窓の外の梅の木を眺めている。その花は木の枝に直接ついている。
梅の木の新しい鶯色の枝。その枝は昆虫の伸びた触手がそのまま固まりでもしたかのように、まっすぐにすらっと天空の上を指して伸びている。
そんな梅の木の枝の中に、たった二輪しか花の咲いていない枝がある。天空をまっすぐに指し示した枝。その枝の先の方にほんの二輪。咲いている花と咲かんとしているつぼみ。
何故かはわからないが、亡くなった祖母のことを思い出した。
死の床についた祖母。娘を連れて行った孫の僕に、「かわいいねぇ。かわいいねぇ。幸せだねぇ」……ただそれだけを繰り返し、繰り返し、笑顔で語りかけてくれたのだった。
何かを見たとき、あるいは何かを聞いたとき、時間を超えてその人を思い出すことができるのであれば、死の恐怖というものになんの意味があるだろうか。
梅の花は、ただ春風に揺れている。
梅の木の新しい鶯色の枝。その枝は昆虫の伸びた触手がそのまま固まりでもしたかのように、まっすぐにすらっと天空の上を指して伸びている。
そんな梅の木の枝の中に、たった二輪しか花の咲いていない枝がある。天空をまっすぐに指し示した枝。その枝の先の方にほんの二輪。咲いている花と咲かんとしているつぼみ。
何故かはわからないが、亡くなった祖母のことを思い出した。
死の床についた祖母。娘を連れて行った孫の僕に、「かわいいねぇ。かわいいねぇ。幸せだねぇ」……ただそれだけを繰り返し、繰り返し、笑顔で語りかけてくれたのだった。
何かを見たとき、あるいは何かを聞いたとき、時間を超えてその人を思い出すことができるのであれば、死の恐怖というものになんの意味があるだろうか。
梅の花は、ただ春風に揺れている。