尾道、浄土寺多宝塔
















     尾道の街は、狭い瀬戸の水道を前に、山が海に落ち込むわずかな隙間に拡がって
     いる。その街並みの最も東にある大寺、それが、転法輪山大乗院浄土寺(現在は
     真言宗泉湧寺派大本山)である。推古24年(616年)聖徳太子の開創と伝える。
     海岸の道から、山陽本線の下を潜り、急な石段を上ると山門に着く。
     境内、左より本堂、阿弥陀堂、そして多宝塔と並ぶ様に圧倒される。(本堂、多宝塔
     は国宝、阿弥陀堂は重文)そして、一際美しい姿で、迎えていただくのが多宝塔。
     1328年、この地の富豪道蓮、道性夫妻の発願により、本堂とともに建立されたと
     伝える。和様を主に、大仏様、禅宗様を採り入れた様式と言われ、牡丹唐草に蝶、
     法輪などの彫刻のある板蟇股(かえるまた)も見事である。二層軒下の幾重にも
     重なる木組みを見ていると、心が吸い込まれそうだ。
     やがて、真っ青な夏の空に掃いたような雲が現れた。あたかも、塔の軒先から解き
     放された気が雲に導かれて、天に上って行くさまに思われた。

     (多宝塔とは、塔身の下方が方形、上方が円形の二重塔である。上座部仏教の国、
      タイやミヤンマーあたりで見かけそうな気がするが、日本独自の塔形式であるらしい。
      この塔、以前に紹介した大津の石山寺、それに高野山金剛三昧院に在るものととも
      に、日本の最も優れた多宝塔と言われる。
      中国地方の国宝建築物を訪ねて・・、これで5つ目ぐらいでしょうか。まだ、続きます。
      またどんな素晴らしい古の心に触れることができるでしょうか・・。)
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