
【愛知・豊川市】三重塔は戦国時代の享禄四年(1531)の再建で、第一層と第二層を和様、第三層を禅宗様(唐様)とした特徴の造りで、国の重要文化財に指定されている。 再建前の旧三重塔の建立時期は不詳のようだが、無文元還が再興した応永年間と推測される。
本堂内には、天文二十三年(1554)再建の一間社流造の宮殿(厨子)があり、その中にご本尊の弁財天が安置されている。 弁財天が安置されたのは平安時代で、三河の国司・大江定基が愛人力寿姫の死を悼んで弁財天御像を刻み納めたことによる。
三明寺は豊川弁財天の通称で親しまれ、三河七福神の霊場の一つとされ、安産・芸道・福徳・海運の守護神となっている。
◆石造りの平太鼓桁橋を渡って本堂に....本堂前の参道に簡素な礼拝所が設けられていて珍しい。 本堂は江戸中期建立の建物だが、正面と側面の外陣部二間がガラス入り格子戸になっていて、やや趣に欠ける佇まいだ。
向拝に「辨才天」と書された切株を平らに削ったような奇形の扁額が掲げられている。 梁裄五間の前二間が「豊川辨財尊天」の赤い提灯が下がる外陣になっていて、内陣とは格子で仕切られている。 外陣の右隅に賓頭盧尊者坐像が鎮座し、奈良法起寺の三重塔を模した小型三重塔がある。
本堂の右脇を進むと奥に江戸期に建てられた医薬門があり、門をくぐると庭が広がり、オレンジ色の屋根の小棟造りの庫裡が建つ。 庫裡境内に釣鐘形仏龕のようなものがあり、頂部と龕の中に多くの水子地藏尊像が鎮座している。
本堂前に戻って三徳稲荷に....。 丹塗の明神鳥居を構えた三徳稲荷は三間四方の建物で、正面の小脇羽目板の脇間に興味を引かれた。 両側の羽目板上部に格狭間を設け、その中に社紋とみられる三つの焔宝珠が配されている。
境内図がないのでネットの地図で調べたら、本堂が豊川弁財天、庫裡が三明寺と記されている。 また、何故か、本堂右後方に建つ庫裡の前に山門があり、更に袖塀前に立っている高札形案内板の最初に太字で「本堂(江戸時代)」と揮毫されているので、あたかも庫裡が本堂のように見えて少々混乱した。 正面の参道入り口に大きな石造り鳥居があることから、ネットの地図のように本堂は元は豊川辨財天の本殿だったのでは?

△石造りの太鼓橋(反り橋)と平太鼓桁橋越しに眺めた本堂

△寄棟造本瓦葺の本堂....正徳二年(1712)の再建で、本堂内に天文二十三年(1554)建立の宮殿があり弁財天像を祀っている

△本堂は桁行五間、梁裄五間....正面は全面にガラスを入れた格子戸


△本堂前にある切妻造銅板葺の礼拝所 本堂向拝に掲げられた珍しい造りの扁額

△「辨才天」と書されている扁額は、切株を平らに削って作られているようだ....奥に「豊川辨財尊天」の赤い提灯が下がる外陣と内陣があり、格子で仕切られている

△軒天井部には全面に波模様の彫刻が配されている....身舎柱の最上部に粽が施されている

△梁桁五間の前方二間が外陣で、内陣とは格子で仕切られている....外陣に鰐口が下がり、「妙音閣」の扁額がある(院号「妙音閣」から妙音閣と思う)....内陣の天井は格子天井で極彩色画が描かれている

△外陣の右隅に鎮座する賓頭盧尊者坐像と三重塔


△賓頭盧尊者像....十六羅漢の中の第一尊者で、神通力が強すぎて仏陀に叱られて南方で衆生済度につとめた/奈良法起寺の三重塔を模した小型塔

△.軒廻りは二軒繁垂木、組物は出組、中備は本蟇股

△正面と側面に切目縁を設け、側面奥に板張りの脇障子がある

△本堂後方に建つ山門と庫裏....山門は薬医門で江戸時代の建立

△切妻造桟瓦葺の山門....通用口を設けた板張りの袖塀がある

△山門前から眺めた本堂と三重塔....本堂の梁裄五間の後三間は舞良戸

△山門の左に「龍雲山 妙音閣 三明禅寺」、右に「般若心経 写経道場」の聯が掲げられている

△山門から眺めた庫裡と前庭

△寄棟造鉄板葺の庫裏....古民家風の造りで、入り口側に桟瓦葺の庇がある


△庫裡前庭の釣鐘形仏龕のような上に鎮座する円光を背負う水子地藏菩薩像....波トタン板の庇でよく見えないが地蔵尊像の足元に七福神らしき像が鎮座/仏龕の中の雛壇に幾体もの水子地蔵尊像が鎮座している....厨子の中の地蔵尊像とお前立ちとが重なっている

△庫裡境内の右手に建つ宝形造桟瓦葺の御堂は観音堂か?....中央間の両小脇羽目に卍紋が配されている

△本堂に向かって左手に丹塗の明神鳥居を構えて鎮座する三徳稲荷

△基壇上の瑞垣に囲まれて鎮座する三徳稲荷....西島稲荷(同市西島町)の分祀で、参拝すると3つの願いが成就する

△中央間は格子戸、脇間は小壁羽目板....羽目板上部に格狭間を施し中に神紋を配している


△社殿右前に鎮座する数匹の神使狐像/正式な神紋名は分からずだが、意匠から「三つ焔宝珠」と呼んでいいかも?

△流造銅板葺の三徳稲荷社殿....三間四方で白壁の造り

△三徳稲荷に向かって鎮座する石仏群
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