対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

正確にいえば429ではなかった

2021-11-29 | 楕円幻想
「平均的な長さを取る所で正割の代りに半径を用いると観測結果のとおりとなる」。ここがケプラーの跳躍だった。しかし、よく観察してみると、この跳躍には微妙な数値のずれがある。ケプラーは円から切り取る三日月の幅が離心円の半径の0.00429倍であることから出発したが、跳んだあとで振り返ってみると、三日月の幅は 0.00429よりは少し小さかっただろうからである(例えば0.00428)。

しかし、大切なのは、数値のずれより洞察である。「正割の代りに半径(直径距離)を用いると観測結果のとおりとなる」という関係が重要である。

これに対して、山本義隆の展開は三日月の幅が0.00429に固定されたままになっている。その結果、ケプラーの正割(セカント)は消えて、山本義隆の正割が出現している。
(引用はじめ)
さらなる新しい局面への突破口は、ここで火星-太陽間の距離が、先に述べた「直径距離」で与えられることに偶然気づいたことにある。そのことをケプラーは、離心アノーマリーが90度になり火星軌道が円からもっとも外れたときの三日月の幅(図のEF間の距離)が離心円の半径a=BF(BEの誤植 引用者注)の0.00429倍であること、そのとき∠BFAが5度18分で、そのセカント(余弦の逆数つまり1/cos5°18′)が1.00429であることからひらめいたと証言している。つまりFB=(1-0.00429)aにたいして
FA=FBsec(5°18′)=(1-0.00429) (1+0.00429)a≒a=EB


(引用おわり)

これに対して、ケプラーの正割はEA/EB=1.00429である。∠BEAが5度18分である。EFは正確にいえば0.00429ではなかったのである。