月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

精神的なもの?

2020-11-05 | 癌について
昨日はCT検査だった。
検査は3ヶ月ぶりで、治療をやめて放置を決めてからは5ヶ月経つ。
5日ほど前から下腹部が痛み、夜は夢にうなされ、情緒不安定になり、ほとんど仕事も手につかなくなった。
こんなにお腹が痛いなんて、何かあるに違いない。大腸にも転移して、それが痛みを引き起こしているのかもしれない・・・。そんな妄想に苦しめられる。
夫は「精神的なものだから」と言うが、これが精神的なものなんだったら、私はなんて繊細な人間なんだろうかと思う。
鬱々として何も手につかない。
気分転換にテレビでお笑いを観ても集中できない。
文章も書けない。何度もブログの画面に向かったが、書いては消し、書いては「下書き」に保存して公開せず、また書き直し。
最終的には書くことをあきらめた。
今度は後悔が始まる。
もっと何かできたんじゃないのか。お酒を飲みすぎた日があった。甘いものやお肉を食べてしまったこともあった。夜更かししたこともあった。ウォーキングもさぼった。それが全部体に跳ね返ってきているんじゃないのか。
やってきたことよりも、足りなかったことばかりに気持ちが行ってしまう。

何も手につかないと言っても、締切はやってくる。
ギリギリになって慌てて集中力を発揮して書いて、書き終わった後に気が付いた。
「あれ?お腹痛くない!」
何かに集中していたら痛みが消えていた。
夫に告げると「よかったやん!やっぱり精神的なものなんやって!」と笑って言う。そうなのか?

当日、まずはCTの前の採血に並ぶ。
ふと、この1年半くらいの期間で、2ヶ月もの間、採血や点滴の針を1回も刺さずに過ごしたのは初めてだなと気づく。
最後に点滴したのが9月11日。それ以来だ。
昨年の7月以降、毎月5~6回はどこかに針を刺していた。たくさん血を採ったし、たくさん点滴した。使える血管も減った。
右腕のほうが採血しやすいけれど、右腕は造影剤を入れるのに使うから、採血を左でやった。
案の定、看護師さんが血管を探すのに困って、1回失敗。こういう痛みも久しぶりだ。
2回目で成功し、CTの部屋の前で順番を待った。どんどんお腹が痛くなる。焦る。絶対写ったらダメ!と自分の細胞に言い聞かせる。
全細胞でクリアするんだ!

CTはあっという間に終了。結果は来週の水曜日。
絶食していたから病院を出るとお腹がグーと鳴った。
好きな洋食屋へ行き、ふわとろオムライスを食べた。オムライスなんていつぶりだろう。少なくとも今年初めてだ。とろとろの卵で一気に幸せになった。

夜は夫が「頑張ったからお疲れ様会」と言ってくれて、外食。
遠出はしたくなかったので、友達に教えてもらっていた上牧にある居酒屋さんへ行ってみた。
お造り盛り合わせ、のどぐろの塩焼き、白海老の天ぷら、生麩田楽、紅生姜の天ぷらを注文。
どれも美味しくてびっくりした。魚が美味しいという評判だったが、確かにレベルが高い。鯛のお造りが絶品だった。新鮮というより食べごろを見計らって熟成させていると思う。旨味の乗り方が尋常じゃなかった。
のどぐろは小さめだけど、焼き方が上手なのか身がふっくら。塩加減もバッチリだった。いい塩梅。
日本酒の種類も多く、料理に合うものが並んでいる。
香り抑えめでスッキリ飲める辛口や、甘みと酸味のバランスが良い食中酒ばかり。決して酒が主張しすぎない。料理を引き立てる。
日本酒のラインナップを見ると、ちゃんとこだわって選んでいるのか、流行のものや酒屋に言われるがまま置いているのかがよくわかる。この店は前者で好感が持てた。
「酔鯨」「伯楽星」を飲んだ。夫はビールの後、「立山」と「鳳凰美田」。最後に「楯野川」を二人で分けた。

美味しい、美味しいと飲み食いしていてまた気づく。
お腹痛くない・・・

そして、一夜明けて今朝。
もう痛くない。
やっぱり精神的なものだったのかな。そうだといい。

普通の人にとったら何ということもない「腹痛」も、私にとっては命取り。文字通り「命」を「取られる」かもしれない。
忘れているようで、忘れていない。いつもギリギリの崖っぷちで生きているような気がしている。

人間、そんなに強くは生きられないものだと知る。