数の計算には3つの階層がある。
足し算 3+4=7,
掛け算 3×4=12,
累乗 34=81.
掛け算は足し算を繰り返したもの,累乗は掛け算を繰り返したものと素朴に解釈すると,足し算より掛け算の方が,掛け算よりも累乗の方が,それぞれ計算の手間が多くかかる。初めに「階層」と書いたのは,この計算の手間の多さに関する階層のことである。
これらの階層を一段階ずつ下げる変換魔法がある。それは「対数」である。
掛け算の対数をとると,一段階下の足し算になり,累乗の対数をとると,やはり一段階下の掛け算になる。
そして,微分計算は積より和の方が相性が良いため,対数微分法と呼ばれる手法が威力を発揮する。
u と v を2つの関数としよう。u と v を掛けて得られる新しい関数を y とおく(y=uv)。
このとき,
log|y|=log|u|+log|v|
であるから,両辺を微分すると,それぞれに合成関数の微分公式を適用すれば
y ' /y=u ' /u+v ' /v
が得られる。この両辺に y=uv を掛ければ
(uv) ' =u ' v+uv '
となるが,これは積の微分公式に他ならない。
ちょうど,「積の対数は対数の和」であることから,積の微分公式に和が出てくることが了承される。
また,y=u/v であれば,
log|y|=log|u|-log|v|
なので,
y ' /y=u ' /u-v ' /v=(u ' v-uv ')/(uv)
であるが,両辺に y=u/v を掛ると
(u/v) ' =(u ' v-uv ' )/v2
となり,商の微分公式が得られる。
「商の対数は対数の差」であることが,商の微分公式の分子に差が出てくる理由であると理解できる。
このように,すでによく知っている(はずの)対数の計算規則と積や商の微分規則を結びつければ,積の微分や商の微分で和なのか差なのかで迷うことはなくなるだろう。
ちなみに,y=tan(x) のとき,tan(x)=sin(x)/cos(x) であるから,
log|tan(x)|=log|sin(x)|-log|cos(x)|
であり,両辺を微分すると
(tan(x)) ' /tan(x)=cos(x)/sin(x)+sin(x)/cos(x)
となり,log|sin(x)| の導関数が cot(x)(tan(x) の逆数)であり,-log|cos(x)| の導関数が tan(x) になることが発見される。こうして,敢えて tan(x) を対数微分してみることで,cot(x) と tan(x) の原始関数が log|sin(x)| と -log|cos(x)| であることを見出すことができた。すでによく知っていることでも,少し違った方向から光を当てると,思いがけない副産物に出くわすことがある。そうやって自分の持っている知識をいろいろ試して「遊ぶ」ことは,物事を深く理解することに役立つ。
問題集などの問題を解くだけでは不十分であり,自分で何か思いついたらその疑問を自力で追及するという,いわば自分で問題を考えるという段階までいかないと,習ったことの理解を深めることにはならないだろう。問題集の問題は,解いたり答を見たりしたらすぐに忘れてしまうが,自分で疑問に思ったことは,解決するか,あきらめるまでにずっと頭の中をぐるぐると回り続ける。そして,解決するために役立ちそうな知識を得るため,教科書やノートを調べる必要が生じる。つまり,自ずから勉強するはめになる。また,他人に解けと押し付けられた問題ではなく,自分が好きで考えていることなので,その問題に取り組むことはさほど苦ではない。自分で考えたいと思っていることをずっと考え続ける。そうすると,丸暗記しようとしてもなかなか身につかない公式などもだんだん覚えられるようになってくる。要は,その話題についてどれくらい考え続けたか。公式などをどれくらい長いこと頭の中を循環させたか。ある事柄を,他の事柄と関連付けられないかどうかを,どれくらい試してきたか。こういったことはそれほど特別なことではなく,その気になれば誰にでも出来ることだと思うのだが,どうだろうか。そして一旦そのようなモードになってしまえば,取り組んでいる科目をある程度まで極めるのは容易なことであろう。「好きこそ物の上手なれ」とはまさにそうした脳の特性をいうのだろう。
さて,もう一つ累乗の微分が残っている。これもやってみよう。
y=uv のとき,対数をとると log|y|=vlog|u| だから,微分すると,積の微分公式により
y ' /y=v ' log|u|+u ' v/u=(ulog|u| v ' +u ' v)/u
となる。両辺に y を掛けると
(uv) ' =(ulog|u| v ' +u ' v)uv-1
となる。これはあまりすっきりしていないので記憶すべきような公式ではないが,a を適当な定数とするとき,u=a,v=x(独立変数)とすれば (a) ' =0 なので
(ax) ' =(alog(a))ax-1=axlog(a)
という指数関数 ax の導関数が得られ,u=x,v=a とすれば
(xa) ' =axa-1
という,x のべき(累乗)xa の導関数が得られる。
こうして,対数関数の導関数と合成関数の微分公式を組み合わせた対数微分法から,積と商の微分公式や,指数関数や累乗の微分公式が得られることがわかった。
対数微分法とは,かくも強力な手法なのである。まさに人類の知恵というに相応しい計算法ではないだろうか。
足し算 3+4=7,
掛け算 3×4=12,
累乗 34=81.
掛け算は足し算を繰り返したもの,累乗は掛け算を繰り返したものと素朴に解釈すると,足し算より掛け算の方が,掛け算よりも累乗の方が,それぞれ計算の手間が多くかかる。初めに「階層」と書いたのは,この計算の手間の多さに関する階層のことである。
これらの階層を一段階ずつ下げる変換魔法がある。それは「対数」である。
掛け算の対数をとると,一段階下の足し算になり,累乗の対数をとると,やはり一段階下の掛け算になる。
そして,微分計算は積より和の方が相性が良いため,対数微分法と呼ばれる手法が威力を発揮する。
u と v を2つの関数としよう。u と v を掛けて得られる新しい関数を y とおく(y=uv)。
このとき,
log|y|=log|u|+log|v|
であるから,両辺を微分すると,それぞれに合成関数の微分公式を適用すれば
y ' /y=u ' /u+v ' /v
が得られる。この両辺に y=uv を掛ければ
(uv) ' =u ' v+uv '
となるが,これは積の微分公式に他ならない。
ちょうど,「積の対数は対数の和」であることから,積の微分公式に和が出てくることが了承される。
また,y=u/v であれば,
log|y|=log|u|-log|v|
なので,
y ' /y=u ' /u-v ' /v=(u ' v-uv ')/(uv)
であるが,両辺に y=u/v を掛ると
(u/v) ' =(u ' v-uv ' )/v2
となり,商の微分公式が得られる。
「商の対数は対数の差」であることが,商の微分公式の分子に差が出てくる理由であると理解できる。
このように,すでによく知っている(はずの)対数の計算規則と積や商の微分規則を結びつければ,積の微分や商の微分で和なのか差なのかで迷うことはなくなるだろう。
ちなみに,y=tan(x) のとき,tan(x)=sin(x)/cos(x) であるから,
log|tan(x)|=log|sin(x)|-log|cos(x)|
であり,両辺を微分すると
(tan(x)) ' /tan(x)=cos(x)/sin(x)+sin(x)/cos(x)
となり,log|sin(x)| の導関数が cot(x)(tan(x) の逆数)であり,-log|cos(x)| の導関数が tan(x) になることが発見される。こうして,敢えて tan(x) を対数微分してみることで,cot(x) と tan(x) の原始関数が log|sin(x)| と -log|cos(x)| であることを見出すことができた。すでによく知っていることでも,少し違った方向から光を当てると,思いがけない副産物に出くわすことがある。そうやって自分の持っている知識をいろいろ試して「遊ぶ」ことは,物事を深く理解することに役立つ。
問題集などの問題を解くだけでは不十分であり,自分で何か思いついたらその疑問を自力で追及するという,いわば自分で問題を考えるという段階までいかないと,習ったことの理解を深めることにはならないだろう。問題集の問題は,解いたり答を見たりしたらすぐに忘れてしまうが,自分で疑問に思ったことは,解決するか,あきらめるまでにずっと頭の中をぐるぐると回り続ける。そして,解決するために役立ちそうな知識を得るため,教科書やノートを調べる必要が生じる。つまり,自ずから勉強するはめになる。また,他人に解けと押し付けられた問題ではなく,自分が好きで考えていることなので,その問題に取り組むことはさほど苦ではない。自分で考えたいと思っていることをずっと考え続ける。そうすると,丸暗記しようとしてもなかなか身につかない公式などもだんだん覚えられるようになってくる。要は,その話題についてどれくらい考え続けたか。公式などをどれくらい長いこと頭の中を循環させたか。ある事柄を,他の事柄と関連付けられないかどうかを,どれくらい試してきたか。こういったことはそれほど特別なことではなく,その気になれば誰にでも出来ることだと思うのだが,どうだろうか。そして一旦そのようなモードになってしまえば,取り組んでいる科目をある程度まで極めるのは容易なことであろう。「好きこそ物の上手なれ」とはまさにそうした脳の特性をいうのだろう。
さて,もう一つ累乗の微分が残っている。これもやってみよう。
y=uv のとき,対数をとると log|y|=vlog|u| だから,微分すると,積の微分公式により
y ' /y=v ' log|u|+u ' v/u=(ulog|u| v ' +u ' v)/u
となる。両辺に y を掛けると
(uv) ' =(ulog|u| v ' +u ' v)uv-1
となる。これはあまりすっきりしていないので記憶すべきような公式ではないが,a を適当な定数とするとき,u=a,v=x(独立変数)とすれば (a) ' =0 なので
(ax) ' =(alog(a))ax-1=axlog(a)
という指数関数 ax の導関数が得られ,u=x,v=a とすれば
(xa) ' =axa-1
という,x のべき(累乗)xa の導関数が得られる。
こうして,対数関数の導関数と合成関数の微分公式を組み合わせた対数微分法から,積と商の微分公式や,指数関数や累乗の微分公式が得られることがわかった。
対数微分法とは,かくも強力な手法なのである。まさに人類の知恵というに相応しい計算法ではないだろうか。
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