何気ない風景とひとり言

寺社&石仏巡り、小さな旅、散策...ふと目に留まった何気ない風景...切り取って大切な想い出に!

密蔵院-(1) (春日井)

2022年05月19日 | 寺社巡り-愛知

【愛知・春日井市】鎌倉時代末期の嘉暦三年(1328)、岐阜濃御嵩より訪れた天台の高僧・慈妙上人によって開創された。 院号は、慈妙上人に帰依していたが後伏見天皇(第93代)の病気を加持祈祷で治癒したことで密蔵院の院号を賜り、「密蔵院」と称した。
慈妙上人は、天台宗の密教と臨済宗の禅を学び、伝法灌頂道場として葉上流(禅密兼学の一派)の教えを広めた。 尾張地方の天台宗の本山として七堂伽藍を備えた密蔵院は、室町時代の永享十三年(1441)頃に最盛期を迎え、末寺は尾張・美濃を中心に11カ国に末寺700余り、塔頭36坊を擁した。 葉上流の伝法灌頂の道場として重きをなし、修行して位を受けた僧は3000人を超えた。 宗旨は天台宗で、本尊は薬師如来立像。中部四十九薬師霊場第30番札所。

●老朽が目立つ門柱を板柵で保護している高麗門式の総門の前に、近年の造立とみられる寺号標石が立つ。 総門をくぐると、木立の間の奥に建つ柿葺の多宝塔が目に入る。
芝生の境内に敷かれた切石敷のジグザクの参道を少し進むと、左手に四方を倒壊防止の金属棒で支えられた小棟造りの観音堂が建つ。 三間四方の観音堂は、縁を設けず正面一間を吹き放しとしている。
観音堂から少し離れた右手に古色蒼然たる多宝塔が建つ。 室町初期建立の多宝塔は、約680年経ったいまも往時の興隆を偲ばせる佇まいだ。 多宝塔は柿葺屋根の軒反りの線が美しく、縦板を張った亀腹や各部に禅宗様を取り入れていて趣と風格がある。 優美な多宝塔の姿に、しばし時を忘れて眺め入った。

△切妻造桟瓦葺の総門....門前に立つ「天台宗医王山薬獅子密蔵院」と彫られた寺号標石

△総門は本柱と控え柱の間に切妻屋根を設けた高麗門....両側の老朽が目立つ門柱は板柵で保護されている

△総門から眺めた境内....左は観音堂、奥は多宝塔で、右奥に本堂と庫裡がある

△観音堂の左脇に鎮座する数体の舟光背型石仏や庚申塔....倒壊防止の金属製の支え棒で観音堂を支えている

△寄棟造桟瓦葺で三間四方の観音堂

△正面一間を板床の吹き放しにて縁としている/正面中央間は格子窓で、両脇間は板扉の引き戸

△軒廻りは一軒疎垂木、柱上の舟肘木で丸桁を支えている

△伽藍に建つ古色蒼然たる佇まいの多宝塔は、往時の興隆を偲ばせている

△杮葺の多宝塔(重文)....建築様式から室町時代初期の建立とされる

△高さ18.6mの多宝塔は、内部に四天柱を立てて、中央に仏壇を設けている/柱は端を僅かに細め、肩を丸くした粽付円柱....各部に禅宗様意匠を取り入れている

△裳腰と円形塔身の連続部の亀腹は縦板を張った木造....裳腰周囲に親柱に逆蓮頭を乗せた高欄

△軒廻りは上下の屋根いずれも二軒繁垂木

△塔身の組物は台輪上に三手目と四手目が尾垂木の四手先....東西南北の四面に桟唐戸を吊る、回縁は親柱に逆蓮頭を乗せた高欄、腰組は平三斗

△裳腰の中央間は藁座で吊っている桟唐戸、両脇間は窓がなく羽目板....台輪上の組物の間に中備なし

△開山供養塔の宝篋印塔越しに眺めた多宝塔....笠の隅飾突起が反り返りひらいている(江戸期造立?)、塔身四方の蓮華座上月輪に梵字が彫られている

●参道を挟んで元三大師堂が対面で建ち、その左の覆屋に「灌頂の井」がある。 三間四方の元三大師堂は、正面の中央間と脇間は全て格子窓で腰部は縦羽目板。
周囲をコンクリートで固められた「灌頂の井」の水口は竹で造られているが、その根元部の横に塩ビのような配管がみえるので他から清水を引いているのかも。
切石敷の参道を少し本堂方向に進むと左手に「天台真盛宗宗祖真盛上人御修学之地」と彫られたの標石が立ち、少し奥まった所に三間四方の開山堂が建つ。 開山堂は観音堂と同じような造りで、倒壊防止のため各部に木枠を嵌めて補強し、四隅の柱に木製の支え棒を添えて支えている。

△寄棟造桟瓦葺の元三大師堂....三間四方の真壁造り

△軒廻りあ一間疎垂木で、組物はなく柱で直接丸桁を支えている....頭貫の上は全て羽目板の小壁/.正面三間は全て格子窓で、腰部は縦羽目板

△元三大師堂の周囲に切目縁....「元三大師」の扁額,左側に「灌頂の井」

△切妻造板葺の覆屋の中に「灌頂の井」(市指定文化財)

△葉上流「灌頂の井」....周囲をコンクリートで固めた井戸の水口は竹だが、根元部の横に塩ビのような配管がみえるので、他から清水を引いている(と思う)

△「天台真盛宗宗祖真盛上人御修学之地」の標石の奥に建つ開山堂

△頂部に露盤宝珠を乗せた宝形造桟瓦葺の開山堂

△三間四方の開山堂塔....正面は全面格子、左側面は縦羽目板....倒壊防止の木枠補強や支え棒を設けている

△軒廻りは一間疎垂木....丸桁を柱上の舟肘木で支えている/宝永三年(1706)造立の傾いた石燈籠

△右側面は前一間が格子、二間は縦羽目板....正面一間は観音堂と同じ吹き放し(と思う)



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