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公理の独立性の証明。

2012-02-27 13:57:38 | mathematics
昨日の夜中にブログを書いていて,ちょっとこんがらがった問題(複雑度2)に突き当たった。
その記事の末尾に問題として掲げておいたが,公理の独立性に関する問題である。

※ 問題の複雑度:
0・・・反射的に答えられる。
1・・・即答はできないが,ちょっと考えれば出来るという確信を持てる。
2・・・ちょっと考えても出来ないかもしれないと不安であるが,じっくり考えればわかるかもしれない。
3・・・じっくり考えてもダメかもしれないが,やってみようと思う。
4・・・出来る気がしないし,あまり考えたくもない。

その後,布団の中で8匹の猫たちに身体をがっちりとロックされてしまい,寝付けなかったので公理の独立性について考えた。

A を Archimedes の公理,B を乗法の交換律,[C] を残りの算術の公理とする。

Hilbert から学んだことは,A と [C] をあわせた公理系から B を導出できることであった。
そのことを

[A,[C]] ⇒ B

を記すことにしよう。

このことから,Hilbert が列挙した算術の公理のリスト [A,B,[C]] は,B のみを除いた [A,[C]] と論理的に等価であることになる。

そこで問題となるのは,A と [C] が独立であるか,ということである。

ここでは,[C] だけから A までもが導出できるのかということを考えたい。

もし [C] だけから A が導出できるとすれば,

[C] ⇒ [A,[C]] ⇒ B

となって,[C] だけから乗法の交換律が導出できてしまうことになる。
しかしこれは Hilbert が「数の体系について」という論文で不可能であると言明している(『幾何学基礎論』ちくま学芸文庫版,p.190)。ただし証明はその論文には書かれていない。

このことは,A と [C] の独立性に関する有力な証拠となり得る。

さて,ここでは [C] だけから A は導けないということを示そう。
そういう意味で [C] と A は独立であるというわけである。
ただし,A だけから [C] は導けないということまでは示していないので,真の意味で独立性が確立されたかというと,それはよくわからないのだが。

Hilbert は『幾何学基礎論』定理60で,[C] だけから B は導けないことを示した。
それはどうやったかというと,[C] と,乗法の交換律とは両立し得ない,別の乗法の交換性 b を公理として付け加えた,実数や複素数とは異種の数体系の例を提示して見せたのである。

この事実を利用すると,背理法でけりがつく。
もし [C] ⇒ A が成り立つと仮定すると,[C] だけで,A と [C] とをあわせた公理系と同じ機能を持つわけだから,[C] ⇒ B が言えることになる。

すると,Hilbert が定理60で示したことにより,B とは両立しないある別の乗法の交換法則 b を [C] に付け加えてできる数体系において,

[b,[C]] ⇒ B

が言えることになる。

ところが,これは [b,[C]] から [B,b,[C]] が導けることになってしまうが,B と b が両立し得ない間柄にあることから,[B,b,[C]] は内部矛盾を含んでいるため,それを満たすような整合的なモデルは存在しない。

このようなおかしな事態が生じたのは,そもそもの [C] から A が導けるという仮定に原因があるわけだから,そんなことを仮定したのがまずかったのである。

したがって,[C] だけから A を導くことはできない。c.q.f.d.
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