A Rider's Viewpoint

とあるライダーのものの見方

通勤の怪談

2008-04-17 21:02:44 | たわごと
 車を点検に出している。そんな訳で雨の今日、電車通勤をした。久々のラッシュを体験し乗換駅で降りる。乗り換え路線はこの駅が始発だ。ホームに降りるとちょうど次の電車が入ってきたばかりで運良く座ることができた。

 背負っていたバッグを膝の上に置き、音楽を聴きながら反対側の窓からぼんやりとホームを眺めている。傘を手に持ったサラリーマン、小走りの学生、レインコートを着ているOLとかが歩いている。

 ふと妙なことに気づいた。ベージュのコートを着た長めの髪のOL。ワンレングスって言ったっけか、あのヘアースタイル。
 何が妙かというと、その女は歩いているように見えない。
 人間が歩く時、体は必ず上下左右に揺れる。一定のリズムを刻んで体が動いているように見えるものなのだ。
 しかしその女は違う。まるで滑るように、平行移動するように、動いている。
 瞬間的に悟った。『この世のものではない!』

 頭の中でぐるぐると思考が渦巻く。『何故だ? 太陽は出ていないとはいえ、午前8時だぞ。幽霊が跋扈するような時間じゃない!』
 理性は目をそむけようとするのだが体が言うことを聞かない。目がその女に吸い付けられているようだ。

 『やばい。もういい加減に目をそむけないと……』

 ……遅かった。その女は凝視している僕に気づいたらしい。切れ長の目を僕に向けて、若干赤い冷たい目で僕を見据える。その目は明らかに「気づいたのね」そう言っているように思える。

 突然女は僕の方に向けて方向転換をした。ホームの向こう側から滑るように反対側の座席の窓の外に近づいてくる。女は窓ガラスの外に手をつくと窓から僕をのぞき込んでいる。
 『うわっ』と声にならない悲鳴を上げ、僕はようやっと下を向くことができた。
 するといつの間に中に入り込んだのだろう、その女は僕の顔の下から僕をのぞきこんでいた。

 「うわぁ!」思わず僕が大声をあげてのけぞったとき、そこには何もいなかった。
 「なんだなんだ?」という顔つきで回りの乗客が不審そうに僕を伺っている。何事もなかったような顔をして、膝の上のバッグをごそごそしながらその場を取り繕う。
 『夢だよな。うたた寝をして夢を見たんだよな』そう考えて自分を納得させようとする。

 しかし僕は気づいてしまった。向かい側の窓ガラスに、手のひらの跡が残っていることに……。

春霞は全てを優しく包み込む

2008-04-14 19:00:14 | つれづれ
 前回の更新から3週間近くが過ぎ去った。
 その間に、東京モーターサイクルショーが開催され、桜が咲いて花吹雪の下を車で走り、友人のラーメン屋に3回目の訪問をした。
 昨年末、ボーナスをはたいて購入した「刑事コロンボ」のDVD-BOXも、視聴は既に20話を過ぎ、この間はネットショップで買ったちょっと高級なワインを飲みながら『別れのワイン』を観るという贅沢も試してみたところだ。
 娘は無事に進級し、今日からまたお弁当が始まった。車を点検に出したので一週間分のメニューを考えて、昨日買い出しに行ったのだ。

 諸事全てこともなく過ぎ、僕も家族も相変わらずだ。こまごまとした諍いやトラブルも、3週間というスパンで振り返っただけで、既に春霞の中でおぼろになり、安定した日常の中に埋没して行くように思える。

 幸せには確たる形はないように思うのだが、もし仮に形があるとしたら、漠とした「もや」のようなものではないだろうか?
 忙しさの中でふと振り返ったとき、ついそんなことを考えてしまった今日の僕である。