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3つのハムレット/『ハムレットQ1』

2010-03-31 01:44:22 | 読書
ハムレットQ1 (光文社古典新訳文庫)
ウィリアム シェイクスピア
光文社

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 舞台は、観る方が多く、あまり演劇史に関しては、文学部ほど勉強はしていません。
 ハムレットの上演台本は、シェイクスピア存命中に刊行された「第2四折本(1604)・Q2」と、死後劇団員によって刊行された「第1・二折本(1623)・F1」が元になっているそうです。どちらも全文が長く、完全上演すれば5時間近くもかかるとのこと。そんな訳で、実際に上演する時は、かなりのセリフのカットが行われます。演劇というのは、生き物ですから、舞台で演じる時は、かなりの演出上のセリフのカットや書き換えはありうることです。Q2をもとにするか、F1をもとにするかは、演出家の裁量に属することなのでしょう。実際には、Q2とF1を合わせたものを基本にした台本が使われることもあるようだ。
 問題は、1603年に出版されたQ1の存在で、長らく、海賊版として扱われてきた。しかし、事態はそう単純なものでもないらしく、単純に海賊版とすることには異議があるようだ。とにかく、当時の上演の雰囲気をよく醸し出しているテキストとなっているという。セリフも、Q2・F1の半分くらいで、幕割りや登場人物の名前などに異同がある。セリフの内容も、あの有名な"to be or not to be"や尼寺のセリフの置かれている場面も違っている。
 ハムレットの母が、息子から真相を知らされる点も、種本に近いということだ。

 翻訳をした安西徹雄氏は、演劇集団〈円〉での上演に、このQ1をテキストとして使用したそうだ。

 いつもは、観客の視点でしか観ていない演劇の世界だが、ハムレットもめぐる3つのテキストの関係は、とても興味ある話であった。

 戯曲を読みのも意義のある事だが、望むべきは、Q1での上演を観ること。