怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「ビブリア古書堂の事件手帳」三上 延

2018-07-21 08:04:35 | 
図書館で文庫本コーナーを何気なく見ていて、確か以前評判になっていた本かなと思いあまり期待せずに借りてみたのですが、面白かったですね。
ちょうど豪雨で旅行が中止になってしまい暇つぶしにと読み始めたら面白くてやめられずにすぐに2冊を読んでしまいました。

シリーズはまだまだ続いているので、本を返す時にもう2冊借りてきたのですが、それも今さっき読んでしまいました。
北鎌倉のあまりはやっていない「ビブリア古書堂」の若くて美しい店主栞子。普段は対人恐怖症みたいで人とまともに目を合わせて話すことができないほどなのですが、本の話題になるとスイッチが入って蘊蓄はすごい。大学卒業後ひょんなことから店員のバイトをしている幼い時のトラウマから本が読めない大輔を狂言回しに、本の知識を駆使して事件の謎を解いていく。
このタイプは一種の発達障害の診断名が付きそうです。まあ、このアンバランスが栞子をより魅力的にしているんですけど。
1話ごとにいろいろな本が取り上げられているのですが、「それから」「晩年」というように読んだことがある本もあるし、名前を知らない本もあるし、名前だけはしっていても読んだことはない本とか多彩な本が出てきます。
当然本の中に謎解きのヒントがあるのであらすじも紹介されるのですが、古書店の世界の話なので、ここで取り上げられる本の蘊蓄は初版本の装丁とか版を重ねることによる変遷とかの稀覯本の世界で、学生時代には結構古本屋めぐりをしたのですが、もっぱら安く本を買うためだけだったので、初版本がどうとかは全く知らない世界。
宮沢賢治は生前ほとんど評価を受けることなく出版した本も自家出版の2冊だけ。原稿は何回も推敲を重ね、出版後も手直ししようとしたものもあり、例えば「銀河鉄道の夜」でも何種類もの草稿があってどれが決定版かも論争があったというのはおぼろげに知っていたのですが、「春と修羅」にも賢治が推敲を重ねたという蘊蓄があるんです。
太宰治の「晩年」も自費出版されたものですが、初版本は美本だと何百万もの高値が付くのですが、そこに太宰の自筆の書き込みがあればこれはもう世界に1冊のものでマニアならいくらお金を出しても欲しい。栞子がそれを秘かに持っていることで事件に巻き込まれてしまうのですが、その書き込みが結構魅力的。「自信モテ生キヨ 生キトシ生クルモノ スベテ コレ 罪ノ子ナレバ」というのは、いかにも太宰が書きそうなのですが、ネットで調べてみたけど実際にはそんな書き込みの本はないみたいです。
ところで第4巻は、江戸川乱歩の本についての長編。そこに失踪した栞子の母、本に関する知識は栞子以上という智恵子が絡んできて、江戸川乱歩ファンなら堪能できるはず。でも私は乱歩はほとんど読んだことがなくて、明智小五郎とか少年探偵団とかはテレビで見たような記憶があるぐらいで、確か五中出身だと思うのですが食わず嫌いの類。そこに展開されている蘊蓄に感心するばかり。どちらかというとおどろおどろしい印象が強いのですが、まあ、一度読んで見ようかという気にはなりました。
ということで4巻まで読んだのですが、まだまだ続いているので読まなくては。
丁度図書館の棚にあったので第5巻を借りてきて読みだしています。
ところで今更ながら気が付いたのですが、これってテレビドラマになり映画にもなっているとか。それで何となく題名に記憶があったのか。


  
コメント
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