A Rider's Viewpoint

とあるライダーのものの見方

溜飲を下げた日

2010-03-22 21:46:14 | 所感
 とある平日の夕方、会社に一本の電話がかかって来た。

「もしもし、私、◯◯株式会社という会社の採用担当の者なんですが、人事ご担当の方はいらしゃいますか?」

「はい。私がそうですが、何か?」

 「S・Tさんという方をご存知ですか? その方が今回弊社の採用に応募されてきて、以前御社に勤めていたということでしたので、働き振り等をお伺いしたくて、お電話したのですが」

 このようなケース、人事担当からすれば珍しい事ではない。新規採用の際、前職に問い合わせをして勤務状況とか退職に至った理由を確認することは比較的よくあることなのだ。

 このような問い合わせは、ある意味ではその人間の人生を左右する。だから、多少働き振りがよくなくても、問題を起こして退社したような場合でなければ、穏便な回答をしてあげるのが一般的なのだ。

 しかし、うちの会社にとって、そのS・Tという元アルバイトは違った。
 入社数日で無断欠勤をして全く連絡が取れなくなってしまい、お役所に支払う社会保険料の個人負担分を会社が立て替えなければならなくなった。本来それは給料から天引きで処理されるものなのだが、無駄欠勤で働いていないため、その金額はまるまる会社側の負債となる。当然会社としては、その負債を回収するため、自宅に何度も督促の電話をしたり、内容証明郵便を送ったり、ご家族に相談したりしたのだが、本人は全く返答なし、ご家族も電話ガチャ切り、結局のところ全く支払ってくれず、決算の際に顛末書を僕が書き、損金として計上するという屈辱的な結果となったのであった。

 そんな辞め方をしたS・Tがなんで今回の採用にあたってうちの会社の名前を出してきたのか?
 おおかた、多少聞き覚えがあるうちのグループ会社のネームバリューを利用するつもりだったことと、まさか僕のところに採用担当者が電話をするとは思わなかったんだろうな。

  S・Tという名前を聞いて、その時の悔しさを思い出していた僕は、深呼吸をしてから、きっぱりとこう言った。

「その男は、うちの会社を無断欠勤で辞め、社会保険料の個人負担分を踏み倒し、こちらからの連絡に全く応じなかった、とても無責任な男です。御社でも採用されない方が宜しいかと思います」

「ありがとうございます。先ほど本人と面接をしたばかりなのですが、ちょっと気にかかる点がありましたので、本人が帰ってすぐに御社に連絡したんですよ」

 人事担当者の勘は侮れないものがある。そして、その電話を僕が受けたということも、人生の不思議な巡り合わせのひとつなのかもしれない。

 因果応報。人は自分が行った結果によってその報いを受ける。
 S・Tにとってみれば不幸だったかもしれないが、本人がきちんと誠意ある対応をうちの会社にしていれば、こんな結果にはならなかった。結局は自分の責任である。

 S・Tに対して、一矢報いることができたこと、無責任で不誠実な彼が、いまだに定職に就けていなかったことは、ネガティブではあるが、嬉しい出来事であった。
 正直者が馬鹿をみて、不誠実な男が得をする、今回はこんなケースじゃなくて、良かった。