対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

双子の微笑2

2015-12-21 | 九鬼周造
前の「双子の微笑」は、ほぼ10年前(2006.01.29)に書いている。「双子の微笑」(sourires jumeaux)はヴァレリーの詩「曙Aurore」にある表現で、九鬼周造が『偶然性の問題』で紹介していたものである。心にひびいた表現で、自分の関心に引き寄せて使っている。「双子の微笑」は注目されている表現なのだろうか。検索してみたが、最初に出てきたのは以前に私が書いた記事だった。私の他に関心をもっているものはいないのである(ネットの上では)。

小浜善信はポール・ヴァレリーに注を付けていた。九鬼は「日本詩の押韻B」(1931年)の扉に詩の仏語原文を引用しているという。
(引用はじめ)
鈴木信太郎訳を付して引いておく。
Salut! encore endormies
À vos sourires jumeaux,
Similitudes amies
Qui brillez parmi les mots!
おはやう。双生児(ふたご)のやうに似た微笑(ほほえみ)を
浮べて なほまだ寝込んだままの、
女の友達、相似形よ、
単語の間で きらきらと燦(かがや)いてゐる。(『ヴァレリー詩集』)
ヴァレリーが言う「双子の微笑」、「親密な相似形」とは、単語の間で響き合う脚韻を意味している。引用された詩でも〈endormies〉と〈amies〉、〈jumeaux〉と〈mots〉とがそれぞれ韻を踏んでいる。(『偶然性の問題』注解)
(引用おわり)

双子の微笑

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