開区間 I=(a,b) で定義された実数値関数 f についてのみ考察する。
f が凸 (convex) であるとは,I に属する任意の x, y および任意の t∈[0,1] に対し
f((1-t)x+ty)≦(1-t)f(x)+tf(y)
が成り立つことをいう。
凸関数のグラフは下に凸な曲線であり,そのグラフを描いて眺めれば了解されることであるが,x≠y であるときに定義される平均変化率
((f(x)-f(y))/(x-y)
は,例えば y を固定すると x について単調増加になっている。このことをきちんと示そうというのが本稿のメインテーマである。
まず p∈I を一つ選んで固定し,p と異なる x∈I に対して
g(x):=((f(x)-f(p))/(x-p)
と定義する。この関数 g が単調増加であることを示すのが目標だが,それを
(i) p<x<y<b;
(ii) a<x<p<y<b;
(iii) a<x<y<p
の3つの場合に分けて論じることとする。
(i) t=(x-p)/(y-p) とおくと t∈(0,1) かつ x=(1-t)p+ty であるから,
f(x)≦(1-t)f(p)+tf(y)
が成り立つ。これを
f(x)-f(p)≦t(f(y)-f(p))
と変形し,両辺を x-p>0 で割れば
g(x)≦g(y)
に到達する。
(ii) p=sx+ty, s+t=1, s≧0,t≧0 をみたす実数 s, t が存在する。具体的には
s=(y-p)/(y-x), t=(p-x)/(y-x)
である。
このとき,
f(p)≦sf(x)+tf(y)
が成り立っているが,左辺を (s+t)f(p) とみて
s(f(p)-f(x))≦t(f(y)-f(p))
と変形する。この両辺に y-x>0 をかけると
(y-p)(f(p)-f(x))≦(p-x)(f(y)-f(p))
を得る。この両辺を (y-p)(p-x)>0 で割ると
(f(p)-f(x))/(p-x)≦(f(y)-f(p))(y-p)
となるが,この左辺は分子と分母の双方に -1 を乗じて (f(x)-f(p))/(x-p) と書き改めることができる。
したがって g(x)≦g(y) であることがわかる。
(iii) これは (i) と同様である。s=(p-y)/(p-x) と取れば s∈(0,1),1-s=(y-x)/(p-x) かつ y=sx+(1-s)p であり,
f(y)≦sf(x)+(1-s)f(p)
が成り立つこととなって,
f(y)-f(p)≦s(f(x)-f(p))
となり,両辺を -(p-y)<0 で割って
g(y)≧g(x)
を得る。
以上で g が単調増加であることが示された。
そうすると,a<q<p<r<b なる q,r を一つ固定すると,
p<x<b ならば g(q)<g(x) であるから,g(x) は下に有界であり,右極限 x&arrow;a+0 において g(x) は収束する。
その極限値を β とおこう。
また,a<x<p ならば g(x)<g(r) であるから,g は区間 (a,p) において単調増加かつ上に有界である。したがって左極限値 g(p-0) も存在するので,それを α とおく。
ここで,例えば (-1,1) における凸関数として f(x)=|x| を考えると,p=0 の場合 g(+0)=1,g(-0)=-1 であるから α と β とが一致しないことも起こり得る。しかし,
h(x)=(x-p)g(x)=f(x)-f(p)
とおくと,h(p+0)=h(p-0)=0 であるから,f が x=p において連続であることは言える。
こんな微分積分学の基本事項ですらスラスラと証明ができないままの体たらくだったので,今週分の「自分レポート課題」として答案を作ってみた次第である。
さて,確か積分論の初等的な話題として凸関数が微分できない点,つまり g(p+0) と g(p-0) の値が一致しない点は有限個だか,たかだか可算個だがだったはずだが,とりあえず有界閉区間 J=[a,b] で定義された凸関数 f についてその類のことが言えるかどうかを次の「自分レポート課題」にしようと思う。
サイトをググるなり,それなりのテキストを見るなりすればこんなことはいくらでも解説がされているのだが,自分の「数学力」を少しでも高めるべく,自分の頭で(ある程度は)考えたいものである。
f が凸 (convex) であるとは,I に属する任意の x, y および任意の t∈[0,1] に対し
f((1-t)x+ty)≦(1-t)f(x)+tf(y)
が成り立つことをいう。
凸関数のグラフは下に凸な曲線であり,そのグラフを描いて眺めれば了解されることであるが,x≠y であるときに定義される平均変化率
((f(x)-f(y))/(x-y)
は,例えば y を固定すると x について単調増加になっている。このことをきちんと示そうというのが本稿のメインテーマである。
まず p∈I を一つ選んで固定し,p と異なる x∈I に対して
g(x):=((f(x)-f(p))/(x-p)
と定義する。この関数 g が単調増加であることを示すのが目標だが,それを
(i) p<x<y<b;
(ii) a<x<p<y<b;
(iii) a<x<y<p
の3つの場合に分けて論じることとする。
(i) t=(x-p)/(y-p) とおくと t∈(0,1) かつ x=(1-t)p+ty であるから,
f(x)≦(1-t)f(p)+tf(y)
が成り立つ。これを
f(x)-f(p)≦t(f(y)-f(p))
と変形し,両辺を x-p>0 で割れば
g(x)≦g(y)
に到達する。
(ii) p=sx+ty, s+t=1, s≧0,t≧0 をみたす実数 s, t が存在する。具体的には
s=(y-p)/(y-x), t=(p-x)/(y-x)
である。
このとき,
f(p)≦sf(x)+tf(y)
が成り立っているが,左辺を (s+t)f(p) とみて
s(f(p)-f(x))≦t(f(y)-f(p))
と変形する。この両辺に y-x>0 をかけると
(y-p)(f(p)-f(x))≦(p-x)(f(y)-f(p))
を得る。この両辺を (y-p)(p-x)>0 で割ると
(f(p)-f(x))/(p-x)≦(f(y)-f(p))(y-p)
となるが,この左辺は分子と分母の双方に -1 を乗じて (f(x)-f(p))/(x-p) と書き改めることができる。
したがって g(x)≦g(y) であることがわかる。
(iii) これは (i) と同様である。s=(p-y)/(p-x) と取れば s∈(0,1),1-s=(y-x)/(p-x) かつ y=sx+(1-s)p であり,
f(y)≦sf(x)+(1-s)f(p)
が成り立つこととなって,
f(y)-f(p)≦s(f(x)-f(p))
となり,両辺を -(p-y)<0 で割って
g(y)≧g(x)
を得る。
以上で g が単調増加であることが示された。
そうすると,a<q<p<r<b なる q,r を一つ固定すると,
p<x<b ならば g(q)<g(x) であるから,g(x) は下に有界であり,右極限 x&arrow;a+0 において g(x) は収束する。
その極限値を β とおこう。
また,a<x<p ならば g(x)<g(r) であるから,g は区間 (a,p) において単調増加かつ上に有界である。したがって左極限値 g(p-0) も存在するので,それを α とおく。
ここで,例えば (-1,1) における凸関数として f(x)=|x| を考えると,p=0 の場合 g(+0)=1,g(-0)=-1 であるから α と β とが一致しないことも起こり得る。しかし,
h(x)=(x-p)g(x)=f(x)-f(p)
とおくと,h(p+0)=h(p-0)=0 であるから,f が x=p において連続であることは言える。
こんな微分積分学の基本事項ですらスラスラと証明ができないままの体たらくだったので,今週分の「自分レポート課題」として答案を作ってみた次第である。
さて,確か積分論の初等的な話題として凸関数が微分できない点,つまり g(p+0) と g(p-0) の値が一致しない点は有限個だか,たかだか可算個だがだったはずだが,とりあえず有界閉区間 J=[a,b] で定義された凸関数 f についてその類のことが言えるかどうかを次の「自分レポート課題」にしようと思う。
サイトをググるなり,それなりのテキストを見るなりすればこんなことはいくらでも解説がされているのだが,自分の「数学力」を少しでも高めるべく,自分の頭で(ある程度は)考えたいものである。
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