【岡山・岡山市】戦国時代の永禄五年(1562)、日蓮宗を信奉する金川城主・松田元成による焼き討ちに遭って古代の社殿を焼失した。 その後、慶長二年(1597)に宇喜多秀家、慶長六年(1601)に小早川秀秋が再建に着手して同九年(1604)に51宇を復元した。
慶長八年(1603)、姫路藩主池田輝政の次男忠継が岡山の地に入封し、江戸期の大名・池田家の治世が始まり、吉備津彦神社に対する崇敬厚く、延宝五年(1677)に300石の社領を寄進した。 岡山藩初代藩主(池田家宗家3代)池田光政は、神社に佛教的建築があるのを嫌って51宇及び御釜殿を廃除し、現在の地に昔の熱田神宮様式の社殿の建築に着手。 長男の2代藩主綱政の治世の元禄十年(1697)、本殿、渡殿、釣殿、祭文殿、拝殿と連なった社殿が完成した。
石段を上ると、吉備の山中を背にして荘厳な空気が漂う静謐な社殿境内が広がる。 石段上の両側に、軒先に釣燈籠がずらりと吊り下げられた廻廊が建ち、参拝者のお休み処になっている。 廻廊前には樹齢千年以上とされるご神木で、「平安杉」と呼ばれる枝ぶりが寂しい老杉が聳え立つ。
正面に、広い向拝の拝殿が基壇上に建ち、雨が当たらない向拝の軒下に備前焼とみられる狛犬が鎮座。 拝殿後方に連なって祭文殿と渡殿、そして本殿が中山を背にして建ち並んでいる。 拝殿と祭文殿と渡殿は昭和十一年(1936)の再建だが、いずれも古社を感じさせる造りで趣がある。
周囲に透塀を設けた一段高くなった境内に渡殿と本殿が鎮座。 本殿は、正面に檜皮葺の平唐門を設けた透塀に護られている。 約320年前の元禄時代に建てられた檜皮葺の本殿は「三間社流造り」で、荘厳で品格ある趣なのだが、手前の透塀からの拝観のみで、近づいての細部意匠が見られず残念。
△随身門境内から眺めた上段の境内に建つ拝殿と左右の廻廊....石段下の石燈籠は元禄十年(1697)の造立....上段境内に聳え立つご神木の「平安杉」は樹齢千年以上とされる
△石段下から見上げた拝殿....向拝に紙垂としめのこをつけた長い注連縄が張られている
△石燈籠が並ぶ乱積の石垣の上に建つ廻廊(石段の左)....切妻造銅板葺で前面に連子窓が並ぶ....廻廊は参拝者のお休み処になっている
△石段上右側の短い玉垣....廻廊の連子窓前にずらりと吊り下がる釣燈籠/右側の石垣下に佇む石造物....古い石塔のようだが
△切妻造銅板葺の廻廊(石段上の右手)....大棟に鳥衾を乗せた鬼板、拝は猪目懸魚、境内側にも釣燈籠が下がる
△入母屋造銅板葺の拝殿....昭和十一年(1936)の再建、壇上積風の基壇に建ち正面は七間
△向拝屋根の下に鎮座する狛犬....備前焼と思うが、随身門前の表面が滑らかな姿の狛犬とは異なる?
△身舎柱は円柱なのに対し向拝柱は面取方柱
△中央間三間の扉は飾金具を配した両折両開の板扉....「一品一宮 吉備津宮」の大きな扁額がある
△拝殿を通して眺めた祭文殿....社頭に3本の御幣(紙垂は金箔?)が立てられている
△軒廻りは二軒繁垂木、組物は平三斗で中備は中央間三間のみに脚間に彫刻を施した本蟇股
△側面は変則の五間で、中央間に飾金具を施した板扉、両脇間は格子窓と幅の狭い小脇羽目板....基壇上に組高欄付き廻縁を設けている
△拝殿側面の扉から眺めた祭典や御祈祷を斉行する祭文殿
△拝殿後方に連なる祭文殿、その後方に渡殿と本殿が鎮座....祭文殿は亀腹上の石板台座上に建ち、台座周囲に組高欄を設けている
△切妻造銅板葺の祭文殿....昭和十一年(1936)の再建、本殿を向いた流造で軒廻りは二軒繁垂木、組物は不明....拝殿側は七間(と思う)で中央に板扉、両脇間三間には二間の連子窓と小脇羽目板
△側面五間は小脇羽板三間、飾金具を施した両折両開の腰高格子戸そして連子窓....格子戸と小脇羽目板二間に庇を設けている....大棟に鳥衾を乗せ「十六菊」の紋を入れた鬼板、拝は猪目懸魚、妻飾は豕扠首....
△透塀で囲まれた一段高い境内に建つ渡殿と本殿....手前の石燈籠は元禄十一年((1696)の造立
△入母屋造銅板葺の渡殿....昭和十一年(1936)の再建、正面五間・側面三間で周囲に組高欄付き切目縁があるが本殿側が少し高くなっている....大棟に鳥衾を乗せ「十六菊」の紋を入れた鬼板、拝は猪目懸魚、妻飾は豕扠首
△正面中央間は飾金具を施した板扉、脇間二軒は飾金具を施した蔀戸....側面は飾金具を施した板扉、飾金具を施した蔀戸そして横羽目板
△軒廻りは二軒繁垂木、組物は出組で中備は蓑束....蛇腹支輪が設けられている
△流造檜皮葺の本殿....「三間社流造り」で、元禄十年(1697)に岡山藩主・池田綱政による再建(造営着手は寛文八年(1668)に父池田光政)
△正面に檜皮葺の平唐門を挟んだ透塀に囲まれて鎮座する本殿....大棟に外削ぎの千木と2本の堅魚木が乗る
△軒廻りは二軒繁垂木、軒支輪がある....大棟・鬼板・懸魚などに「十六菊」の紋章....胡粉を施した組物の種類や中備は不明....手前に笠が異常に小さく寸胴型の珍しい石燈籠が立つ
△背後の吉備の中山に向かって拝殿、祭文殿、渡殿、神門(平唐門)を介して本殿が建ち並ぶ
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