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Feynman が学んだ微分積分学の教科書。

2024-04-10 20:02:23 | mathematics
いやー,ホント,何でもネットで手に入ってしまう時代であることだなあ。

Feynman が自伝的著作 "Surely You're Joking, Mr. Feynman!" の `A Different Box of Tools'(岩波現代文庫版『ご冗談でしょう,ファインマンさん』だと上巻かな?)で,いわば数学者相手に「ファインマン爆撃」をかまし続けたというエピソードの後に,高校時代に Bader 先生から,この本の内容をすっかり理解出来たらまたおしゃべりしてもいいから,と手渡されたのが Woods の "Advanced Calculus" だったという,さらなる過去の回想が述べられている。

それは当時 MIT の教授だった Frederick S. Woods 氏の著書で,1926 年に初版が出たらしい。次いで 1934 年にいくつかの修正が加えられた New Edition が出た。

さて,ここで気になることが一つ。1918 年生まれの Feynman 氏は 1935 年に MIT に入学している。彼が学んだのは Woods の旧版と新版のどちらだったのであろうか?

そして他にも気になることがいくつかある。

Feynman 氏が MIT に在籍していた中で, 著者の Woods 氏と対面する機会はあったであろうか?

もしその夢の対面が実現していたら,Feynman 氏の自伝にそのエピソードが語られているはずである。何しろ彼はすっかりその本の虜になってしまっていたのだから!

残念なことに,ちょうど 1934 年に 70 歳を迎えたであろう Woods 教授は MIT を退職されていたようである。まさに Feynman 氏と入れ替わりであって,夢の対面は実現しなかったものと思われる。

もう一点。`A Different Box of Tools' の締めくくりは,Woods 本で学んだ積分記号下の微分(積分と微分の順序を入れ替える計算操作。俗に Feynman trick と呼ばれることがあるが,Leibniz の積分規則といい,微分積分法の黎明期にすでに編み出されていた古の計算技法である)のおかげで,MIT や Princeton の理系の秀才たちが,彼らが学校で習った標準的なやり方で求められずにウンウンうなっている積分の計算を,自分は積分記号下の微分でたいていうまく求めてしまったものさ,と締めくくっているのだが,出し抜かれた他の秀才たちがなぜその計算技法を知らなかったのか,という疑問である。Woods 本は当時の標準的なテキストではなかったのだろうか?

ちなみに,このエピソードが私にとっては印象的過ぎて,うまくいっているとは思えないが,2 変数関数の微分積分学を教える際に,積分記号下の微分法をほんのわずかでも紹介するよう,意識するように心がけている。

もっとも,このエピソードが語るところは,教師に教わったことなんかよりも,自ら進んで楽しみながら学び取った知識の方が断然役に立つんだもんね,といったことであろうから,私のなけなしの配慮など,何の役にも立っていないだろうという気しかしないのであるが。
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