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「ウクライナの永世中立国化」案があった

2024-03-09 09:39:37 | 専守防衛力を有する永世中立国

3月3日付の新聞の4面記事で、ロシアによる侵略が始まって50日後に両国の交渉が行われ、その中でウクライナを永世中立国にし、西側に与せず、兵器を持たないようしようという提案があったと伝えられた。

50日後とはロシアへのの西側制裁に加えて西側諸国のウクライナへの軍事援助が始まり、ロシア軍が苦戦していた頃だから、停戦に向けての交渉が現実味を帯びていた頃である。

プーチンは「大規模軍事演習」の名のもとにウクライナ東部4州を侵略し、それなりの成果は上げていたのだが、西側諸国の相次ぐウクライナ支持にかなり動揺していたのだろう。

それよりも何よりも、プーチンの最大の誤算はロシアの東部4州進撃を受けて「3日もすればゼレンスキ―大統領は国を捨てて亡命するだろう」と高をくくっていたのが、全く狙いが外れたことだ。

ゼレンスキ―は本業は喜劇役者で、たまたま大統領になるという役柄を演じたのだが、本当に選挙で大統領に選ばれてしまったのだった。「瓢箪から駒」とはまさにこのことだろう。

ウクライナの大統領選挙に関して具体的にどう施行されているのかは知らないが、プーチン好みの独裁専制選挙ではないことは確かだろうと思う。

ともかく「自由選挙」によって選出された全く政治経験も行政経験もないド素人が大統領に上り詰めたのだ。プーチンの面白かろうはずがない。

「俺様の息のかからない、全く知らないやつが大統領になるなんて許せぬ」とばかり大規模軍事演習という名のペテンで「東部4州のロシア系人民の安全を守る」という「大義」で軍事侵攻したのであった。

この50日後の和平案(永世中立案)はウクライナ側から拒否されて白紙になったが、ウクライナ側からすれば永世中立になりほぼ丸腰(日本の自衛隊程度)になったらロシアの思うつぼなので、吞めないのは当たり前である。

これに似た提案が出されそうになったことがある。

終戦後の日本に連合国総司令官として君臨したマッカーサーの考えに、一時日本をどの国とも同盟関係を結ばず、また兵器を持たないという「永世中立国化案」があったのだ。

日本国憲法は別名「マッカーサー憲法」と言われているように、例の第9条が永世中立との関係で定められたとも言える。もちろん憲法前文が大事だが、9条によって「止めを刺された」と言ってよい。

第1条1項では「交際紛争を解決する手段としての戦争は放棄する」とあり、同2項では「そのための戦力は保持しない」とある。

かつて革新勢力はこの条文を以て「軍備放棄」と解釈し、これは同時にマスコミなどもそう報道していたが、2項の戦力不保持はあくまでも1項規定の「対外戦争をするための戦力」は持たないというだけで自国防衛のための戦力まで否定するものではない。

例えば「内乱」「大規模な国内テロ」などを鎮圧するための武力は必要だし、外国兵が日本に侵攻して来た時に排除する戦力は当然無くてはならない。

日本の永世中立化案は、中国大陸において国民政府が排撃されて共産党中国が樹立(1949年10月1日)され、朝鮮半島でコミンテルンの指示を受けた金日成軍が南朝鮮へ侵攻した朝鮮動乱が勃発することで立ち消えになった。

日本本土に連合国軍の駐留が必要になったためである。

ロシア侵略50日後のウクライナ永世中立国化案ではウクライナがEUに加盟することは認めるが、西側との軍事同盟入りをしないと釘を刺されたのだが、この点もウクライナの拒否へとつながったようである。

ウクライナが日本の自衛隊程度の軍備を保有しても、万が一攻められた場合、ロシアの圧倒的な戦力に対抗すべくもないからだ。

EUではあの中立国スウェーデンが政策を変更して加盟申請をし、つい最近加入を認められたという。ロシアとの間に長い国境を持つフィンランドも申請中だ。

ウクライナがいつEUに加盟できるかでウクライナ戦争の趣旨が変わってくる。停戦への道のりは長いのか短いのか、最も望ましいのは「終戦」だが、今度の大統領選挙で確実に5選を果たすに違いないプーチンの出方次第。

ウクライナ戦争という「藪」から「棒」(軍事力)ではなく「蛇」(ウクライナのEU加盟)が出てきたら、プーチンも真っ青だろう。

 


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