観るも八卦のバトルロイヤル

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「壬生義士伝~新選組でいちばん強かった男~」。悲しくも切ない新撰組物語

2010年06月10日 | 映画・ドラマ
 中井貴一主演の映画は何回もいや、何十回も観た。一時は、長年自分の中でのNo.1の地位をキープしていた「卒業旅行 ニッポンからきました」を押しやって堂々の邦画一位に輝いたほどだ。長く観るにはやはりコメディってことで、後に順位は入れ替わるが、常に上位にはつけている。飽くまでも私感。
 さて、その「壬生義士伝」のテレビドラマもあると知ったのは、放送から6年も経ってからのことだが、「観たい、観たい、観たい」でこの度ようやく視聴できた。
 まずは冒頭の入り方に驚かされた。これは映画版では終盤のクライマックス・シーン。「ここからきたか」というのが感想。インパクトはかなりのものだ。
 だが、どうにも中井貴一のイメージが自分の中で定着しているものだから、渡辺謙の吉村貫一郎が偽物チックというか、不自然で、共鳴出来ない。「現代っぽいしなー」と。
 だが、話しが遡り、盛岡藩脱藩までの流れと新撰組に入るまでにシーンが変わると、渡辺謙の吉村貫一郎を自然に受け入れられるようになっていた。
 思うに、中井貴一の見せ場でもあった死に行くシーンからだったので、中井とダブらせて新たな吉村像が自分の中で解釈出来なかったのだろう。
 序盤からなら自然に入り込めた。
 これは自分が映画から観たからで、実はテレビドラマは2002年、映画は2003年作品だった。
 5時間半という長丁場だけあり、映画よりも丁寧に話しを描けているのも特徴的。そうか、この人はこうなったのか…と知る事が出来た。
 新撰組時代の話しも池田屋襲撃など、どの映像よりも史実に忠実だったように思え、新撰組を知る上で、これはいやと中盤まではのめり込む。
 今回の新撰組は、近藤勇(柄本明)が横暴で、土方歳三(伊原剛志)が話しの分かる副長といった役割り。NHK大河ドラマで、近藤が行った陰の部分をほとんど土方に押し付けて、局長は「いい人」に仕立てていたので、これまた新鮮だった。この監督もしくは、脚本家がかなりの土方贔屓と見た。
 しかし、ほとんどのドラマ・映画での谷三十郎の扱いはお気の毒としか言いようが無く、子孫の方々に同情いたします。
 さて、配役は、貫一郎の青年期(渡辺大/渡辺謙の実の息子)、妻・しづ(高島礼子/少女期・安倍なつみ)、長男・嘉一郎(高杉瑞穂)、斎藤一(竹中直人)、大野次郎右衛門(内藤剛志)、佐助(村田雄浩/映画では大野千秋役)、沖田総司(金子賢)、伊東甲子太郎(萩原流行)、永倉新八(遠藤憲一)、原田左之助(大鶴義丹)、坂本龍馬(筧利夫)、中島三郎助(夏八木勲)、八木源之丞(津川雅彦)など、渋いところが顔を揃えている。
 「あれっ?」てな配役もあるにはあるが、遠藤憲一と内藤剛志はかなりいい。
 そして、吉村貫一郎本人に話しを進めるが、この人、切腹しても死に切れず、明け方まで何時間も苦しんで、あちこち斬りつけたり、目まで刺したりして、部屋中のたうち回り、明け方ようやく事切れたそうだ。
 そのリアルな様子も如実に現れていた(そのシーンはありませんが)。
 そして映画では取り上げていなかったが、残り時間は、貫一郎の息子の嘉一郎が主役となり函館での戦に参戦。
 こんなに悲しくも切ない新撰組はほかにないだろう。
 5時間半、中だるみも無く見応えあり。
 一言で言うなら、「観て良かった」。これに尽きる。