モノ・語り

現代のクラフトの作り手と作品を主役とするライフストーリーを綴ります。

「こんぶくろ」と呼ばれる布の提げ袋

2009年06月20日 | モノ・こと・ことば
かたち21のHP



「女の手仕事五人5様」展の会場には、「女わざの会」主宰森田珪子さんが送ってきた資料を展示するコーナーがありました。
その中に手提げバッグのような布の提げ袋があり、「森田次郎」という名前が書き込まれていました。
森田さんのご子息の名前で、小学生の時に使われていたようです。
制作したのは森田珪子さんご本人と思われます。


その袋は底が丸くなっていて、平べったくたたむことができません。
どうやって作ってるのだろうと、興味を掻き立てさせられる布袋です。
東北では「こんぶくろ」と呼ばれていたもので、冊子『女わざ』には
「人同士、家同士のつながりが深かった頃、手みやげに米や豆を持っていくことが多く、
それを入れるこんぶくろは欠かせないものでした」(第2号)
と説明されています。


さて展覧会が終了して森田さんも岩手に帰られ、数日した頃に紬織り作家の中野みどりさんのもとに、
「一宿一飯の恩義」ということで無農薬玄米や、もち米、梅干、山椒の佃煮と一緒に、
着物地の端裂で作られたねじりこんぶくろが森田さんから届けられました。
中野さんは、恩義を感じていただくようなもてなしはできなかったので恐縮していると言い、
また、こんぶくろに込められた思いやわざを私に手渡されたのだろうとも言いました。



 


さらに中野さんは、ものを作るということの意味を「女わざ」が伝えようとしている中に見出しつつ、
自分の仕事とダブらせながら受け止めたいとも言いました。
東京にいる間に森田さんが「わざのないものはつまらない」と言ったのだそうです。
中野さんはその言葉を、重く深く受け止めたようです。


その話を聞いて私もギクッとするところがあります。
「わざのないものはつまらない」
この言葉は、今日のものづくりを鋭く刺してきます。
コンセプトやテクニックはあっても「わざ」がない、
そういう場合の「わざ」とは何か――、非常に興味をそそられるテーマであると思います。



「女わざ」第2号(1984年発行)より



「女わざの会」のHP




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