対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

中山正和のHBCモデル3

2024-04-25 | ノート
イメージ記憶〔I・S〕にコトバ記憶〔W・S〕がつながる。中山正和は「メージに直結しているコトバ」を「パロール」と呼んでいる。2つを結ぶたくさんの線はイメージとコトバの対応を表している。例えば、花のイメージに「ハナ」といコトバ言葉が対応する。しかし、一対一の対応ではない。花には、サクラもバラもある。またバラもさらに細分化される。コトバ記憶のコトバには「類としての同一性と個としての差異性」が保存されるように対応していく。

コトバ記憶がつながることによって、意味の伝達が可能になる。
(引用はじめ)
コトバ記憶〔W・S〕をつけ加えることによって、人間は自分のもっているイメージを他人に伝えることができ、他人のコトバによってその人のもっているイメージを想像することができる。コミュニケーションの成立である。
(引用おわり)
イメージ記憶とコトバ記憶の特徴は、いつの記憶でも任意に取り出すことができることである。事柄の順序に拘束されない。記憶は空間配置性を特徴としている。

記憶が蓄積されてくると、それらの関連に注意が向けられるようになり、人間に独自性が現れてきた。これを中山は「自然システムに組み込まれたいのち(〔S→O〕)の工夫と考えている。
(引用はじめ)
人間(の子供)は〔W・S〕のパロールによって、〔I・S〕のイメージを出し入れしているうちに、何回か繰り返して起こる出来事からある「法則性」を見つける。目覚めたあと、ある時間がくると暗くなってねたくなるという体験(〔I・S〕上のイメージ)を繰り返すとき、目ざめたときは「アサ」といい、暗くなったときを「ヨル」というコトバ(パロール)で表わすなら、「朝のあと(ある時間がたつと)夜になる」という因果関係に気がつく。「こうすればこうなる」「ああだからこうだ」というのは、このような「時の流れ」という概念の上に立つ論理であって、これはつまり「帰納」という他ならない。
(引用おわり)
もともとのイメージ記憶〔I・S〕やコトバ記憶〔W・S〕にはなかった「時間」や「法則」や「論理」が出現してきたのである。これらは感覚(視覚や聴覚や触覚)では直接、とらえられないものであった。「時の流れ」の意識が基礎に置かれている。

中山正和はこれらのイメージに直結しない抽象的なコトバを「メタ・ラング」と呼んでいる。メタ・ラングはイメージ記憶I・Sと結ばれていないが、コトバ記憶W・Sに記録されると想定されている。
(引用はじめ)
メタ・ラングはコトバとしてやはり〔W・S〕の上に記録されるのであろうが、これは直接は〔I・S〕上のイメージには結ばれていない。図の細かい線につながってはいない。だから他人にこの概念を分からせるためには、いろいろのパロールを「探し」て、これを「組み合わせて」その人のイメージを描かせなくてはならないのである。これは一つの「言語検索」という作業である。パロールを探して、これを既知の法則によって組み立てることで、ここではじめて「論理」または「計算」ということができる。
(引用おわり)
こうして、最上位に(前頭葉)に、言語検索〔W・R〕が付け加わって、HBCモデルが完成する。

コトバ記憶〔W・S〕から言語検索〔W・R〕へ伸びている矢印↑は「いろいろな出来事からある法則性を見つける」という帰納法、反対に言語検索からコトバ記憶へと伸びる矢印↓は「ある法則によって現在の出来事を理解する」という演繹法である。これらは出来事の関連に注意することによって、必然的に身についた「法」であり、「自動的に起こる」ものとして想定されている。

新たに付け加わった言語検索〔W・R〕とコトバ記憶〔W・S〕との関連はもともと「問題への対処」として想定されていた図式であった。これが脳の構造と連結されたのである。

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