石山寺多宝塔その周辺
















     琵琶湖より流れ出る唯一の水である瀬田川のほとり、石光山石山寺
     (真言宗)がある。天平19年(747年)の開基と伝える古刹で、
     西国三十三観音霊場、第十三番札所でもある。
     参篭の折、源氏物語の着想を得たと云われる、紫式部ゆかりの寺
     と伝える。
     運慶、湛慶作の仁王像の居ます東大門をくぐると、石畳の参道が続く。
     心が洗われるようだ。
     長い石段を上がると、天に向って奔放な羽を拡げたような見事な多宝塔
     に会える。建久5年(1194年)の建立で、あまたある多宝塔の中で、
     最も美しいものと言われる。国宝である。
     隣接する鐘楼とともに、この五月は、緑こぼれるもみじに囲まれた
     佇まいである。

     (鳥羽から、京大坂の道は、国道1号線を通る。京への入口、そこに、
      石山寺がある。先日TVで瀬戸内寂聴さんが訪れる番組があった。
      紫式部以来、文学者に所縁のある寺なのである。)
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正福寺千体地蔵堂
















     室町時代の初期(1407年)の建立といわれる地蔵堂。
     山門をくぐると、まずその独特の反りをもつ屋根に圧倒される。
     まるで、天に羽ばたく翼のようだ。
     禅宗様(唐様)の特徴をもつ、扇垂木、尾垂木の重厚、素朴な
     木組み、波形欄間、花頭窓など華麗な装飾をもつ。
     まことに美しい、見事な地蔵堂なのだ。
     昔、近隣の人々が心願の成就を感謝して奉納したと伝える
     小地蔵尊像が、堂内に多数置かれている。このお堂の名も
     これに由来する。

     (東京都東村山市野口町にある、金剛山正福寺(臨済宗)の地蔵堂。
      東京都唯一の国宝建築物である。
      関東地方にある国宝建物は、日光東照宮、輪王寺、
      福島県いわき市白水の阿弥陀堂(昨年掲載)、そしてあとひとつ、
      この地蔵堂と極似していると云われる鎌倉、円覚寺舎利殿
      (常時は非公開)があるのみである。
      私は、以前、近くの所沢に住んでいたため、知っていたが、一般には、
      意外に知られていないお堂で、訪ねる人も少ない。)
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椿山荘、三重塔
















     文京区の椿山荘にある、三重塔。
     もともとこの地にあったものではない。
     広島県賀茂郡河内町入野(現、東広島市)の山上伽藍、
     篁山(たかむらさん)竹林寺に上層部が大破した状態で 
     あったものを、大正14年この地に移築、補修したものである。
     初層が、禅宗様、二、三層が和様といわれ、室町時代後期、
     または、江戸時代初期の建立と推定されている。
     現在の屋根は、銅板葺きであるが、もとは、桧皮葺きであったという。
     素朴な木組みの力強さに、江戸を越えた古い時代の香りを
     感じさせる、すばらしい塔なのである。

     (都内に現存する古塔は、以前に貼った、上野旧寛永寺五重塔、
      池上本門寺五重塔、そして、この塔の三つしかないのである。
      場所や移築の経緯には、やや引っ掛かることがないとは言えないが、
      貴重な遺構であることに間違いない。大事にしたい古建築のひとつで
      ある。)
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