(1964年10月号「Hi-Fi NEWS」に掲載されたDeccaの広告)
DeccaのカートリッジはステレオLP以降が有名(というかそれしかないと言って良い)です。英国Deccaはレコード会社でありSP時代の1930年代からMC型のカッティングヘッドを開発、改良し15KHzまで録音可能とし、ffrr(Full Frequency Range Recording)と名付けられました。第2次世界大戦後に初の録音が行なわれ、1950年にはマイクログルーブ(モノラルLP)に対応しましたが、当時の自社開発のプレイバック用のカートリッジは現在でも不明とのこと。コンシューマー用のカートリッジはモノラルデコラなどにもちいられた「Decola」というものがあってよくオークションでもみられますがバランスド・アーマチュア型でffrrのLPには役不足だったようです。
これは1958年10月4日にArthur Haddyが英国特許を申請した時の図面です。特徴的な構造ですがコイルはラテラルのみですのでモノラル用です。すでにステレオLPが登場している1958年という年代を考えるとDeccaはLPレコード用のカートリッジの開発が遅れたのかもしれません。(これは全くの私見です)Deccaのステレオレコードの開発は数々の変遷後に(V/L)方式に落ち着いていたのですが米国のウエストレックスが(45/45)を発表し世界標準となってしまい、Deccaも比較、協議で方式変更を余儀無くされました。しかし幸運なことに簡単なコイルの接続変更で対処できました。
Decca DecolaにはffssカートリッジのMKⅠステレオ・モノ・78回転SP用が付属していたようです。なおMKⅠカートリッジにはステレオLP(D)、モノLP(X)、SP(Y)、モノLP楕円(EX)がありました。
MKⅡカートリッジ(M)はLコイルの巻数を少し減らしさらにLコイルに0,0022μFと5.1KΩ程度のコンデンサと抵抗を並列接続して出力バランスと音色の補正が行なわれていてステレオのみ。このモデルがDeccaのスタンダードとなっています。
MKⅢカートリッジ(ED)は1964年10月に登場しアーマチュア、振動系の軽減されハイコンプライアンス化されたもので楕円針で針圧は一気に2g。
MKⅢまでの針圧はMK1SPが5g MKⅢとMKⅠモノ(楕円針)が2g その他が3.5gとなります。
このカタログ(1964年10月)の時点で「MK1はまだ作っている」「MK1はMKⅡに改造できる」などと書かれていて興味深いです。
(以上手持ちの資料から)
MKⅢ MKⅠ(ステレオ) MKⅡ MK1(78)
MK1(78)です。
このマニュアルはMKⅢのものですがMKⅣまでは4端子でlatelal(モノ)出力もあります。(Ⅳからは持ってませんが、、)
MK1のVコイルは1300ΩX2 Lコイルは1460Ω
MKⅡのVコイルは1350ΩX2 Lコイルは1220Ω(実測値、出典:海老沢 徹氏、管球王国Vol.26)であまり変わりません。MK1モノはステレオ用と比べて針先の曲率半径の違い(1.0milと0,6mil)の違いだけなのか(Vコイルはあるのか?)接続は左右に振り分けているのか、、)どうなっているのでしょう??
それにしても「鉄製のターンテーブルでは使えません」ってしっかり書いてるんですね。