月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

酔っ払いには寛大だ

2018-08-23 | 生活
昨夜は10日ぶりの店出勤だった。
スタッフのAちゃんが友達を2人連れて寄ってくれた。
Aちゃんはひとまわり年下の可愛い女性。8月の最初には2人で飲みに行ったくらい仲良くなった。
私とは全く違う世界で生きてきて、私の百倍も要領がよく男ウケもするけれど、裏表がないから好きだ。
腹黒いところがあっても、「私はこういう腹黒いこともできるんですよ」と宣言できるようなタイプだから信用できる。
敵にすると怖いけど、味方にすると心強い。
自分と生きる世界が違っても、性格が似ていなくても、私は「わかりやすい人」が好きだ。
逆に、口先では良いことばかり言ったり人を褒めたりして、物腰は柔らかくていかにも「ザ・善人!」みたいな顔しているのに、腹の中では何を考えているかわからなくて、本心も絶対に言わないような人は苦手だ。
相手の裏を読むなんて高等テクニックを私が使えるはずもないのだから。

Aちゃんが店に入ってきた時、私は夜の世界のいろんなことに巻き込まれて人間不信に陥っていたので、彼女にもどう接していいかわからなかった。
また信じたら騙されるのではないかと疑心暗鬼になっていた。
でも、彼女のほうから私に心を開いてくれたし、会った時の社交辞令でなく、日を置いてから改めて「飲みに行きましょう」と連絡をくれた。
実際に2人で飲みに行くと楽しくて、いろんな話をしてケラケラたくさん笑って、二人で1升くらい日本酒を飲んだ。
「さすがに飲みすぎたよね」と次に会った時にその話でまた笑える。

話せば話すほど自分とは違う世界の人だとわかったし、今でも彼女は毎回知り合いを店に呼んですごい売上を出しているのだが、「本気出したら1日で10万くらい売上出せますよ」と言うくらい交友関係も広い。(お金持ちの男性の知り合いが多数いて、その人たちを呼べる)
こんな人が私みたいな凡人と一緒に飲んでて楽しいのかな・・・とも思ったが、本当に楽しそうにしてくれる。
私はお金を出すわけではないので、それ目的で付き合ってくれているとも思えないし、本心なんだろうと思う。

私が店に置いている雑誌を見て「かおりさんはカッコいい!こんなの書けるなんて!私のまわりにこんな人いない!」と言ってくれる。
記事を読むわけでもなく、ただクレジットの私の名前を探しては「名前が入ってる!すごい!」と無邪気に喜んでくれる。
でも、何でもかんでも褒め称えるのではなく、私が店でいいように扱われていることに関しては、「バカだなー、この人・・・」と思っていることは伝わってくる。
「もーーー!かおりさんはいい人すぎるんですよーーー」と何度も言う。
その「いい人」がいわゆる「尊敬すべき人徳のある人」という意味で使っているわけではないことは、さすがに私でもわかる。
「バカだなー、もっと適当にやればいいのに・・・」というニュアンスの「いい人」。
でも、そのニュアンスが伝わるから、彼女を信用できる。

昨夜は男性二人を連れて来てくれて、高いお酒ばかり注文してくれた。
男性が「尊敬する先輩が働いている店って、連れて来られた」と言うのを聞いて、なんだかありがたかった。
かなり酔っ払っていてご機嫌で、お酒を飲むペースがやたら早い。
他にお客はいなかったし、もう看板もしまったのでそろそろ帰らせようと思っていたら、電話しに行くと言って出て行ったきり帰ってこない。
しばらくして、ドアの向こうでゴトンと音が聞こえた。
三人で開けてみると、彼女が倒れていた。
これはヤバイと思い、畳のスペースに運ぼうとしたが、もう完全に自分の足では立てない状態なので全体重がかかってくる。
三人がかりで「足持って」「頭持って」と分担して運び上げた。
「死体ってこれくらい重くなるんやろうな」「そう考えたら殺人した後によく運べるよな」なんて物騒な会話。

急性アルコール中毒ではないかと心配したが、幸せそうな顔でぐーぐー眠っている。
これは起きないなぁと思ったので、二人には帰ってもらった。
店じまいをしてからなんとか起こしてタクシーに乗せるつもりだったのだが、洗い物をしていたら、突然あの音が・・・
寝ながら床にゲロを吐きまくっていた。それもとんでもない量だ。盛大だ。
彼女の長い髪の毛も服もゲロまみれ・・・。

オーマイガーッ!!ってこういう時に出るんやな、と思った。
思わず天を仰いだよ・・・

それから格闘すること1時間。
トイレットペーパーや雑巾で拭き、ようやくきれいになったかと思ったら、また吐かれ・・・
気づけば12時。
JRの終電がまだあったので、タクシーで京都まで行けばまだ帰れると思ったが、このまま置いて帰るのも心配だ。
話しかけてみると、なんとか受け答えできるようにまでは回復していたので、お水とカギを置いて帰って来た。

夫も仕事が遅くなって終電だったので、駅から一緒に帰ることにした。
私の顔を見て、夫が「どうしたん?!」とびっくりしていた。とんでもなく疲労していたらしい。
人のゲロを1時間片付けるのって、想像以上に疲れるのだ。(それも朝から原稿書いて、店に4時間立った後で・・・)
あったことを話すと「そりゃ、大変やったな・・・」と夫も同情してくれた。

でも、大変だったけど、これっぽちも嫌だとかムカつくとか、損したとか・・・なんかそういう気持ちにはならないねん、と話すと、皆まで言わずとも夫は理解してくれた。
「あー、わかる。俺も若い時に同じようなことしてきたもんな・・・」と。

そう。
自分も若いとき、一体どれほど酔っ払って人に迷惑をかけてきたか。(まあ、今でも記憶はぶっ飛ぶが・・・)
それを思うと、人の介抱もなんだかしみじみとしてしまうのだ。
ああ、きっと誰かがいつかの私をこんなふうに介抱してくれたこともあるんだなと。
自分がしてもらったことを、今他の誰かにお返ししているだけ、と思った。

夫に言うと、彼もうなずく。
私たちは、基本、酔っ払いに優しい。寛大だ。

置いて帰ったことが心配だったが、今朝になって連絡が来た。平謝り。そして「何も覚えてません・笑」と。
「サンダルが片方ないです」とも。(どこ行った?サンダル・・・)

昔も高槻のトイレで酔っ払って倒れていた女の子を拾ったことがあったなぁと思い出す。
結婚してからも、家の近所のバーのそばで雨に打たれて歩いている女の子を助けてあげたこともあった。(これは酔っ払いじゃなかった)
Aちゃんと一緒にいると、なんだか昔のことをよく思い出す。あの頃の自分を見ているような気持ちになることもある。
状況もやっていることも全く違うけど、なんというか、心の不安定さというか、自暴自棄になっているような感覚がふと呼び起こされる。
彼女のことをなんとなく愛しく思うのは、過去の自分と重ねるからなのかもしれない。

まだ上半期終わったところだけど、2018年は刺激的な年になったなと思う。
こんな経験なかなかできない。
いろんな世界を見て、自分の甘さを知って、傷つくこともたくさんあったけど、やっぱり面白かったなと思う。
Aちゃんが入ってくれたことで、最近はまた気持ちも穏やかになり、それなりに店勤務も楽しんでいるし。
どんな経験もすべて私の糧になるはず。無駄なことなんて1つもない。
ようやくそう思えるようになった、今日この頃。
もう大丈夫だ。

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