月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

あれから1年。

2021-05-10 | 癌について
あさっては3ヶ月検診(CT検査)の日。
またもや「体を仕上げに」かかっている。
GWが終わってからアルコールは1滴も飲んでいないし、朝のウォーキング、食事、水素吸入、温冷浴と真面目にやっている。
体調は悪くないが、原稿が思うように進まないために精神状態はあまり良くない。
まあいつも検査前は情緒不安定になるのだが。

これをクリアすれば、治療無しで1年間無事だったことになる。
昨年5月が最後の抗がん剤治療だったから。

たしか5月22日だったか。9クール目の最期にアレルギーが出て、もう同じ薬は使えなくなった。
その後は体への負担の強い薬しか選択肢がなく、拒否。
だって、5年前と合わせて計12回もやったのだ。
もう心身ともに限界だった。
体は悲鳴をあげて、最後は副作用も強く、26日は最悪の誕生日だったことを覚えている。

あれから1年。
治療しないという選択は、たぶん、人が思うよりずっと怖いことだ。
だけどそれを自分で選んで、今日まできた。
今もガンはなくなっていないが、悪さもしてこない。
理解のある主治医なので、3ヶ月ごとに検査しながらなんとかやってきた。

体調は悪くない。今回も大丈夫だ。
また夏まで生き延びる。
そう自分に言い聞かせる。

その前に、今年は元気に誕生日を迎えたい。
おいしいお酒をたらふく飲んで、ワハハ、ワハハとたくさん笑って過ごしたい。

高齢者に優しくないシステム

2021-05-07 | 想い
ゴールデンウィークが終わった。
まだGWボケが治らない。
5日間も連続で仕事をしないと、「日常」が自分の中に戻って来るのに時間がかかる。

一昨日、母から電話があり、「ワクチンの予約を手伝ってほしい」とのこと。
うちの町では「集団接種(同じ日に集まって受ける)」と「個別接種(各自が日時を決めて病院で受ける)」を選べる。
集団接種の第1回目の予約受付はインターネットで行ったが、すぐに埋まって取れなかったらしい。

次に接種の日が早いのが個別接種で、その予約受付が昨日(5月6日14時~16時)から始まり、電話受付のみというのだ。
もちろん父と母も電話をするが、少しでも確率を上げるために私にも予約の電話をかけてほしい、とのこと。
すぐに了解して電話を切ったが、「年寄りに、なんてことさせるねん!」と大声で叫んでしまった。

町内の高齢者、数千人が、必死になってインターネットや電話で予約をしようと頑張っているのだと思うと、憤りしかなかった。
このシステムを決めた人はバカなのか?
「平等」という大義のもとに、こんな馬鹿げた無駄な労力が必要となるなんて。
抽選でも、高齢順でもいいじゃないか。さっさと決めて通知すれば、こんな無駄なことをしなくていいのに。
うちはまだ二人とも元気だからいいけど、中には自分でインターネットやスマホを触れない人だっているはずだ。
子供や孫に頼れない人も。
なんて高齢者に優しくないシステムなんだろう!

さんざん夫に愚痴ったが、どうにもならないので、昨日言われた通り予約受付に電話をかけた。
思った通り、つながらない。
5分置きに1時間かけたが、一度もつながらなかった。

1時間経って、母からLINEが届いた。
「仕事も忙しいだろうし、もういいよ、あとはこちらでやります」と。
原稿を書いている途中だったのと、「たぶんこれはあと1時間やっても無理だな」と察したこともあり、私はそこで終了した。

夕方、母から電話。
結局つながらなかったので、これからどうしたらいいのかを、役場のワクチンコールセンターみたいなところ(質問など受け付けるところ)に電話をかけて聞いたらしい。
やる気なさげな担当者に「毎日かけてください。1日の予約枠が決まっているので」と言われ、母が「1日の予約枠って何件なんですか?」と聞いたら、これがびっくり!
なんと、「20件」だというのだ。

電話の向こうで、珍しく声を荒げている母。
「20件だったら、最初の20分くらいでもう埋まってるでしょうに!こっちは2時間も電話かけてるのに!それなら今日の受付は終わりましたとか、何かアナウンスがあってもいいと思わない?!」

全くその通りだ。
それを担当者にも訴えたらしいが、担当者は「病院のことなんで、うちは知りません」と。
そのことにも母はぶち切れていた。
「もともと役場の人は感じ悪い」とか、「議員が14人もいて何してるんだ」とか、関係ないことにまで怒りをぶつけ始めた。

なんとかなだめて、明日から電話しても20分やって繋がらなかったら、かけ続けなくていいということと、次の集団接種の予約受付が19日にあるから、それはインターネットでできるから協力するねと言って、電話を切った。

きっとうちの町内だけでなく、全国のいろんな自治体でこんなことが起きているんだろうな。
高齢者優先なら、もっと高齢者に優しいシステムにしてあげればいいのに。
これじゃ、高齢者以外にワクチンが行き渡るのは、一体いつになることやら・・・

あたたかな一筋の光がそこに。

2021-05-01 | 
これぞ、瀬尾まいこさんの真骨頂!
読み終えた時、心からそう思った。

瀬尾まいこさんの小説を初めて読んだのは、おそらく15年以上前。
友達に薦められた「天国はまだ遠く」だった。
素朴な語りと温かな物語に引き込まれ、それからかなりの作品を読んできた。
特に好きなのは「図書館の神様」「優しい音楽」「幸福な食卓」。
ただ、いつからか新作を読んでも面白いと思うことがなくなり、気づいたら長い間手に取ることがなくなっていた。
久しぶりに読んだのが2019年の本屋大賞受賞作の「そして、バトンは渡された」。
本屋大賞の本はだいたい面白いので、これは久しぶりにヒットか!と思って読んでみたのだが、残念ながら私の心にはあまり響かなかった。
(でも、本屋大賞ということは、多くの人の心には響いているということ。私の個人的な感想だ)

今回読んだのは、本屋大賞受賞後の第一作目。
どうかなぁ、またあまり響かないかなぁと思いながらも、なんとなく本屋で手に取ってしまった。

「夜明けのすべて」


そんな気乗りしないような状態で読み始めたのだが、数ページ読んで、もう夢中になっている自分に気づいた。
一気に読み終え、思った。
「これぞ、瀬尾まいこさんの真骨頂!」

物語は、PMS(月経前症候群)の女性藤沢さん(28歳)が、社員6名の小さな会社で働いているところから始まる。
藤沢さんは生理前になると、イライラを抑えることができない。
それが理由で前の一流企業も辞めてしまった。
PMSのイライラくらいで?と思うのだが、読み進めるとすぐに辞めたことも納得できる。
同僚が炭酸を飲む時のキャップを開ける「プシュッ」という音だけで、周りの人の手に負えないほど怒り出すからだ。

これは大変だなと思っていたら、その炭酸を飲んでいた同僚の山添くん(25歳)は、なんとパニック障害。
それを知った藤沢さんは、同じようなものを抱える仲間意識からなのか、山添くんに近づいていく。
急に家を訪れて、やったこともないくせに「髪を切ってあげる」と言い出すのだ。
その近づき方が大胆かつコミカルで、読んでいる私も最初は驚いてしまったが(近づかれた山添くんの驚きはハンパない)、山添くんが少しずつ心を開いていくというか、あきらめていくのにしたがって、こちらもその行為を受け入れてしまう。

そこからどんどん二人の距離は縮まっていく。
恋愛に発展するのかと思えば、そうでもない。
互いの抱えている病気を、互いになんとかフォローしようと本気で考える。
そんな重いテーマにも関わらず、二人のやりとりはどこかコミカルで、漫才かコントでも観ているような気持ちになる。

二人を見ていると思うのだ。
人って、実は「自分」のことは何にも見えていないんだな、と。
良い所がたくさんあるのに気づかない。
よく言われることだけれど、長所と短所は表裏一体。片方から見れば短所でも、別の側から見れば長所にもなる。
そんなことに気づかずに、人は自分で自分自身を追い詰めてゆく。

二人はお互いの病気を本気でフォローしようとすることで、これまで見えていなかったものが見えるようになる。
それと並行して二人の関係も良くなり、仕事にも意欲的になっていく。

読み始めた時は真っ暗だったのに、読み終わる頃には一筋の光が見える。
その光はとてもあたたかくて、希望に満ちているのだ。

瀬尾まいこさんの、こういう物語をずっと読みたかった。