月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

私も「奇跡の人」になる!

2021-02-12 | 癌について
水曜は午後から検査結果を聞きに病院へ行った。
いつも待ち合いのソファで、夫が緊張のあまりマスク越しに「フーッフーッ」と変な息をもらしているのが聞こえて、なんだかかわいそうになってしまうので、今回は「ついて来なくていいよ」と言ってみた。
でも、「家にいても同じことやから」と言って、結局ついてきた。

なるべく待ち時間を減らそうと、ギリギリに行ってみたら、座って3分くらいで名前を呼ばれた。
(フーッフーッを聞かずに済んだ)

「どうですか?体調は?」と聞かれ、いつものように「どこも痛くないし、元気いっぱいです」と答えると、先生は苦笑。
CTの結果を見せてくれて、「ほぼ変わりなし」と言ってくれた。
その瞬間、ホッとして一気に体中の力が抜けた。

そして、「さあ、これからどうしようか?」と。
私から返ってくる答えがもうわかっているので、「とりあえず」という感じで「単剤のドキタキセルか、併用のAP療法か……」といつものように標準治療の選択肢を挙げた。
すかさず首を振る。もうお決まりのやりとりだ。
「それか、またホルモン療法を……」と言いかけたが、私が畳みかけるように「それは嫌です!トラウマが!」と拒否すると、「そうやんね」と苦笑いした。

11月にホルモン療法を始めようと錠剤を飲んだ日に緊急入院した。
そんな副作用があるはずのない錠剤なので、これが原因であることはほぼないのだが、「万が一、自分には合わないのかも」と思うと、あの痛みを思い出して飲む気にはなれない。

「本来ならもっと大きくなっててもおかしくないし、正直に言えば、大きくなってるんちゃうかなと思ってたんやけど」と先生。
夫も質問してくれて、もう8ヶ月以上も治療していないのに大きくならないということは、進行性の高いガンではなく、性質的には大人しいことは確かだと。
私は再発までに3年以上経っている。そういうガンはどちらかと言えば大人しいらしい。1年くらいで再発する場合は、勢いがあるというか、進行するのもめちゃくちゃ早いとか。
もちろんそう聞いても私だって油断はできなくて、大人しいガンがある日急に一気に進行するということもあるという。
正直、そのあたりはもう医者でもわからないのだと。
抗がん剤によって、小さくなるどころか大人しかったガンが急に暴れん坊になったりすることもあるし、逆に、「もう打つ手がないから」という理由で治療をしていなかった人が5年経っても進行せずに生きているという例もあると話してくれた。

後で夫と振り返ったのだが、これまで先生は「治療をしないと大きくなる」「治療したら消えた例もある」と、治療前提の例ばかり話してくれていたが、初めて「治療しなくても大丈夫だった人」の例を出した。それは、変に私に希望を持たせてはいけないし、医者としては標準治療をすべきだけど、「もしかしたらこの患者もそういう例になるかもしれない」と初めて思ってくれたからなんじゃないだろうか。

その例を聞いて、「私はその人を目指します!ガンと共存してもいいので、治療無しでいきたいです」と言うと、先生も仕方なしという感じでうなずいてくれた。
「わかった。でも、短期間で様子は見させてください。それと、異変があったらすぐに連絡して。絶対に!」と言って、3ヶ月後のCTの予約空きをパソコンで見始めた。
夫も私も「もちろんです。いつもわがままですみません。ありがとうございます。よろしくお願いします」と頭を下げた。

先生は書類を作りながら、自分に言い聞かせるように何度か「よし、信じよう!」「心配せんとこ!」と繰り返した。
その言葉が本当に先生の心から出ているものだとわかって、じんとした。いい先生だ。なんとしても私を治したい、死なせたくないという気持ちが伝わってきた。

最後に何か質問ありますかと言われ、私はずっと気になっていたことを聞いた。
「先生、病院を異動されることってありますか?」と。
大学病院なので、年明けや春のタイミングで医者がよく入れ替わるのだ。それも何の予告もなく、次の予約日に行ってみたら、もう違う先生に代わっていたという感じで、私は5年通っているが、最初の手術の時から考えると、今の先生で4人目なのだ。
「私、絶対に先生がいいので。いつ変わるかとそれだけが心配で・・・」と言うと、夫も横で「家でもそればっかり言ってるんですよ」と。

先生は少し笑って、「実はこの4月から変わる話があったんですけど、いつの間にかなくなってて。だから少なくとも1年はいますよ」と言ってくれた。「あ、何か悪いことでもせん限りは(笑)」と付け足し、私も夫も笑った。
私が「よかった!ずっと先生がいいから、異動の時は教えてください。先生の所についていきます」と言うと、マスク越しでもわかるくらいにこにこして、「そう言ってもらえるのは嬉しい。じゃあ、その時は連絡します」と冗談ぽく言って笑った。

ガン患者と、ガンの結果を話しているとは思えないほど、穏やかな時間だった。笑いと優しさに満ちた空間だった。
よかった。先生に会えて。

診察室を出ると、夫と顔を見合わせ、にっこり。
よかったね、ホッとしたねと言い合った。

次はまた3ヶ月後。ゴールデンウィークが明けてからCT検査。
先生が今度は造影剤なしにしてくれたのも嬉しかった。「サイズ見るだけやから造影剤やめとこか。アレルギー出ても怖いし、できるだけリスクは避けよう」と。

これからまた3ヶ月、「がんが消えていく生活」をしていく。
食事、睡眠、運動、体を温める、笑う、瞑想、水素吸入。
この7つをしっかりやっていけば、消えなくても大きくなることはないはず。
そしたらまた3ヶ月、3ヶ月と治療無しで生き延びて、気づいたらそのうち新薬もできていて、それで一気に治るかもしれない。

最初のガン告知から、ちょうど5年経った。
さあ、どこまでガンと共に生きられるのか、奇跡の人になってみせる。

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2 コメント

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Unknown (west24)
2021-02-12 22:24:01
素晴らしい! さすがアスリート。笑。似た境遇で情報をうまく取捨選択と咀嚼できず悩んでる方へもぜひ、かおりさんの真っ直ぐで力強い言葉で伝わればと思います!
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Unknown (かおり)
2021-02-14 17:11:14
west24さん

ありがとうございます!
アスリート精神で結果出しました。笑

最近はガンの話を、まとめて書かないといけないなと思っています。
同じ境遇の人の力になれればと。少しでも。
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