月曜日に前編を見て、一日空けて水曜日に後編を見てきました。
前編の最後に「64」の模倣誘拐事件が起きて・・・・・・
そして事件は一気に解決して行きます。
この映画のラストは原作とは違うらしいですね。どんな風に違うのだろうかと、私は思わず検索してしまいました。
そして私は思いました。映画のラストはこのラストで良かったなと。
それでもサスペンス的には相当力ずくでねじ伏せられたような気がしました。
だけど私はちょっぴり泣きました。
あのシーンとあのシーンで。
ところで私、未解決の誘拐事件と聞いて、ある事件の事を連想していました。これだけの薄い記事を書く時も、結構ネット検索しています。やはりこの事件は、1987年に群馬で起きた事件がモデルになっているらしいです。
その時私は20代で子供もいない頃。ニュースを見ていて腸が煮えくり返り、思わず犯人に呪詛の言葉を呟きました。だから2002年に時効を迎えた時もはっきりと覚えていて、この事件を忘れないと心に決めたのです。
時効が来れば、みんな事件の事は忘れていくのだと犯人は思っていたのかも知れませんが、別に関係者でなくても忘れない人たちはたくさんいるのですよね。それを犯人に伝えてやりたい!!!
興味のある方は「功明ちゃん誘拐事件」で検索してみてください。
たった今、私も検索して驚きました。本当に大勢の人がその事件の事を忘れていませんでした。
もう野垂れ死にしてるかもしれませんが、
「忘れてないからな !! みんなお前の事を見ているぞ !」って一応言っておきます。
「64」の本がたくさん読まれてまた映画もヒットして、時効になってしまった事件ですが多くの人にこの事件を思い出させ風化させたくないと言う気持ちが作者の中に有ったのかも知れません。マスコミ相手に三上が思ったように。
たった7日しかなかった昭和64年。この7日間の間に生まれた子供は私の子供と同級生。もう一人の子供は幼稚園に上がる前でした。天皇崩御の時にテレビはすべての番組を中止し、昭和史一色になりました。
近所のやはり幼い子供が、べそをかきながら、
「この偉い人が死んじゃったから、楽しみにしているアニメがお休みなの。」と言いました。
レンタルビデオ店は大流行で棚がスカスカになりました。
仕方がないと言えば仕方がない事だと思うけれど、マスコミはいつも極端なような気がしました。あの時、犯罪者たちも喪に服してなりを潜めているのかしらなどと皮肉な事を思ったりもしたのです。いつかこの7日間を題材にして小説を書く人も居るかなと私は思いました。
まさに「64」はその時代の物語。
そんな昭和最後の7日間に取り残されてしまった男たちは今・・・・・。
<以下はネタバレ感想です。>
「64」の事件の時に、大ポカをして犯人の声を録音しそこなってしまった日吉。自分のせいだと14年間引きこもりになってしまいました。事件が解決してやっと彼の中で昭和が終わり、部屋から出てきたシーン。それをじっと我慢し続けた母親。
思わず涙が出ました。
その時の音声が残されなかったために、犯人の声を知っていたのは被害者の父の雨宮だけ。
彼は14年間来る日も来る日も近所の公衆電話からその声を探して電話をかけ続けます。
犯人の声に行きつくまで。
― 分かるかなあ、これ。
声は本当は厳しいよ・・・・-。
と言う事はさておいて、公衆電話の数字は押され続けられたことで数字が消えていました。
気が遠くなるような毎日の無言電話。
この無言電話が、三上の家のドラマにも繋がっていたと言うのも不自然でありながら、なんだか「そうだったのか。」と納得してしまいました。
時々映される公衆電話の横のベンチに座って、遠くの風景を眺める雨宮。
何度も言ってしまいますが、この映画は本当にひとりひとりが素晴らしくて演技合戦だと思うのですよね。
雨宮の悲しみがひしひしと伝わってきました。
三上が警視総監の視察の事で説得に来た時に、仏壇の上には幸田の名前のある仏前の袋が置いてありました。三上はそれに気が付いても、先に彼が来たことには触れませんでした。
あの時に、二人の共犯の打ち合わせが出来たのですね。だから雨宮はすっきりと髪を切っていたのです。覚悟の証だったのかも知れません。
模倣誘拐事件の被害者、目崎の鬼のような形相の演技も素晴らしかったです。
彼は男だけれど、鬼子母神みたい。
人の子供は殺せても、自分の子供が誘拐されたと思うと、命がけで助けに行くのです。
だけどもちろん彼はこの先に仏の守護神になる事はなく地獄に落ちていくばかりだと思います。
2000万円を燃やせと言われても、我が子のためには躊躇わず、だけどその2000万円の為に人の子供は殺す。
如何に人の子の父と言えども許せることではないと思います。
原作では逮捕まではいかないそうです。
そこが違いらしいー。
みなそれぞれの終わり方があって、三上も自分の娘との問題に真っ向から向き合おうとします。
そして何やら明るい兆しが・・・・。
このミステリー映画が好きかと問われれば、好みの問題で「好き」とは即答しかねますが、このヒューマンドラマを堪能したかと問われれば、私は「はい」と言うと思います。