カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ココロ 「センセイ と イショ 2」

2015-06-06 | ナツメ ソウセキ
 9

 ヒトクチ で いう と、 オジ は ワタクシ の ザイサン を ごまかした の です。 コト は ワタクシ が トウキョウ へ でて いる 3 ネン の アイダ に たやすく おこなわれた の です。 スベテ を オジ マカセ に して ヘイキ で いた ワタクシ は、 セケンテキ に いえば ホントウ の バカ でした。 セケンテキ イジョウ の ケンチ から ひょうすれば、 あるいは ジュン なる たっとい オトコ と でも いえましょう か。 ワタクシ は その とき の オノレ を かえりみて、 なぜ もっと ヒト が わるく うまれて こなかった か と おもう と、 ショウジキ-すぎた ジブン が くやしくって たまりません。 しかし また どうか して、 もう イチド ああいう うまれた まま の スガタ に たちかえって いきて みたい と いう ココロモチ も おこる の です。 キオク して ください、 アナタ の しって いる ワタクシ は チリ に よごれた アト の ワタクシ です。 きたなく なった ネンスウ の おおい モノ を センパイ と よぶ ならば、 ワタクシ は たしか に アナタ より センパイ でしょう。
 もし ワタクシ が オジ の キボウドオリ オジ の ムスメ と ケッコン した ならば、 その ケッカ は ブッシツテキ に ワタクシ に とって ユウリ な もの でしたろう か。 これ は かんがえる まで も ない こと と おもいます。 オジ は サクリャク で ムスメ を ワタクシ に おしつけよう と した の です。 コウイテキ に リョウケ の ベンギ を はかる と いう より も、 ずっと げびた リガイシン に かられて、 ケッコン モンダイ を ワタクシ に むけた の です。 ワタクシ は イトコ を あいして いない だけ で、 きらって は いなかった の です が、 アト から かんがえて みる と、 それ を ことわった の が ワタクシ には タショウ の ユカイ に なる と おもいます。 ごまかされる の は どっち に して も おなじ でしょう けれども、 ノセラレカタ から いえば、 イトコ を もらわない ほう が、 ムコウ の オモイドオリ に ならない と いう テン から みて、 すこし は ワタクシ の ガ が とおった こと に なる の です から。 しかし それ は ほとんど モンダイ と する に たりない ササイ な コトガラ です。 ことに カンケイ の ない アナタ に いわせたら、 さぞ ばかげた イジ に みえる でしょう。
 ワタクシ と オジ の アイダ に タ の シンセキ の モノ が はいりました。 その シンセキ の モノ も ワタクシ は まるで シンヨウ して いません でした。 シンヨウ しない ばかり で なく、 むしろ テキシ して いました。 ワタクシ は オジ が ワタクシ を あざむいた と さとる と ともに、 ホカ の モノ も かならず ジブン を あざむく に ちがいない と おもいつめました。 チチ が あれだけ ほめぬいて いた オジ で すら こう だ から、 ホカ の モノ は と いう の が ワタクシ の ロジック でした。
 それでも カレラ は ワタクシ の ため に、 ワタクシ の ショユウ に かかる イッサイ の もの を まとめて くれました。 それ は キンガク に みつもる と、 ワタクシ の ヨキ より はるか に すくない もの でした。 ワタクシ と して は だまって それ を うけとる か、 で なければ オジ を あいてどって オオヤケザタ に する か、 フタツ の ホウホウ しか なかった の です。 ワタクシ は いきどおりました。 また まよいました。 ソショウ に する と ラクチャク まで に ながい ジカン の かかる こと も おそれました。 ワタクシ は シュギョウチュウ の カラダ です から、 ガクセイ と して タイセツ な ジカン を うばわれる の は ヒジョウ の クツウ だ とも かんがえました。 ワタクシ は シアン の ケッカ、 シ に おる チュウガク の キュウユウ に たのんで、 ワタクシ の うけとった もの を、 すべて カネ の カタチ に かえよう と しました。 キュウユウ は よした ほう が トク だ と いって チュウコク して くれました が、 ワタクシ は ききません でした。 ワタクシ は ながく コキョウ を はなれる ケッシン を その とき に おこした の です。 オジ の カオ を みまい と ココロ の ウチ で ちかった の です。
 ワタクシ は クニ を たつ マエ に、 また チチ と ハハ の ハカ へ まいりました。 ワタクシ は それぎり その ハカ を みた こと が ありません。 もう エイキュウ に みる キカイ も こない でしょう。
 ワタクシ の キュウユウ は ワタクシ の コトバドオリ に とりはからって くれました。 もっとも それ は ワタクシ が トウキョウ へ ついて から よほど たった ノチ の こと です。 イナカ で ハタチ など を うろう と したって ヨウイ には うれません し、 いざ と なる と アシモト を みて ふみたおされる オソレ が ある ので、 ワタクシ の うけとった キンガク は、 ジカ に くらべる と よほど すくない もの でした。 ジハク する と、 ワタクシ の ザイサン は ジブン が フトコロ に して イエ を でた ジャッカン の コウサイ と、 アト から この ユウジン に おくって もらった カネ だけ なの です。 オヤ の イサン と して は もとより ヒジョウ に へって いた に ソウイ ありません。 しかも ワタクシ が セッキョクテキ に へらした の で ない から、 なお ココロモチ が わるかった の です。 けれども ガクセイ と して セイカツ する には それ で ジュウブン イジョウ でした。 ジツ を いう と ワタクシ は それ から でる リシ の ハンブン も つかえません でした。 この ヨユウ ある ワタクシ の ガクセイ セイカツ が ワタクシ を おもい も よらない キョウグウ に おとしいれた の です。

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 カネ に フジユウ の ない ワタクシ は、 そうぞうしい ゲシュク を でて、 あたらしく イッコ を かまえて みよう か と いう キ に なった の です。 しかし それ には ショタイ ドウグ を かう メンドウ も あります し、 セワ を して くれる バアサン の ヒツヨウ も おこります し、 その バアサン が また ショウジキ で なければ こまる し、 ウチ を ルス に して も だいじょうぶ な モノ で なければ シンパイ だし、 と いった わけ で、 ちょくらちょいと ジッコウ する こと は おぼつかなく みえた の です。 ある ヒ ワタクシ は まあ ウチ だけ でも さがして みよう か と いう ソゾロゴコロ から、 サンポ-がてら に ホンゴウダイ を ニシ へ おりて コイシカワ の サカ を マッスグ に デンズウイン の ほう へ あがりました。 デンシャ の ツウロ に なって から、 あそこいら の ヨウス が まるで ちがって しまいました が、 その コロ は ヒダリテ が ホウヘイ コウショウ の ドベイ で、 ミギ は ハラ とも オカ とも つかない クウチ に クサ が イチメン に はえて いた もの です。 ワタクシ は その クサ の ナカ に たって、 なにごころなく ムコウ の ガケ を ながめました。 イマ でも わるい ケシキ では ありません が、 その コロ は また ずっと あの ニシガワ の オモムキ が ちがって いました。 みわたす かぎり ミドリ が イチメン に ふかく しげって いる だけ でも、 シンケイ が やすまります。 ワタクシ は ふと ここいら に テキトウ な ウチ は ない だろう か と おもいました。 それで すぐ クサハラ を よこぎって、 ほそい トオリ を キタ の ほう へ すすんで ゆきました。 いまだに いい マチ に なりきれない で、 がたぴし して いる あの ヘン の イエナミ は、 その ジブン の こと です から ずいぶん きたならしい もの でした。 ワタクシ は ロジ を ぬけたり、 ヨコチョウ を まがったり、 ぐるぐる あるきまわりました。 シマイ に ダガシヤ の カミサン に、 ここいら に こぢんまり した カシヤ は ない か と たずねて みました。 カミサン は 「そう です ね」 と いって、 しばらく クビ を かしげて いました が、 「カシヤ は ちょいと……」 と まったく おもいあたらない ふう でした。 ワタクシ は ノゾミ の ない もの と あきらめて かえりかけました。 すると カミサン が また、 「シロウト ゲシュク じゃ いけません か」 と きく の です。 ワタクシ は ちょっと キ が かわりました。 しずか な シロウトヤ に ヒトリ で ゲシュク して いる の は、 かえって ウチ を もつ メンドウ が なくって ケッコウ だろう と かんがえだした の です。 それから その ダガシヤ の ミセ に コシ を かけて、 カミサン に くわしい こと を おしえて もらいました。
 それ は ある グンジン の カゾク、 と いう より も むしろ イゾク、 の すんで いる イエ でした。 シュジン は なんでも ニッシン センソウ の とき か ナニ か に しんだ の だ と カミサン が いいました。 1 ネン ばかり マエ まで は、 イチガヤ の シカン ガッコウ の ソバ とか に すんで いた の だ が、 ウマヤ など が あって、 ヤシキ が ひろすぎる ので、 そこ を うりはらって、 ここ へ ひっこして きた けれども、 ブニン で さむしくって こまる から ソウトウ の ヒト が あったら セワ を して くれ と たのまれて いた の だ そう です。 ワタクシ は カミサン から、 その イエ には ビボウジン と ヒトリムスメ と ゲジョ より ホカ に いない の だ と いう こと を たしかめました。 ワタクシ は カンセイ で しごく よかろう と ココロ の ウチ に おもいました。 けれども そんな カゾク の ウチ に、 ワタクシ の よう な モノ が、 とつぜん いった ところ で、 スジョウ の しれない ショセイ さん と いう メイショウ の モト に、 すぐ キョゼツ され は しまい か と いう ケネン も ありました。 ワタクシ は よそう か とも かんがえました。 しかし ワタクシ は ショセイ と して そんな に みぐるしい ナリ は して いません でした。 それから ダイガク の セイボウ を かぶって いました。 アナタ は わらう でしょう、 ダイガク の セイボウ が どうした ん だ と いって。 けれども その コロ の ダイガクセイ は イマ と ちがって、 だいぶ セケン に シンヨウ の あった もの です。 ワタクシ は その バアイ この シカク な ボウシ に イッシュ の ジシン を みいだした くらい です。 そうして ダガシヤ の カミサン に おそわった とおり、 ショウカイ も なにも なし に その グンジン の イゾク の ウチ を たずねました。
 ワタクシ は ビボウジン に あって ライイ を つげました。 ビボウジン は ワタクシ の ミモト やら ガッコウ やら センモン やら に ついて いろいろ シツモン しました。 そうして これ なら だいじょうぶ だ と いう ところ を どこ か に にぎった の でしょう、 いつでも ひっこして きて さしつかえない と いう アイサツ を ソクザ に あたえて くれました。 ビボウジン は ただしい ヒト でした、 また はっきり した ヒト でした。 ワタクシ は グンジン の サイクン と いう もの は ミンナ こんな もの か と おもって カンプク しました。 カンプク も した が、 おどろき も しました。 この キショウ で どこ が さむしい の だろう と うたがい も しました。

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 ワタクシ は さっそく その イエ へ ひきうつりました。 ワタクシ は サイショ きた とき に ビボウジン と ハナシ を した ザシキ を かりた の です。 そこ は ウチジュウ で いちばん いい ヘヤ でした。 ホンゴウ ヘン に コウトウ ゲシュク と いった フウ の イエ が ぽつぽつ たてられた ジブン の こと です から、 ワタクシ は ショセイ と して センリョウ しうる もっとも いい マ の ヨウス を こころえて いました。 ワタクシ の あたらしく シュジン と なった ヘヤ は、 それら より も ずっと リッパ でした。 うつった トウザ は、 ガクセイ と して の ワタクシ には すぎる くらい に おもわれた の です。
 ヘヤ の ヒロサ は 8 ジョウ でした。 トコ の ヨコ に チガイダナ が あって、 エン と ハンタイ の ガワ には 1 ケン の オシイレ が ついて いました。 マド は ヒトツ も なかった の です が、 そのかわり ミナミムキ の エン に あかるい ヒ が よく さしました。
 ワタクシ は うつった ヒ に、 その ヘヤ の トコ に いけられた ハナ と、 その ヨコ に たてかけられた コト を みました。 どっち も ワタクシ の キ に いりません でした。 ワタクシ は シ や ショ や センチャ を たしなむ チチ の ソバ で そだった ので、 からめいた シュミ を コドモ の うち から もって いました。 その ため でも ありましょう か、 こういう なまめかしい ソウショク を いつのまにか ケイベツ する クセ が ついて いた の です。
 ワタクシ の チチ が ゾンショウチュウ に あつめた ドウグルイ は、 レイ の オジ の ため に めちゃめちゃ に されて しまった の です が、 それでも タショウ は のこって いました。 ワタクシ は クニ を たつ とき それ を チュウガク の キュウユウ に あずかって もらいました。 それから その ウチ で おもしろそう な もの を 4~5 フク ハダカ に して コウリ の ソコ へ いれて きました。 ワタクシ は うつる や いなや、 それ を とりだして トコ へ かけて たのしむ つもり で いた の です。 ところが イマ いった コト と イケバナ を みた ので、 キュウ に ユウキ が なくなって しまいました。 アト から きいて はじめて この ハナ が ワタクシ に たいする ゴチソウ に いけられた の だ と いう こと を しった とき、 ワタクシ は ココロ の ウチ で クショウ しました。 もっとも コト は マエ から そこ に あった の です から、 これ は オキドコロ が ない ため、 やむ を えず ソノママ に たてかけて あった の でしょう。
 こんな ハナシ を する と、 しぜん その ウラ に わかい オンナ の カゲ が アナタ の アタマ を かすめて とおる でしょう。 うつった ワタクシ にも、 うつらない ハジメ から そういう コウキシン が すでに うごいて いた の です。 こうした ジャキ が ヨビテキ に ワタクシ の シゼン を そこなった ため か、 または ワタクシ が まだ ひとなれなかった ため か、 ワタクシ は はじめて そこ の オジョウサン に あった とき、 へどもど した アイサツ を しました。 そのかわり オジョウサン の ほう でも あかい カオ を しました。
 ワタクシ は それまで ビボウジン の フウサイ や タイド から おして、 この オジョウサン の スベテ を ソウゾウ して いた の です。 しかし その ソウゾウ は オジョウサン に とって あまり ユウリ な もの では ありません でした。 グンジン の サイクン だ から ああ なの だろう、 その サイクン の ムスメ だ から こう だろう と いった ジュンジョ で、 ワタクシ の スイソク は だんだん のびて ゆきました。 ところが その スイソク が、 オジョウサン の カオ を みた シュンカン に、 ことごとく うちけされました。 そうして ワタクシ の アタマ の ナカ へ イマ まで ソウゾウ も およばなかった イセイ の ニオイ が あたらしく はいって きました。 ワタクシ は それから トコ の ショウメン に いけて ある ハナ が いや で なくなりました。 おなじ トコ に たてかけて ある コト も ジャマ に ならなく なりました。
 その ハナ は また キソク ただしく しおれる コロ に なる と いけかえられる の です。 コト も たびたび カギノテ に おれまがった スジカイ の ヘヤ に はこびさられる の です。 ワタクシ は ジブン の イマ で ツクエ の ウエ に ホオヅエ を つきながら、 その コト の ネ を きいて いました。 ワタクシ には その コト が ジョウズ なの か ヘタ なの か よく わからない の です。 けれども あまり こみいった テ を ひかない ところ を みる と、 ジョウズ なの じゃ なかろう と かんがえました。 まあ イケバナ の テイド ぐらい な もの だろう と おもいました。 ハナ なら ワタクシ にも よく わかる の です が、 オジョウサン は けっして うまい ほう では なかった の です。
 それでも オクメン なく イロイロ の ハナ が ワタクシ の トコ を かざって くれました。 もっとも イケカタ は いつ みて も おなじ こと でした。 それから カヘイ も ついぞ かわった ためし が ありません でした。 しかし カタホウ の オンガク に なる と ハナ より も もっと ヘン でした。 ぽつん ぽつん イト を ならす だけ で、 いっこう ニクセイ を きかせない の です。 うたわない の では ありません が、 まるで ナイショバナシ でも する よう に ちいさな コエ しか ださない の です。 しかも しかられる と まったく でなく なる の です。
 ワタクシ は よろこんで この ヘタ な イケバナ を ながめて は、 まずそう な コト の ネ に ミミ を かたむけました。

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 ワタクシ の キブン は クニ を たつ とき すでに エンセイテキ に なって いました。 ヒト は タヨリ に ならない もの だ と いう カンネン が、 その とき ホネ の ナカ まで しみこんで しまった よう に おもわれた の です。 ワタクシ は ワタクシ の テキシ する オジ だの オバ だの、 ソノタ の シンセキ だの を、 あたかも ジンルイ の ダイヒョウシャ の ごとく かんがえだしました。 キシャ へ のって さえ トナリ の モノ の ヨウス を、 それとなく チュウイ しはじめました。 たまに ムコウ から はなしかけられ でも する と、 なお の こと ケイカイ を くわえたく なりました。 ワタクシ の ココロ は チンウツ でした。 ナマリ を のんだ よう に おもくるしく なる こと が ときどき ありました。 それでいて ワタクシ の シンケイ は、 イマ いった ごとく に するどく とがって しまった の です。
 ワタクシ が トウキョウ へ きて ゲシュク を でよう と した の も、 これ が おおきな ゲンイン に なって いる よう に おもわれます。 カネ に フジユウ が なければ こそ、 イッコ を かまえて みる キ にも なった の だ と いえば それまで です が、 モト の とおり の ワタクシ ならば、 たとい フトコロ に ヨユウ が できて も、 このんで そんな メンドウ な マネ は しなかった でしょう。
 ワタクシ は コイシカワ へ ひきうつって から も、 とうぶん この キンチョウ した キブン に クツロギ を あたえる こと が できません でした。 ワタクシ は ジブン で ジブン が はずかしい ほど、 きょときょと シュウイ を みまわして いました。 フシギ にも よく はたらく の は アタマ と メ だけ で、 クチ の ほう は それ と ハンタイ に、 だんだん うごかなく なって きました。 ワタクシ は ウチ の モノ の ヨウス を ネコ の よう に よく カンサツ しながら、 だまって ツクエ の マエ に すわって いました。 ときどき は カレラ に たいして キノドク だ と おもう ほど、 ワタクシ は ユダン の ない チュウイ を カレラ の ウエ に そそいで いた の です。 オレ は モノ を ぬすまない キンチャクキリ みた よう な もの だ、 ワタクシ は こう かんがえて、 ジブン が いや に なる こと さえ あった の です。
 アナタ は さだめて ヘン に おもう でしょう。 その ワタクシ が そこ の オジョウサン を どうして すく ヨユウ を もって いる か。 その オジョウサン の ヘタ な イケバナ を、 どうして うれしがって ながめる ヨユウ が ある か。 おなじく ヘタ な その ヒト の コト を どうして よろこんで きく ヨユウ が ある か。 そう シツモン された とき、 ワタクシ は ただ リョウホウ とも ジジツ で あった の だ から、 ジジツ と して アナタ に おしえて あげる と いう より ホカ に シカタ が ない の です。 カイシャク は アタマ の ある アナタ に まかせる と して、 ワタクシ は ただ イチゴン つけたして おきましょう。 ワタクシ は カネ に たいして ジンルイ を うたぐった けれども、 アイ に たいして は、 まだ ジンルイ を うたがわなかった の です。 だから ヒト から みる と ヘン な もの でも、 また ジブン で かんがえて みて、 ムジュン した もの でも、 ワタクシ の ムネ の ナカ では ヘイキ で リョウリツ して いた の です。
 ワタクシ は ビボウジン の こと を つねに オクサン と いって いました から、 これから ビボウジン と よばず に オクサン と いいます。 オクサン は ワタクシ を しずか な ヒト、 おとなしい オトコ と ひょうしました。 それから ベンキョウカ だ とも ほめて くれました。 けれども ワタクシ の フアン な メツキ や、 きょときょと した ヨウス に ついて は、 ナニゴト も クチ へ だしません でした。 キ が つかなかった の か、 エンリョ して いた の か、 どっち だ か よく わかりません が、 なにしろ そこ には まるで チュウイ を はらって いない らしく みえました。 それ のみ ならず、 ある バアイ に ワタクシ を オウヨウ な カタ だ と いって、 さも ソンケイ した らしい クチ の キキカタ を した こと が あります。 その とき ショウジキ な ワタクシ は すこし カオ を あからめて、 ムコウ の コトバ を ヒテイ しました。 すると オクサン は 「アナタ は ジブン で キ が つかない から、 そう おっしゃる ん です」 と マジメ に セツメイ して くれました。 オクサン は はじめ ワタクシ の よう な ショセイ を ウチ へ おく つもり では なかった らしい の です。 どこ か の ヤクショ へ つとめる ヒト か ナニ か に ザシキ を かす リョウケン で、 キンジョ の モノ に シュウセン を たのんで いた らしい の です。 ホウキュウ が ゆたか で なくって、 やむ を えず シロウトヤ に ゲシュク する くらい の ヒト だ から と いう カンガエ が、 それで マエカタ から オクサン の アタマ の どこ か に はいって いた の でしょう。 オクサン は ジブン の ムネ に えがいた その ソウゾウ の オキャク と ワタクシ と を ヒカク して、 こっち の ほう を オウヨウ だ と いって ほめる の です。 なるほど そんな きりつめた セイカツ を する ヒト に くらべたら、 ワタクシ は キンセン に かけて、 オウヨウ だった かも しれません。 しかし それ は キショウ の モンダイ では ありません から、 ワタクシ の ナイセイカツ に とって ほとんど カンケイ の ない の と イッパン でした。 オクサン は また オンナ だけ に それ を ワタクシ の ゼンタイ に おしひろげて、 おなじ コトバ を オウヨウ しよう と つとめる の です。

 13

 オクサン の この タイド が しぜん ワタクシ の キブン に エイキョウ して きました。 しばらく する うち に、 ワタクシ の メ は モト ほど きょろつかなく なりました。 ジブン の ココロ が ジブン の すわって いる ところ に、 ちゃんと おちついて いる よう な キ にも なれました。 ようするに オクサン ハジメ ウチ の モノ が、 ひがんだ ワタクシ の メ や うたがいぶかい ワタクシ の ヨウス に、 てんから とりあわなかった の が、 ワタクシ に おおきな コウフク を あたえた の でしょう。 ワタクシ の シンケイ は アイテ から てりかえして くる ハンシャ の ない ため に だんだん しずまりました。
 オクサン は ココロエ の ある ヒト でした から、 わざと ワタクシ を そんな ふう に とりあつかって くれた もの とも おもわれます し、 また ジブン で コウゲン する ごとく、 じっさい ワタクシ を オウヨウ だ と カンサツ して いた の かも しれません。 ワタクシ の コセツキカタ は アタマ の ナカ の ゲンショウ で、 それほど ソト へ でなかった よう にも かんがえられます から、 あるいは オクサン の ほう で ごまかされて いた の かも わかりません。
 ワタクシ の ココロ が しずまる と ともに、 ワタクシ は だんだん カゾク の モノ と セッキン して きました。 オクサン とも オジョウサン とも ジョウダン を いう よう に なりました。 チャ を いれた から と いって ムコウ の ヘヤ へ よばれる ヒ も ありました。 また ワタクシ の ほう で カシ を かって きて、 フタリ を こっち へ まねいたり する バン も ありました。 ワタクシ は キュウ に コウサイ の クイキ が ふえた よう に かんじました。 それ が ため に タイセツ な ベンキョウ の ジカン を つぶされる こと も ナンド と なく ありました。 フシギ にも、 その ボウガイ が ワタクシ には いっこう ジャマ に ならなかった の です。 オクサン は もとより ヒマジン でした。 オジョウサン は ガッコウ へ ゆく うえ に、 ハナ だの コト だの を ならって いる ん だ から、 さだめて いそがしかろう と おもう と、 それ が また アンガイ な もの で、 いくらでも ジカン に ヨユウ を もって いる よう に みえました。 それで 3 ニン は カオ さえ みる と イッショ に あつまって、 セケンバナシ を しながら あそんだ の です。
 ワタクシ を よび に くる の は、 たいてい オジョウサン でした。 オジョウサン は エンガワ を チョッカク に まがって、 ワタクシ の ヘヤ の マエ に たつ こと も あります し、 チャノマ を ぬけて、 ツギ の ヘヤ の フスマ の カゲ から スガタ を みせる こと も ありました。 オジョウサン は、 そこ へ きて ちょっと とまります。 それから きっと ワタクシ の ナ を よんで、 「ゴベンキョウ?」 と ききます。 ワタクシ は たいてい むずかしい ショモツ を ツクエ の マエ に あけて、 それ を みつめて いました から、 ハタ で みたら さぞ ベンキョウカ の よう に みえた の でしょう。 しかし ジッサイ を いう と、 それほど ネッシン に ショモツ を ケンキュウ して は いなかった の です。 ページ の ウエ に メ は つけて いながら、 オジョウサン の よび に くる の を まって いる くらい な もの でした。 まって いて こない と、 シカタ が ない から ワタクシ の ほう で たちあがる の です。 そうして ムコウ の ヘヤ の マエ へ いって、 こっち から 「ゴベンキョウ です か」 と きく の です。
 オジョウサン の ヘヤ は チャノマ と つづいた 6 ジョウ でした。 オクサン は その チャノマ に いる こと も ある し、 また オジョウサン の ヘヤ に いる こと も ありました。 つまり この フタツ の ヘヤ は シキリ が あって も、 ない と おなじ こと で、 オヤコ フタリ が いったり きたり して、 ドッチツカズ に センリョウ して いた の です。 ワタクシ が ソト から コエ を かける と、 「おはいんなさい」 と こたえる の は きっと オクサン でした。 オジョウサン は そこ に いて も めった に ヘンジ を した こと が ありません でした。
 ときたま オジョウサン ヒトリ で、 ヨウ が あって ワタクシ の ヘヤ へ はいった ツイデ に、 そこ に すわって はなしこむ よう な バアイ も その うち に でて きました。 そういう とき には、 ワタクシ の ココロ が ミョウ に フアン に おかされて くる の です。 そうして わかい オンナ と ただ サシムカイ で すわって いる の が フアン なの だ と ばかり は おもえません でした。 ワタクシ は なんだか そわそわ しだす の です。 ジブン で ジブン を うらぎる よう な フシゼン な タイド が ワタクシ を くるしめる の です。 しかし アイテ の ほう は かえって ヘイキ でした。 これ が コト を さらう の に コエ さえ ろくに だせなかった あの オンナ かしら と うたがわれる くらい、 はずかしがらない の です。 あまり ながく なる ので、 チャノマ から ハハ に よばれて も、 「はい」 と ヘンジ を する だけ で、 ヨウイ に コシ を あげない こと さえ ありました。 それでいて オジョウサン は けっして コドモ では なかった の です。 ワタクシ の メ には よく それ が わかって いました。 よく わかる よう に ふるまって みせる コンセキ さえ あきらか でした。

 14

 ワタクシ は オジョウサン の たった アト で、 ほっと ヒトイキ する の です。 それ と ドウジ に、 ものたりない よう な また すまない よう な キモチ に なる の です。 ワタクシ は おんならしかった の かも しれません。 イマ の セイネン の アナタガタ から みたら なお そう みえる でしょう。 しかし その コロ の ワタクシタチ は たいてい そんな もの だった の です。
 オクサン は めった に ガイシュツ した こと が ありません でした。 たまに ウチ を ルス に する とき でも、 オジョウサン と ワタクシ を フタリ ぎり のこして ゆく よう な こと は なかった の です。 それ が また グウゼン なの か、 コイ なの か、 ワタクシ には わからない の です。 ワタクシ の クチ から いう の は ヘン です が、 オクサン の ヨウス を よく カンサツ して いる と、 なんだか ジブン の ムスメ と ワタクシ と を セッキン させたがって いる らしく も みえる の です。 それでいて、 ある バアイ には、 ワタクシ に たいして あんに ケイカイ する ところ も ある よう なの です から、 はじめて こんな バアイ に であった ワタクシ は、 ときどき ココロモチ を わるく しました。
 ワタクシ は オクサン の タイド を どっち か に かたづけて もらいたかった の です。 アタマ の ハタラキ から いえば、 それ が あきらか な ムジュン に ちがいなかった から です。 しかし オジ に あざむかれた キオク の まだ あたらしい ワタクシ は、 もう イッポ ふみこんだ ウタガイ を さしはさまず には いられません でした。 ワタクシ は オクサン の この タイド の どっち か が ホントウ で、 どっち か が イツワリ だろう と スイテイ しました。 そうして ハンダン に まよいました。 ただ ハンダン に まよう ばかり で なく、 なんで そんな ミョウ な こと を する か その イミ が ワタクシ には のみこめなかった の です。 ワケ を かんがえだそう と して も、 かんがえだせない ワタクシ は、 ツミ を オンナ と いう イチジ に なすりつけて ガマン した こと も ありました。 ひっきょう オンナ だ から ああ なの だ、 オンナ と いう もの は どうせ グ な もの だ。 ワタクシ の カンガエ は ゆきつまれば いつでも ここ へ おちて きました。
 それほど オンナ を みくびって いた ワタクシ が、 また どうしても オジョウサン を みくびる こと が できなかった の です。 ワタクシ の リクツ は その ヒト の マエ に まったく ヨウ を なさない ほど うごきません でした。 ワタクシ は その ヒト に たいして、 ほとんど シンコウ に ちかい アイ を もって いた の です。 ワタクシ が シュウキョウ だけ に もちいる この コトバ を、 わかい オンナ に オウヨウ する の を みて、 アナタ は ヘン に おもう かも しれません が、 ワタクシ は イマ でも かたく しんじて いる の です。 ホントウ の アイ は シュウキョウシン と そう ちがった もの で ない と いう こと を かたく しんじて いる の です。 ワタクシ は オジョウサン の カオ を みる たび に、 ジブン が うつくしく なる よう な ココロモチ が しました。 オジョウサン の こと を かんがえる と、 けだかい キブン が すぐ ジブン に のりうつって くる よう に おもいました。 もし アイ と いう フカシギ な もの に リョウハジ が あって、 その たかい ハジ には シンセイ な カンジ が はたらいて、 ひくい ハジ には セイヨク が うごいて いる と すれば、 ワタクシ の アイ は たしか に その たかい キョクテン を つらまえた もの です。 ワタクシ は もとより ニンゲン と して ニク を はなれる こと の できない カラダ でした。 けれども オジョウサン を みる ワタクシ の メ や、 オジョウサン を かんがえる ワタクシ の ココロ は、 まったく ニク の ニオイ を おびて いません でした。
 ワタクシ は ハハ に たいして ハンカン を いだく と ともに、 コ に たいして レンアイ の ド を まして いった の です から、 3 ニン の カンケイ は、 ゲシュク した ハジメ より は だんだん フクザツ に なって きました。 もっとも その ヘンカ は ほとんど ナイメンテキ で ソト へは あらわれて こなかった の です。 そのうち ワタクシ は ある ひょっと した キカイ から、 イマ まで オクサン を ゴカイ して いた の では なかろう か と いう キ に なりました。 オクサン の ワタクシ に たいする ムジュン した タイド が、 どっち も イツワリ では ない の だろう と かんがえなおして きた の です。 そのうえ、 それ が タガイチガイ に オクサン の ココロ を シハイ する の で なくって、 いつでも リョウホウ が ドウジ に オクサン の ムネ に ソンザイ して いる の だ と おもう よう に なった の です。 つまり オクサン が できる だけ オジョウサン を ワタクシ に セッキン させよう と して いながら、 ドウジ に ワタクシ に ケイカイ を くわえて いる の は ムジュン の よう だ けれども、 その ケイカイ を くわえる とき に、 カタホウ の タイド を わすれる の でも ひるがえす の でも なんでも なく、 やはり いぜん と して フタリ を セッキン させたがって いた の だ と カンサツ した の です。 ただ ジブン が セイトウ と みとめる テイド イジョウ に、 フタリ が ミッチャク する の を いむ の だ と カイシャク した の です。 オジョウサン に たいして、 ニク の ホウメン から ちかづく ネン の きざさなかった ワタクシ は、 その とき いらぬ シンパイ だ と おもいました。 しかし オクサン を わるく おもう キ は それから なくなりました。

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 ワタクシ は オクサン の タイド を いろいろ ソウゴウ して みて、 ワタクシ が ここ の ウチ で じゅうぶん シンヨウ されて いる こと を たしかめました。 しかも その シンヨウ は ショタイメン の とき から あった の だ と いう ショウコ さえ ハッケン しました。 ヒト を うたぐりはじめた ワタクシ の ムネ には、 この ハッケン が すこし キイ な くらい に ひびいた の です。 ワタクシ は オトコ に くらべる と オンナ の ほう が それだけ チョッカク に とんで いる の だろう と おもいました。 ドウジ に、 オンナ が オトコ の ため に、 だまされる の も ここ に ある の では なかろう か と おもいました。 オクサン を そう カンサツ する ワタクシ が、 オジョウサン に たいして おなじ よう な チョッカク を つよく はたらかせて いた の だ から、 イマ かんがえる と おかしい の です。 ワタクシ は ヒト を しんじない と ココロ に ちかいながら、 ゼッタイ に オジョウサン を しんじて いた の です から。 それでいて、 ワタクシ を しんじて いる オクサン を キイ に おもった の です から。
 ワタクシ は キョウリ の こと に ついて あまり オオク を かたらなかった の です。 ことに コンド の ジケン に ついて は なんにも いわなかった の です。 ワタクシ は それ を ネントウ に うかべて さえ すでに イッシュ の フユカイ を かんじました。 ワタクシ は なるべく オクサン の ほう の ハナシ だけ を きこう と つとめました。 ところが それ では ムコウ が ショウチ しません。 ナニカ に つけて、 ワタクシ の クニモト の ジジョウ を しりたがる の です。 ワタクシ は とうとう なにもかも はなして しまいました。 ワタクシ は ニド と クニ へは かえらない。 かえって も なんにも ない、 ある の は ただ チチ と ハハ の ハカ ばかり だ と つげた とき、 オクサン は たいへん カンドウ した らしい ヨウス を みせました。 オジョウサン は なきました。 ワタクシ は はなして いい こと を した と おもいました。 ワタクシ は うれしかった の です。
 ワタクシ の スベテ を きいた オクサン は、 はたして ジブン の チョッカク が テキチュウ した と いわない ばかり の カオ を しだしました。 それから は ワタクシ を ジブン の ミヨリ に あたる わかい モノ か ナニ か を とりあつかう よう に タイグウ する の です。 ワタクシ は ハラ も たちません でした。 むしろ ユカイ に かんじた くらい です。 ところが その うち に ワタクシ の サイギシン が また おこって きました。
 ワタクシ が オクサン を うたぐりはじめた の は、 ごく ササイ な こと から でした。 しかし その ササイ な こと を かさねて ゆく うち に、 ギワク は だんだん と ネ を はって きます。 ワタクシ は どういう ヒョウシ か ふと オクサン が、 オジ と おなじ よう な イミ で、 オジョウサン を ワタクシ に セッキン させよう と つとめる の では ない か と かんがえだした の です。 すると イマ まで シンセツ に みえた ヒト が、 キュウ に コウカツ な サクリャクカ と して ワタクシ の メ に えいじて きた の です。 ワタクシ は にがにがしい クチビル を かみました。
 オクサン は サイショ から、 ブニン で さむしい から、 キャク を おいて セワ を する の だ と コウゲン して いました。 ワタクシ も それ を ウソ とは おもいません でした。 コンイ に なって いろいろ ウチアケバナシ を きいた アト でも、 そこ に マチガイ は なかった よう に おもわれます。 しかし イッパン の ケイザイ ジョウタイ は たいして ゆたか だ と いう ほど では ありません でした。 リガイ モンダイ から かんがえて みて、 ワタクシ と トクシュ の カンケイ を つける の は、 センポウ に とって けっして ソン では なかった の です。
 ワタクシ は また ケイカイ を くわえました。 けれども ムスメ に たいして マエ いった くらい の つよい アイ を もって いる ワタクシ が、 その ハハ に たいして いくら ケイカイ を くわえたって ナン に なる でしょう。 ワタクシ は ヒトリ で ジブン を チョウショウ しました。 バカ だな と いって、 ジブン を ののしった こと も あります。 しかし それ だけ の ムジュン なら いくら バカ でも ワタクシ は たいした クツウ も かんぜず に すんだ の です。 ワタクシ の ハンモン は、 オクサン と おなじ よう に オジョウサン も サクリャクカ では なかろう か と いう ギモン に あって はじめて おこる の です。 フタリ が ワタクシ の ハイゴ で ウチアワセ を した うえ、 バンジ を やって いる の だろう と おもう と、 ワタクシ は キュウ に くるしくって たまらなく なる の です。 フユカイ なの では ありません、 ゼッタイ ゼツメイ の よう な ゆきつまった ココロモチ に なる の です。 それでいて ワタクシ は、 イッポウ に オジョウサン を かたく しんじて うたがわなかった の です。 だから ワタクシ は シンネン と マヨイ の トチュウ に たって、 すこしも うごく こと が できなく なって しまいました。 ワタクシ には どっち も ソウゾウ で あり、 また どっち も シンジツ で あった の です。

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 ワタクシ は あいかわらず ガッコウ へ シュッセキ して いました。 しかし キョウダン に たつ ヒト の コウギ が、 トオク の ほう で きこえる よう な ココロモチ が しました。 ベンキョウ も その とおり でした。 メ の ナカ へ はいる カツジ は ココロ の ソコ まで しみわたらない うち に ケム の ごとく きえて ゆく の です。 ワタクシ は そのうえ ムクチ に なりました。 それ を 2~3 の トモダチ が ゴカイ して、 メイソウ に ふけって でも いる か の よう に、 タ の トモダチ に つたえました。 ワタクシ は この ゴカイ を とこう とは しません でした。 ツゴウ の いい カメン を ヒト が かして くれた の を、 かえって シアワセ と して よろこびました。 それでも ときどき は キ が すまなかった の でしょう、 ホッサテキ に はしゃぎまわって カレラ を おどろかした こと も あります。
 ワタクシ の ヤド は ヒトデイリ の すくない ウチ でした。 シンルイ も おおく は ない よう でした。 オジョウサン の ガッコウ トモダチ が ときたま あそび に くる こと は ありました が、 きわめて ちいさな コエ で、 いる の だ か いない の だ か わからない よう な ハナシ を して かえって しまう の が ツネ でした。 それ が ワタクシ に たいする エンリョ から だ とは、 いかな ワタクシ にも キ が つきません でした。 ワタクシ の ところ へ たずねて くる モノ は、 たいした ランボウモノ でも ありません でした けれども、 ウチ の ヒト に キガネ を する ほど な オトコ は ヒトリ も なかった の です から。 そんな ところ に なる と、 ゲシュクニン の ワタクシ は アルジ の よう な もの で、 カンジン の オジョウサン が かえって イソウロウ の イチ に いた と おなじ こと です。
 しかし これ は ただ おもいだした ツイデ に かいた だけ で、 じつは どうでも かまわない テン です。 ただ そこ に どうでも よく ない こと が ヒトツ あった の です。 チャノマ か、 さも なければ オジョウサン の ヘヤ で、 とつぜん オトコ の コエ が きこえる の です。 その コエ が また ワタクシ の キャク と ちがって、 すこぶる ひくい の です。 だから ナニ を はなして いる の か まるで わからない の です。 そうして わからなければ わからない ほど、 ワタクシ の シンケイ に イッシュ の コウフン を あたえる の です。 ワタクシ は すわって いて へんに いらいら しだします。 ワタクシ は あれ は シンルイ なの だろう か、 それとも タダ の シリアイ なの だろう か と まず かんがえて みる の です。 それから わかい オトコ だろう か ネンパイ の ヒト だろう か と シアン して みる の です。 すわって いて そんな こと の しれよう はず が ありません。 そう か と いって、 たって いって ショウジ を あけて みる わけ には なお いきません。 ワタクシ の シンケイ は ふるえる と いう より も、 おおきな ハドウ を うって ワタクシ を くるしめます。 ワタクシ は キャク の かえった アト で、 きっと わすれず に その ヒト の ナ を ききました。 オジョウサン や オクサン の ヘンジ は、 また きわめて カンタン でした。 ワタクシ は ものたりない カオ を フタリ に みせながら、 ものたりる まで ツイキュウ する ユウキ を もって いなかった の です。 ケンリ は むろん もって いなかった の でしょう。 ワタクシ は ジブン の ヒンカク を おもんじなければ ならない と いう キョウイク から きた ジソンシン と、 げんに その ジソンシン を ウラギリ して いる ものほしそう な カオツキ と を ドウジ に カレラ の マエ に しめす の です。 カレラ は わらいました。 それ が チョウショウ の イミ で なくって、 コウイ から きた もの か、 また コウイ-らしく みせる つもり なの か、 ワタクシ は ソクザ に カイシャク の ヨチ を みいだしえない ほど オチツキ を うしなって しまう の です。 そうして コト が すんだ アト で、 いつまでも、 バカ に された の だ、 バカ に された ん じゃ なかろう か と、 ナンベン も ココロ の ウチ で くりかえす の です。
 ワタクシ は ジユウ な カラダ でした。 たとい ガッコウ を チュウト で やめよう が、 また どこ へ いって どう くらそう が、 あるいは どこ の ナニモノ と ケッコン しよう が、 ダレ とも ソウダン する ヒツヨウ の ない イチ に たって いました。 ワタクシ は おもいきって オクサン に オジョウサン を もらいうける ハナシ を して みよう か と いう ケッシン を した こと が それまで に ナンド と なく ありました。 けれども その たび ごと に ワタクシ は チュウチョ して、 クチ へは とうとう ださず に しまった の です。 ことわられる の が おそろしい から では ありません。 もし ことわられたら、 ワタクシ の ウンメイ が どう ヘンカ する か わかりません けれども、 そのかわり イマ まで とは ホウガク の ちがった バショ に たって、 あたらしい ヨノナカ を みわたす ベンギ も しょうじて くる の です から、 その くらい の ユウキ は だせば だせた の です。 しかし ワタクシ は おびきよせられる の が いや でした。 ヒト の テ に のる の は ナニ より も ゴウハラ でした。 オジ に だまされた ワタクシ は、 これから サキ どんな こと が あって も、 ヒト には だまされまい と ケッシン した の です。

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