月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

「はうどぅゆどぅ」の呪縛からの解放

2012-06-26 | 仕事
今日は例のガイジン社長の取材。
昨晩と今朝、ずーっと資料とにらめっこ。

7月にアメリカ村にオープンするので、いずれわかるだろうけれど、北欧の雑貨ブランド。
ヨーロッパ16カ国、150店舗ほど展開している。
そして、アジア圏に進出しようと、手始めに日本へ。
それも珍しく大阪からの出店!

スターバックス、ルイ・ヴィトン、イケアなど、どんな業種でも海外の大手チェーン店が日本に進出するのは、必ず東京からだった。
それがこの企業は大阪からということで、嫌でも流通業界では注目が集まる。

なぜ大阪を選んだのかはもちろん、同じ北欧ブランドとして、イケアやH&Mの日本での成功をどう思っているのかは気になるところ。
また、100均ショップと比較されるほど、価格が安い。
その低価格を実現できるのはなぜなのか。
そして、日本の100均ショップの市場が既に成熟期に達しているといわれている今、なぜこのタイミングで出店を考えたのか。
まあ、いろいろと聞きたいことはあり、質問のシミュレーションはバッチリだった。

ただ・・・
気になるのは、そう、「ガイジン」。
通訳付きってことは、日本語は無理ってことだろう。
取材は通訳の人がちゃんとやってくれるとして、最初の挨拶くらいは英語でしないと悪いだろう・・・

そう思って今朝はずーっと「ビジネス英会話 初対面」で検索して、失礼のない英会話を勉強していた。
「笑顔と相手の目を見て話すことが大切です」
と書いてあるので、アホみたいに鏡の前で笑顔を作って、「はうどぅゆどぅ」「まいねーむいず・・・」というのを繰り返していた

あかん!!
自意識過剰やから、ガイジン社長よりも同じ日本人の通訳の人に笑われるのが恥ずかしい・・・
やっぱり英語、必要なんちゃうか?と生まれて初めて真剣に思った。

余談になるが、うちの夫、今年から英会話に通っている。
最初は頑張っていたのだが、最近少しおろそかになっていた。
・・・と思っていたら、自分でも気づいていたらしく、選択授業切り替えに合わせて、心を入れ替える決意をした様子。
「自分を甘えさせないために、今の実力よりちょっと上の授業を選択した!」とのこと。
気合入ってる~

ただ、塾で何人も自分の実力以上のクラスに行きたがって、仕方なく入れたら結局成績が落ちていく・・・というパターンを何人も見ていた私としては、やや心配。
「かおり、お願いがあるねん」と真剣に夫が言ってきたので何かと思えば、
「これから英語の予習に付き合って」とのこと。

最初は「もう英語見たくないねん。ほんまにイヤやねん。英語キライやねん。申し訳ないけど、勝手に一人でやって!」
と言っていたのだが、何気にテキストを見せてもらったら、ちょっとした問題集みたいになっている。
長文があって、それについての設問がある形式。

久しぶりにそういうのを見たら、急に「私、まだどれくらいできるんだろう?」と残り少ない能力を確かめたくなって、読んで問題を解いてみた。
そしたら、予想以上にわかる
そのうえ、久しぶりに使っていなかった部分の脳みそをフル回転して、ちょっと気持ちよかったり・・・(笑)

夫と答え合わせもして、予習を完璧にして、夫は英会話にでかけていった。
「どうやった?」と終わってから聞いたら、
「うん・・・なんか、テキストが間違ってた」とのこと。

なんと、テキストの配布が間違っていたらしく、当日は予習したテキストは使わず、別のプリントを渡されたらしい
なんやねんな・・・

という余談。

夫はえらいなー、がんばるなー、私は絶対英語なんかやらんぞーと思って生きてきたが、今回の取材のようなことがあるのだと初めて知り、「あー、英語~」と思った。

しかし、どうなるものでもなく、「はうどぅゆどぅ」を練習して、取材へと向かった。

いろいろと資料を見たところ、社長はどうやら日本好きらしい。
「髪の毛をくくるか、おろすか」を悩んでいたのだが、日本好きならストレートの黒髪女性に優しいかもしれない・・・というなんとも安易な考えが浮かび、髪をおろすことに。
さらに、必死に伸ばしてきれいにしていった。

最寄り駅に降りたのは、取材開始時刻の20分前。
地図で確かめると(グーグルさん、ありがとう!)徒歩6分。
だけど、私は超方向オンチなので、初めて行く場所は、いつも実際にかかる時間プラス15分くらいは見ておく。
グーグルさん地図で見ると、1回曲がるだけなので道も簡単。
これは余裕だなぁと思って、駅を降り、歩き出した。
そして、10分前にビルに着いた。

ちょっと早いけど、いいか・・・と思って入ろうとしたら、ビルの入り口がない
駐車場の入口になっていて、徒歩の人は入れない。
慌てて探すと、ビルの横に細い道があり、奥に入れるようになっている。
おそるおそるそこを歩いていくと、部屋の番号を入れて呼び出すとあけてもらえるシステムになっていた。
ほっとして、番号を入れて呼び出しボタンを押したら、

びびーーーーーー

明らかになんだか違う音が・・・

焦って何度かやってみたが、同じこと。
なんか間違ってるかも・・・と思い、オフィスに電話を入れた。
状況を話すと、「えーと、たぶんビルの裏に来ていると思うんです。表にまわってもらうと、正面玄関がありますんで」と言われた

時計を見ると、もう3分前!!
慌てて走ってぐるりとまわり、ビルの正面玄関へ!!
エレベーターに乗り込んだときにはもう汗だくだった。

オフィスに入ると、通訳の女性が対応してくれて、席についた。
でも、汗ぼとぼと(私は異常な汗かき!!)

「すいません、遅れてしまって!!」と謝ると、
「いいえ、ビルがわかりにくいので、こちらこそすみません」と言ってくださった。

そんな会話をしながらも、汗ぼとぼと。
ハンカチで拭くけれども、本当に、信じられないくらいの汗なのだ
「いやー、すみません、走ってきたので・・・」と言うが、あきらかに相手は引いている。

そこへ、ガイジン社長登場。
名刺を持って立ち上がり、挨拶へと向かう。
ほれ、今朝20回くらい繰り返した、「はうどぅゆどぅ」を試すときが来たで。

意気込んで汗ぼとぼとのまま社長の前に立ったら、

「○○デス。ヨロシクオネガシマス」

・・・

「は、はい。○○です。よろしくお願いします」

フツーに日本語しゃべって名刺交換終了・・・。
私のあの猛特訓は?!

そうして、失意と動揺のままに取材が始まったわけだが、まー、私の新陳代謝をなめるんじゃないよ。
一度運動して熱く燃え始めた体は簡単には冷めない。
座って話し始めても、後から後から、滝のように汗が吹き出て、ハンカチでずーっとぬぐっていた。

すると、ガイジン社長が通訳に何か言った。
通訳が答えた。
社長がホッとしたような表情をした後、笑った。

不思議なもので、英会話がまったくダメな私もこういうことはわかるのだ。
訳してみよう。

社長「ちょっと待って。どうしてこの人はこんなに汗ぼとぼとなんだい?体調が悪いんじゃないのかい?」
通訳「あー、社長、そうじゃないんですよ。彼女はビルを間違えて慌てて走ってきたのでまだ汗がひかないんです」
社長「走ってきた?あー、そうなのかい。それならいいよ、安心したよ」

ほとんど英語はわからなかったけれど、「ランニング」という単語だけははっきりと聞き取れたし、身振りなどでこのようなことを話していることはわかった。

「すみません、汗だくだくで!走ってきたので!!ランニング!!」
私も唯一わかる「ランニング」という英語だけをまじえて、変な言い訳をして謝った。

すると、社長が立ち上がり、何か持ってきた。

・・・ティッシュ!!

「どうぞ、汗をこれで拭いてね」(←たぶん)

「おー、ありがと。サンキュー、サンキュー。お気を遣わずに」

と、ルー大柴的な返事で返しながらも、せっかくのご好意なので、ティッシュで汗を拭いた。

・・・あかん!!
何が「黒髪ストレートの日本女性に弱いかな?」やねん・・・
既に髪を振り乱して、汗で化粧も落ち、ティッシュで流れる汗をぬぐうだけの女である・・・

穴があったら入りたいって、こういう時に思うんだろうなー、なんて、ぼんやりと思いながらも、いやいや、仕事やし穴に入ってる場合でもない!と気合を入れなおして、取材を始めた。

その後、ぴったり2時間。

取材は本当によかった。いい取材ができた。話も面白かった。
ちなみに、汗も15分くらいでやっとひいた。

社長も素敵な人だったし、通訳の女性がまた才色兼備で。
これまで「日本に住んでいるんだから、英語なんて必要ない!!」と言い続けてきたが(陸で暮らすんだから泳げる必要もない!も言い続けている)、英語しゃべれるって、めっちゃカッコイイ~

あー、そうかと今日は思った。
子供の頃からこうやって、英語ペラペラの人を見せればいいんだ。
そうすれば、「カッコイイ~」から始まって「ああなりたい」「なれるように頑張ろう」と自然に英語を勉強するはずだ。
考えてみれば、自分の周りでこんなふうに英語をしゃべる人を見たことがなかったんだよなぁ。

めっちゃカッコイイ!!

通訳の女性はそのうえ美人で、優しくて。ほんと、素敵だった。
取材が終わってからも「すみません、汗ぼとぼとで」と言うと(←まだ言ってる)、「そんなの全然構いませんよ。それより、お一人で大変ですねぇ」と気遣ってくれた。
めっちゃいい人。

夢中になって取材して、オフィスを出たら、右腕がしびれていることに気づいた。
2時間、メモとりっぱなしだったからなぁ。
(私はテープ起こしがキライなので、基本的にメモをとるタイプのライターだ)
でも、なんかわからんけど、充実感
ほんま、楽しかった。

思えばここ数週間、この取材の内容じゃなく、最初の挨拶「はうどぅゆどぅ」のために心を悩ませて生きてきた
それがようやく終わった!という思いが「汗ぼとぼと」の記憶にも勝るほど強く、帰りはかなりの開放感を味わっていた。

あー、ビール飲みたい!!

その一心で梅田で電車を降り、ふらふらと地下街を歩いていたら、
おおー!「前菜5種盛り+ビールセット 980円」の文字が・・・!!

ふらふらとその文字につられて店に入ると、そこは去年、床床さんと来たお店だった。
カウンターに座って、「ビールセット」を注文。

ビールを飲めたらよかったんだけど、なんかいっぱい付いてきた



一人、ビールを手に持ち、心の中で、乾杯!!

・・・うまい。

いいよなぁ、仕事の後のビールは。
ずーっと「はうどぅゆどぅ」のことで悩み続けてきたので、開放感は格別だった。
ひと仕事終えた後のビールは本当にうまい。
この1杯のために仕事をしていると言っても過言ではない。

店の中には同じく早々と仕事を終えたおっちゃん一人。(16時半)
いいねぇ、こういう空間が大好き。
結局のところ、店で一人で飲むのが好きなんだなぁ、私は。

取材がとてもよかったので、もう汗ぼとぼとの一件など気にならなかった。
いい記事が書けそうだ。

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6 コメント

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Unknown (床床。)
2012-06-27 08:12:02
朝っぱらから

ランニングU+203Cと
ルー大柴的のところで

独り声を出して笑い、
面白いから
そこのくだりをまた読んで
けたけた笑わせてもらったよ。

わたしも英語話したい。
ずっと思ってるけど踏み出していないのよね。

あとね、社長と通訳の会話を再現したところで、
社長の口調が~だい?~かい?という語尾は、ガイジンならではだよね(笑)

朝からオモローでした。
ありがとう(笑)

グッジョブ!
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Unknown (かおり)
2012-06-27 13:22:54
床床。さん

笑いを提供できてよかったです。
床床さんの好きな「ダメオモロー」ネタでした(笑)

英語はほんま必要ないときはまったく関心ないのに、
海外行ったり外国人と話したりしたときだけ
急に焦って「勉強しとけばよかった!」って思うのよね・・・

「どうしたんだい?」「~かい?」は翻訳定番!

こちらこそ、ありがとう。
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汗かき (とし)
2012-06-28 23:35:41
最後のビールまで、めっちゃ臨場感ありました。
汗かき出して、焦ってものが言えず、また汗かいて、てんぱった自分を相手がどう思ってるかを気にして、という悪循環に入ることあるわな。
お疲れさんでした。

そんな素晴らしい通訳さんいるのね。お会いしてみたいわ。。
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汗だく (かおり)
2012-06-29 11:35:29
としくん

いやはや。
異常な汗っかきというのも大変です。
でも、結果的にはいい取材できたのでよかったです。

そうか、英語、としくんに聞けばよかったなー。
旅行だったらとりあえず伝わればいいけど、
ビジネスは「失礼があってはいけない」と思うので、挨拶すらよくわからなくて・・・

例えば「お会いできてうれしい」でも、
「Nice to meet you.」はビジネスでは気さくすぎるのかなとか、
「I'm pleased to ~」を使えばいいのかなとか。
いざ、その場に立たされると、まったくビジネス英会話の基本を知らない自分がいたのでした・・・。

通訳さん、素敵な人やったよ。
私はもう英語は必要ないと思っていたけど、いやいや・・・人生何があるかわかりませんね。
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Unknown (とし)
2012-06-30 13:06:41
ビジネスといっても人対人やからその場を結局どう取り繕うの?ってことなんやろうね。
挨拶代わりに、フィンランド語で「こんにちは」を言っておくとか、僕だったらやりそう。
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Unknown (かおり)
2012-06-30 13:44:29
なるほど。
そういうときテンパるからな~私は。
(あまりアドリブがきかない)

相手の母国語で挨拶ね。
思いつかなかったな。
次回そういう機会があればそういうのにもチャレンジしてみよう。

ちなみに社長はデンマークの人です。
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