拭き取ってまた塗る。この時ウエットサンディングを行う。ゴム手袋は必需品です。
3回塗って1日乾かしてできました。
小さいゴム足つけてます。ときどき乾拭きして染み出したオイルを拭き取れとあります。『type 4』電源もヒーター用にセレンに変更して修理完了です(「type 4」の項参照)。
知人でこのフルセットを持たれているのだが音質に影響が出るという理由でキャビネットから外して「Model 6」も使っていないという方がいます。音質から考えればたしかに余計な接点や接続ケーブルを通すわけなので気持ちはわかります。今回初めてこのセットを使ってみて操作性の良さに感心しました。今までは寄せ集めてとりあえずステレオ対応に仕立てた、、というイメージだったのですが実際は高級感に溢れた使いやすいオーディオ機器でした。これなら当時高い出費をした人も満足したのではないでしょうか。
また「Audio consolette」と共に一段増幅を奢った「可変ラウドネス回路」ですがとても効果的に働きます。ラウドネス回路はその後廃れてしまいましたがひょっとするとこのアンプの一番の特徴かもしれない。ゴージャスな音に満足度も上がります。
お読みいただきありがとうございました。