【東京・台東区】旧岩崎邸の敷地は、江戸時代には越後高田藩榊原家(現在の新潟県上越市高田)の中屋敷だった所で、明治十一年(1878)に三菱財閥の創業者・岩崎彌太郎(元土佐藩の下級武士)が牧野弼成(旧舞鶴藩主)から邸地として購入した。
旧岩崎邸は、岩崎彌太郎の長男で三菱3代目総師の岩崎久彌が岩崎家の茅町本邸として建てられ、明治二十九年(1896)に竣工した。 往時は約1万5000坪の広大な敷地に20棟の建物が並んでいたが、現在は3分の1となった敷地内に洋館・和館・撞球室の3棟が現存している。
旧岩崎邸庭園の土地及び建物は国(文部科学省)の所有だが、東京都が管理している。
●東京メトロ千代田線の湯島駅から歩いて数分で旧岩崎邸庭園の正門に着く。 馬車道に沿って丸みのある石を3メートル程積み上げた乱積の石垣が続き、その上のこんもりした高台に深緑の木々が生い茂る。 木立の中に延びる砂利敷の馬車道を進むが、都内とは思えない閑静な佇まいだ。
馬車道が左に緩やかにカーブした奥に銀杏の巨木を背にした券売所が見えてくる。 券売所の前に洋館の東脇から延びている重厚な煉瓦造りの袖塀があり、威厳を感じさせる。 馬車回しがあり北面で建つ旧岩崎邸は、豪壮な構えの美しい西洋木造建築だ。 優美端厳な洋館を眺めているとなんだか異国にいるような気分になる。
△正門に設けられた「旧岩崎邸公園」の標識と掲示板
△緑に覆われた正門から洋館の正面玄関まで続く馬車道....左脇に乱積みの石垣が続く
△馬車道の奥の袖塀の近くにある券売所....後方に推定樹齢400年と、幹周り約7.4メートル、樹高約30メートルの銀杏の古木が聳え立つ
△洋館の東脇から北に向かって延びている袖塀
△威厳を感じさせる重厚な煉瓦造りの袖塀(重文)....岩崎家の家紋「三階菱)」が彫られている
△券売所前から眺めた馬車回しと旧岩崎邸洋館の正面(北側)
△旧岩崎邸洋館(重文)....明治二十九年(1896)に竣工し、岩崎家の迎賓館として使われた
△木造2階建てで屋根はスレート葺....外壁は横に長い板材を階段状に重ね、押縁で固定した下見板張
△正面玄関部に聳える平面四角形の塔屋(尖塔)/△正面玄関の上に張り出たバルコニー
△バルコニー下の玄関前から見上げた塔屋
●暫くの間洋館の全貌を眺めた後、聳える塔屋の下の正面玄関から館内へ入る。 玄関を入った直ぐのホールはアーチ形の廊下になっていて、その優美さに思わず息をのむ。
1階の中央ホールに進む。 中央ホールは贅を尽くした造りで鹿鳴館時代を彷彿とさせ、案内板にあるように天井の意匠・床の木組・設えた暖炉など随所に手の込んだデザインが施されている。
中央ホールの周りには、南側にベランダに面した大食堂と客室、東側に婦人客室とサンルーム、北側に書斎と2階への大階段と地下道への階段がある。 まずはベランダに面した大食堂と客室に…大食堂の贅沢な造りの天井・壁・床・出入口・暖炉などを拝観していると、招かれた客たちが、列柱のベランダを通して美しい芝庭を眺めながら優雅に食事を楽しむ光景が浮かんできた。
△意外にシンプルな造りの正面玄関
△正面玄関を入った玄関ホール....案内板に「列柱はバンド装飾をまわしたジャコビアン様式」とある/奥の右手は和館への廊下
△1階の中央ホール....案内板に「天井の意匠,床の木組,暖炉のしつらへなど随所に手の込んだデザインが施されている」とある....南側に客室と大食堂、東側に婦人客室とサンルーム、北側に書斎と大階段がある
△大食堂への入口(左)と、壁に設けられた鏡を乗せた暖炉/暖炉のタイルは英国ミントン社製....炉口周囲のタイルに見事な装飾がある
△中央ホール側の出入り口から眺めた大食堂....正面の観音開きの扉の外は1階のベランダ
△来客の際の食堂として使われた大食堂....左は中央ホールへの、右は客室への出入り口
△大食堂のベランダ側に観音開きの3つの腰高扉、部屋の隅に衝立が置かれている
△大食堂の大理石の暖炉....気品のあり装飾性の高い鏡が設けている/花唐草の図柄を配した衝立
△大食堂前のベランダ....トスカナ式の列柱が立ち、床には多色象嵌のビクトリアン・タイルが一面に敷き詰められている
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