米大統領選の中心的争点は対中政策であるべき 元トランプ政権高官「トランプ政権は中国の黒字減らしで本丸に切り込んだ」(前編)
2023.08.07(liverty web)
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《本記事のポイント》
- 民主党の目くらまし戦略には要注意
- トランプ政権は中国の黒字減らしで本丸に切り込んだ
- 統計に表れない巨額の政府支出:アメリカからの富の移転で中国経済は成長した
アメリカは、ドナルド・トランプ前大統領の3度目の起訴の話題で持ち切りである。
だがこれは国民の目を重要な争点から逸らすための、民主党陣営の作戦だという意見が出始めている。
米フォックス・ニュース・ビジネスの司会でトランプ政権の国家経済会議(NEC)の委員長を務めたラリー・カドロー氏は、一連の起訴と今後の大統領選までのスケジュールを示して、民主党が仕掛けてきている戦略を指摘(以下のタイムスケジュールを参照)。
(Fox News Businessより)
民主党の目くらまし戦略には要注意
これに対してコラムニストのジョー・コンチャ氏は、「経済、外交、国境、教育の全ての点でトランプ大統領の成果は勝っている」「民主党は、2024年の大統領選までこの話題で持ち切りにさせて、ジョー・バイデン大統領の冴えない業績から国民の目を逸らす『目くらまし戦略』に出ているのだ」と指摘した。
要するに、バイデン氏の成果が芳しくなくとも「トランプ劇場」で騒げば切り抜けられると踏んでいるのだ。
何とも国民を小ばかにした民主党の戦略である。だが「トランプ劇場」に国民の目をくぎ付けにさせて、本質的な争点に注目が集まらないのは、米民主主義にとって致命的である。
トランプ政権は中国の黒字減らしで本丸に切り込んだ
成果について言えば、コンチャ氏が述べているように、トランプ政権(2017年1月から2021年1月)の対中政策には目を見張るものがあった。
とりわけ対中貿易赤字の削減に取り組んだトランプ政権の成果は、もっと注目されてしかるべきだ。中国の対米貿易黒字減らしは、同国の対外的拡張政策の資金源だった。それを減らして兵糧攻めにする作戦を実行したのだから、トランプ氏は国際平和の実現のための、本丸に切り込んだと言える。
トランプ政権は、2017年に3750億ドルに上ったアメリカの対中貿易赤字を2000億ドルまで削減せよと迫った。その成果が出て2017年以降、中国の経常収支は縮小し、2018年に中国の貿易黒字は241億ドルまで減少した。
しかし新型コロナ後、中国の対米輸出は急増。アメリカから中国への輸出は1538億ドル、中国からの輸入は5368億ドルで、対中貿易赤字も過去最大の3830億ドルと、元の木阿弥となってしまったのだ。
しかも、対中配慮を続けるバイデン政権下で今年2月に発表された米通商代表部(USTR)の報告書では、「中国原産の輸入品に課している追加関税は維持するものの、米中間に壁を築くつもりはない」として、関税の引き上げには消極的な姿勢を示している。
国内経済の成長に占める重要な指標である、国民消費に関し中国は、GDPのたった38%と、他の先進国の平均よりも30%も低い。それゆえ中国経済は、経常黒字と対中投資で流入する外貨がなければ経済は回らないのである。外貨の流入を止めるには、中国の対米貿易黒字を減らすのが上策だが、それがいかに効果的な作戦であったのかが見えないのがバイデン政権なのである。
こうした状況を歯がゆく見ているのが、トランプ前政権でUSTRの代表を務めたロバート・ハイザー氏である。同氏は、ピーター・ナヴァロ元米大統領補佐官、ウィルバー・ロス元米商務長官などとともに、通商政策面でトランプ氏を支えてきた。エポック・タイムズのインタビューにハイザー氏が応えているので紹介したい。
統計に表れない巨額の政府支出:アメリカからの富の移転で中国経済は成長した
統計上、2022年の対中貿易赤字は3800億ドルとされる。だが一日あたり800ドルまで個人輸入は統計にカウントされていない。「繁栄するアメリカのための連合(Coalition for a Prosperous America)」によると、関税を通らない輸入が一日当たり約200万件あるため、貿易赤字は約1800億ドル追加され、実際の対中貿易赤字額は、3800億ドルではなく、5600億ドルを超えることになる。
これに何千億ドル相当もの技術移転・窃盗を加えれば、中国の経済成長の大部分は、アメリカからの「富の移転」によるものとなる。貿易赤字の影響は、単年度ではなく「累積的」に考えられるべきで、実際は孫子の代までの富を移転することに匹敵し、これは「愚かな政策です」と付け加えた。
(後編に続く)
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