A Rider's Viewpoint

とあるライダーのものの見方

人の影

2012-07-13 18:37:07 | つれづれ
そういえばこんな不思議なこともあった。

会社の帰り道、とある裏道を通る。裏道とはいえ片側2車線のちゃんとした道路。
湾岸沿いを走る国道の、もう一本海に近い、倉庫や埠頭近辺を走る道路だ。

この道の、ある駅前を通り過ぎ、橋を渡る直前の緩い左側のカーブの手前にある、中央分離帯のポールの影が、ときおり人の姿に見えるときがある。
それはいつもではない。影であるから当然昼には見えない。普通の街灯の影だけでもそうは見えない。ある特定の車種の、つまりはある特定の高さのヘッドライトを持つ車が対向してきて、そのヘッドライトに照らされた時だけ、人の姿に見える気がする。

いや、僕も確認したわけではない。
ただ、以前通った時に見えた人の姿がなぜ今日は見えなかったのだろうとぼんやり考えていたことがあり、それを数回繰り返したとき、そんなことに気づいたというわけだ。

なんだ、同じ高さから照らされた時に重なる影の、単なる偶然か。

……と思ったとき、不意に気づいた。人の姿と見間違うということは、頭・首・肩・体と同じような凹凸のパターンがあり、たぶん僕はそれを人として認識した。
しかし、そこに立てられているポールは、一番上が丸くなっているただの寸胴なポールで、どんな光の角度であっても、人と見間違うような凹凸が発生するとは思えないし、他に重なるようなものもない。

……じゃあ、僕が見間違っていた人の姿というのは一体何なのだ?
特定の車種が照らした時にだけ人の姿に見えるような、そんな理由があるというのか?

今年の2月に東京臨海部を結ぶ大きな橋が完成し、通勤経路が変わった。
いま僕はそのルートは使っていない。

黒い服の人

2012-07-05 12:44:09 | つれづれ
昨日、変わったことがあった。

夜9時頃郵便局に行き、会社用の切手を購入して精算を済ませていた時のことだ。僕の後ろに並んでいた人が窓口の係員に「あの、あなたではなく、こっちの人に頼みたいんだけど」と言い出した。
窓口の列は2列で、僕が左側で精算が終わったタイミング。右側の係員は別の人の不在通知郵便を探している。順番としては当然左側の係員に依頼するのが普通の流れだ。

「いや、あなたが悪いとかいうことじゃなくて、黒い服を着ている人に仕事を頼むと悪いことが起きるんですよ」

僕はぎょっとしてその人を見た。

僕の後ろに並んでいたその人は、40代後半から50代の男性。やせ形で穏やかな印象で声色も優しい。とても意味不明なことを言うおかしな人や強硬なクレーマーのようには見えない。
目の前の係員は確かに黒いTシャツを着たアルバイトらしい青年だ。

まわりのいぶかしんだ目に気づいたのか、その人は小声で「ちょっと事情がありましてね。申し訳ないんですが……」とつぶやくと、後ろから来た人に順番を譲り、自分は右側の列に並び直している。
回りの客も郵便局の係員も、特にとがめることもなく、その人の言うとおりにしてあげている。ちなみに僕も何も言わずに荷物を片付けて郵便局を後にした。

しかし、何だ?
黒い服の人に仕事を頼むと起こる悪いことって一体何だ?

淡々と、「雨雲が出てくると月が隠れて暗くなるんですよ」などと、自明の事実を述べるかのように話すその人の口調は、怪異なことを話す口調ではない。
普通のことを当たり前に話すような口調だ。

この人の回りでは「黒い服の人に仕事を頼んで起こった悪いこと」が当たり前の事実として積み重なっているというのだろうか?
ちょっと背筋が寒くなる思いを抱きながら、僕は帰路についた。