月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

鳥取・民藝をめぐる旅

2017-02-05 | 
棟方志功展の後、原田マハさんの『リーチ先生』を読んで以来、私の「民藝」熱は上昇する一方で。

2月4日・5日、鳥取の民藝をめぐる旅を企画して、夫と出かけた。
温泉+カニもお目当て。

キャンプばっかりだったので、久しぶりに電車での旅行に2人ともテンションが上がる。
特急スーパーはくとで、まずは大阪から倉吉へ。
ここは16、7年ほど前に某スポーツ新聞の観光欄を担当していたとき、プレスツアーで行ったことがあった。
白壁土蔵群が残っていて、雑貨やカフェなどもでき、観光地化されている。
器を扱っている店もあるというので行ってみたが、それは残念ながら心惹かれるものはなかった。



結局、ワイン蔵へ。


古い土蔵の中は、天井の梁がすごかった。


酒屋があったり。


絣織りを実演していたり。


しかし、正直に言うと、あまり魅力的なものはなく、1時間半~2時間程度で十分に見てまわれる。
民間企業を入れて上手にプロデュースしたら、飛騨高山のように観光客(特に外国人)をもっと呼べるのになぁと夫とプレゼンしあった。
観光バスが時折やってきて、その時は確かに人も町に増えるのだが、「もう一度行きたい」という魅力には欠ける。

で、結局、地ビール(笑)


「土蔵蕎麦」というお店でそばを食べた。
私は出雲そばとか、山陰地方のそばが好きだ。(信州そばはあまり好きじゃない)
これには満足。


バスや電車の本数も少ないので、早々に引き上げ、倉吉から岩美へ。
今回は、岩井温泉にある「岩井屋」さんで泊まった。
ここは山陰地方で最も古くからある温泉で、1200年の歴史がある。
源泉掛け流しの良質な温泉で、岩井屋さんのお風呂の特徴は、立って入ったときに胸の下くらいまである深さ!
お宿の雰囲気もとてもよい。





まあ、温泉街自体は、こんなさびれた感じではあるが・・・


温泉は期待以上!
こんな深い温泉は初めてだったが、とにかく気持ちがいい。
お湯がふんだんにあって、体がすっぽりと包まれる感じがこれほど気持ちいいとは・・・。
ちょっと感動的だった。
小さな宿なので、そんなに込み合うこともなく、1人、2人が入れ替わるくらい。
温泉は満喫した。

そして、楽しみな食事!
この前菜や但馬牛のしゃぶしゃぶはとても美味しかったので、「カニ刺し」と「焼きガニ」にも期待が膨らむ。




出た!カニ刺し!


この思わず「おーーー!」っと声が出てしまうような盛り付け!
しかし、ひとくち食べて、がっくりした。
まったくカニの甘味がないのだ。
あー・・・このレベルのカニか・・・と、いきなり意気消沈。

焼きガニはこの量を2人で食べる。
仲居さんが火鉢を持ってきて、炭で焼いてくれる。


焼き立てを食べると、カニ刺しよりは甘味があったが、こちらのペースなどおかまいなしにどんどん焼いてくるので、冷めてパサパサになってしまった。
さらに、カニに時間がかかるのがわかっているくせに、煮物や天ぷらまで運んでこられてテーブルに並べられ、「これだから温泉旅館はイヤなんだよ!!」と叫びたいほどむかついた。
この宿の従業員の人たちはみんな本当に優しくて、接客も素晴らしかったのだけど、この宿のシステムだけはどうにかならんのか。
手の込んだお料理を作ってくれているのに、台無しだ。もったいない。
天ぷらに手を伸ばしたときには、もう冷め切って衣が固くなっていて、私は食べられずに残した。
なんともがっかり・・・。

基本的に、よほど料理に自信があると書いているような宿ではなければ、温泉旅館の料理には期待をしていない。
でも、今回は提供の仕方ひとつで、もう少し美味しくなったのにと思って、それがとても残念だった。
翌朝の朝食は美味しかった。特にのどぐろの焼き物が最高だった。のどぐろってやっぱり美味しい魚だ。

気を取り直して、翌朝は歩いて「クラフト館 岩井窯」へ。
今回の旅のメインの1つ。(ここに行きたくて、このそばに宿を取ったのだ)

岩井窯はバーナード・リーチに影響を受けた山本教行氏の窯で、作品も買えるし、山本氏のコレクションを展示した「参考館」も見てまわれる。さらに、喫茶室もあって、そこで岩井窯のカップなどでお茶も飲めるのだ。結構広い敷地にある。
作品が並んでいるところはこんな感じ。


いろいろ「いいなぁ」と思うものはあったのだが、家に器がありすぎるので、「同じようなのあるしね」と買うのを躊躇。
それを乗り越えても手にしたいと思うものにはなかなか出会えなかった。
で、2人で相談して、「これは同じようなものがないし、いいよね!」と買ったのがこれ。


6寸サイズの耳つき土鍋。
この土鍋シリーズはここの窯の代表作でもある。
直火OKなので、小鍋にしてもいいし、グラタンなどを焼いてもいい。普通に盛り付け皿として使ってももちろんいい。

裏はこんな感じ。


良いものが買えてよかったと、ほくほくしながら隣接されている「参考館」へ。
山本氏のコレクションが素晴らしかった。


さらに、横の喫茶へ。美味しい自家製お菓子とコーヒーをいただいた。めちゃうまい。


結構満足して、次はまたタクシーと電車を乗り継いで鳥取へ。
駅から徒歩5分の場所にある、鳥取民藝美術館へ行った。


ここは本当にすごい。鳥取の民藝運動のリーダー吉田璋也氏のプロデュース作品が展示してあるのだが、もうそのすべてがたまらなくいいのだ。何時間でも見ていられるほど美しい器の数々。
特に牛ノ戸窯で焼かれた黒と緑のツートンカラーの器が有名だが、これも展示してあるのはとても味わい深くて、惚れ惚れ。
来てよかったと思った。

美術館の隣には「たくみ割烹店」があり牛ノ戸窯などの器でご飯が食べられる。
私はハヤシライス、夫はカレーにした。またこれが旨いんだ・・・


さっき書いたツートンカラーの染め分けカップはこんなの。
これはもちろん展示品とは違って、現代の工業品なのだけど、やっぱり素敵。


で、多少高くてもいいのでぜひ買いたいと思い、隣接してある「たくみ工藝店」へ行ってみたのだが、ただの1つもいいと思えるような器がなかった。
2000円程度で安いのだが、どれもおもちゃみたい。
「美術館見た後は目が肥えすぎて、もうあかんな」と断念。
1万円くらいしてもいいので、もう少し味わい深い作品があればいいのになぁ・・・。
あの美術館の横の店でこのレベルのものしかないというのは、とても残念だった。

ということで、結局、今回の旅で購入したのは、岩井窯の土鍋2つ。
もう少し出会いがあればよかったけど、まあ満足している。

「好いものを少しだけ持つ生活」をしたいとずっと思っていて、器だけはそれが昔から実現できている。
これからもこれは変わらない。
いろんな好いものを見られて、いい旅だったな。
来週は関東へ行く用事があるので、東京の日本民藝館へ行く予定だ。
この熱は当分さめそうもない。