月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

造り手の想い

2019-05-16 | 仕事
一気にいろんな案件が動き出し、慌ただしい日々を送っている。
新規のパンフレットとホームページ、T調理師専門学校のサイトリニューアル、日本酒の裏ラベル、単発で採用向けの企業取材、相変わらずの酒蔵取材と原稿・・・

一昨日は、九州から酒蔵の社長がやってきて、裏ラベルの打ち合わせ&取材をした。
梅田のカフェで、みっちり3時間。
社長が仮で作ったコピーを1アイテムずつ見直しながら、その「想い」を聞いていく。それを13アイテム分。
バラバラだった内容の方向性を統一し、NGワードなども確認した。
社長の想いは熱く、方向性もご自身の中では定まっていたので、取材はやりやすかった。

難しいのは、あまり広告っぽい文章にならないようにするということ。
これは宣伝のための「商品コピー」ではないのだと理解できたことは、私の中での収穫だった。
あくまでも飲み手に対する「想い」を伝えるものでなければならない。宣伝ではない。大げさに言えば、ラブレターのようなものだと思う。

私が1アイテム分、社長の仮文章をプロっぽく修正したものを見てもらった。
正直、心のどこかで「さすがプロですね!自分の素人っぽい文章がこんなふうになるなんて!」のような賛辞を期待していたと思う。恥ずかしいことに・・・。
でも、社長は顔を曇らせた。
「断定表現は使わないでほしい」
「季節感は入れないでほしい」
いくつか注意された。

一方、私からのさまざまな提案や指摘に対しては、「おっしゃる通りです」「そこをお任せしたい」「話しているうちに自分でもまとまってきました」と、肯定&感謝もあった。
私自身も社長の想いや方向性を理解できたし、社長も私にお願いしてよかったと改めて思ってくれたようだった。

理想的な仕事だなと思う。
こうやって、お客様と直接話をして、時間をかけてしっかりと相手の想いを理解しながら、「二人で」ブラッシュアップしていく。
お互いが「これはいいものができる」と確信できた時間だった。

令和元年のお酒の裏ラベルが、13アイテムすべて生まれ変わる。
飲食店でそのお酒を注がれたお客が、裏ラベルを読みながら味わう姿を想像すると興奮する。
精米歩合が何%だとか、日本酒度がプラス何度だとか、そんな数字で表す「スペック」ではなく、造り手の「想い」が飲み手に届くのだ。私の文章を通して。
かんがえるとぞくぞくするなぁ、本当に。

打ち合わせが終わった後、梅田に最近できた立ち飲みの日本酒のお店へご案内した。
軽く2、3杯飲んで帰るつもりだった。
それが、社長とお話しするのが楽しくて、どんどん杯を重ね・・・
気づいたら5時間近く飲んでいた。それも立ち飲みで!!
今日、社長と合計8時間も話していたんだな、と思う。おかげでいろんなことがわかった。飲みにけーしょん、ほんま大事。

社長は心斎橋にホテルをとっていると言い、御堂筋線のところまでお見送りして、私も家路についた。
九州から来てくださったのだから、私がお支払いしようかと思ったら、社長が全額支払ってくださった。手土産までいただいていたので恐縮する。
でも、それくらい頼りにしてもらっているのだと、そう思うことにした。良い仕事をして返せばいい。それでいい。

この仕事は、もしかしたら、私が次のステージへ向かうための第一歩になるかもしれない、と思った。
「想いを伝えるのは、文章ではなく、私自身だ」
そのことをしっかりと噛みしめる。

すべては積み重ね。すべては繋がっている。
だから、一つも無駄なことなんてないんだ。