家の前に沈丁花が咲いた。
とても強い、良い香りが玄関に漂っている。
思えば僕が初めて田舎から東京に出てきたときにもこの香りを嗅いだ。
寝台列車が上野に着き、出迎えの叔父に連れられて乗った国鉄。駅の長い階段を降りて乗り換えた地下鉄。
その地下鉄が地上に出、どんよりとした雲の下、どこまでも続く家並みを「広くて家がたくさんあるなあ……」と思って眺めた記憶は今も忘れられない。
叔父の家にお世話になり過ごした受験の日々、そして始めての家探し。
そのときにも沈丁花の香りが街に強く漂っていた。
期待と不安と寂しさと、わくわくした感情が入り交じった香り。
それは親元を離れた孤独と、自分の前に拡がる未知なる明日を前にした、武者震いにも似た高揚感と強く結びついている。
2007年春。故郷を後にして、二十数年目の春。この香りは今も胸に切ない。
とても強い、良い香りが玄関に漂っている。
思えば僕が初めて田舎から東京に出てきたときにもこの香りを嗅いだ。
寝台列車が上野に着き、出迎えの叔父に連れられて乗った国鉄。駅の長い階段を降りて乗り換えた地下鉄。
その地下鉄が地上に出、どんよりとした雲の下、どこまでも続く家並みを「広くて家がたくさんあるなあ……」と思って眺めた記憶は今も忘れられない。
叔父の家にお世話になり過ごした受験の日々、そして始めての家探し。
そのときにも沈丁花の香りが街に強く漂っていた。
期待と不安と寂しさと、わくわくした感情が入り交じった香り。
それは親元を離れた孤独と、自分の前に拡がる未知なる明日を前にした、武者震いにも似た高揚感と強く結びついている。
2007年春。故郷を後にして、二十数年目の春。この香りは今も胸に切ない。